【2009年12月4日/2022年11月追記】西部展、仁科春彦『結婚難』

【2009年12月4日】
高円寺、西部古書会館の西部展。
奥野他見男を見つける。『二度と行くまい公爵様へ』300円。岡崎武志氏や北原尚彦氏や、その他の古書随筆でも紹介されていて、その名前はたびたび目にしていたのだが、現物を手にするのは初めてだ。
目録で見かけたことは時々あったのだが、犬棒式の散歩者にはやや高嶺の花だった。それでも、よれよれの破れかけたものでよければ300円で手に入る。もちろんそれでよい。
つづいて仁科春彦の諧謔小説『結婚難』315円。仁科春彦の本は以前、中野のまんだらけでも買ったことがあって、その題名は『結婚闇取引』だった。
『結婚闇取引』を買った後に、図書館でちょっと調べてみたのだけれど、文学事典には記載がなく、どのような作家だったのかまるで判明しない。『結婚難』『結婚闇取引』、結婚小説が売り物だった?

高円寺ガード下の都丸支店、壁棚から『世相いろめがね』渡辺一雄(新聞時代社)と『古代の書物』F・G・ケニオン(岩波新書)、各100円。

2009年12月4日 今日の1冊
*西部展/西部古書会館
『結婚難』仁科春彦(実業之日本社/大正13)

仁科春彦「結婚難」表紙

【2022年11月追記】
仁科春彦の人物像については、どうにもよく判りません。
「国会図書館」の著作者情報を見ると、生年は1892年らしいのですが没年は不明。実業之日本社に勤務していたこともあったようです。
同じく国会図書館の蔵書を見ると、昭和20年代から30年代にかけては『真田三代記』『義経物語』など「日本名作物語」の編著、あるいは『ああ無情』『ロビンフッドの冒険』など「世界名作全集」の編訳を手掛けていたことが判ります。ただし『結婚難』『結婚闇取引』いずれも、国会図書館には蔵書がありません。
「結婚小説」専門の作家というわけでもなかったようです。
昭和8年には『人を笑はせる小話集』という1冊がやはり実業之日本社から刊行されています。魅力的な題名ですが、残念ながら即売展の会場などで現物を見かけたことはありません。
「日本の古本屋」で検索してみると『人を笑はせる小話集』は2万円近い値段での出品があり、その古書価から見てもかなり珍しい本なのでしょう。
さらに『結婚難時代』という、また別の結婚小説が出品されているのですが、もしかしたら、『結婚難』『結婚闇取引』『結婚難時代』、これらは別々の作品ではなく、同一作を改題して出版されたのかもしれない。少なくとも、購入済みの2冊についてはそれぞれを照らし合わせれば一目瞭然のはずなのですがどこに埋もれているのか、手のつけようがありません。
幸い(?)、表紙の書影だけは購入当時にスキャンしてありますので、『結婚難』と合わせてここに『結婚闇取引』の図版を載せてお茶を濁します。

『結婚闇取引』仁科春彦(黎明社)

仁科春彦「結婚闇取引」表紙