【2010年2月21日】
神保町。
三省堂書店正面入口の店頭古書市を覗き、宇井無愁『一本だけの雨』(あまとりあ社)を500円で買う。
東京古書会館の新宿展では車谷弘『わが俳句交遊記』を見つける。
先日の中央線古書展の目録では1000円で出品されていた本だけれど、今日は400円。よし!
この1冊で今日の古本散歩は早くも上出来だ。
気分も軽く会場を逍遙し、『ミショー詩集』(思潮社)315円、『旅の四季』戸塚文子(河出新書)100円、『トンネルの話』アーチバルド・ブラック(岩波書店)300円と拾い集める。
小宮山書店ガレージセールではフランシス・アイルズ『殺意』(創元推理文庫)100円。
それから@ワンダーを訪れて、一昨日の買い残しの新書判、『えろちかる・ぽけっとぶっく』原比露志(あまとりあ社)420円。
御茶ノ水駅に向かって、錦華公園から山の上ホテルへの坂を上り、振り返って見下ろせば公園は池のように、日だまりのさざ波が眩しくてのどか。
【2022年12月追記】
1000円の値がついていた本を、のちに400円で発見する。うれしい瞬間です。
ほんの数百円の違いとはいえ……、いやたとえ50円であっても、少しでも安く手に入れることができれば、気分は明るみます。
古書の価格には相場がありますけれど、定価はありません。
評価の基準はお店によって異なりますから、販売価格はお店によってまちまちです。
A店では3000円の本が、B店では500円で売られていることもあります。
自分のお店では専門外の本だったり、時には思わぬ見落としをしたりして、相場よりずいぶん安い値がつけられることもあるでしょう。
そういう本は、お客さんからは「掘出し物」として喜ばれるわけです。
即売展や古本まつりの会場でも、出品するお店が異なれば、別々の棚に、同じ本が違う値段で置いてあることはよくあります。
場合によっては、同じお店で同じ本が違う値段で並んでいるなんていうことも。
相場というものはたしかにあるのですけれども、「○○という本=××円」というほどに簡単な図式でもないようです。
古書の値段を決める際には、ひとつの条件として、その本の状態が大きく影響します。
きれいなのか、汚れているのか。函やカバーや帯は備わっているのか。署名や書き込みの有無。
など、さまざまな要素がからみついて、古書価を変動させます。
古本ですから古いのは当たり前として、それでも出荷当時の状態(新品)に近ければ近いほど価値は上がります。
美本で函付なら5000円は下らない本であっても、傷みがあって函が無ければ500円ということもあるでしょう。
なかには、帯が付いていると価格の跳ね上がる本もあるようで、本体よりも帯のほうが価値が高いなんて言うこともあるみたいです。
1000円だった本を400円で見つけたり、2000円にためらった本を500円で見つけたりすれば、古本散歩はいよいよ楽しくなってきます。
古書会館の即売展は、そういう発見が大いに期待できる場所と言えるでしょう。
あえて相場は無視して、廉価で放出してくれる太っ腹な古本屋さんもあります。
しかし、もう少し安く見つかるだろうと確信して購入を見送った本が、その後いつまで経っても見つからないことはあります。
「どうして買っておかなかったのか!」と後悔しても、もう遅いのです。
反対に、3000円を奮発して買った本が、300円で並んでいるのを見つけてしまったときなどは、その場で失神しそうになります。
古本の買い方は、買えば買うほどコツがつかめてくるようではありますが、同時に、買えば買うほど買い方が分からなくなってくるのです。