【2010年3月20日/2022年12月追記】池袋・サンシャインシティ大古本まつり

【2010年3月20日】
11時、池袋着。サンシャインシティ文化会館の大古本まつりへ。
昨日、南部会館で今回の「大古本まつり目録」をもらったのだが、そこに載っていた『谷中安規の夢』はどうなのか、いの一番に、出品店である千章堂書店の棚へと駆け込むわけだが、影も形もなかった。そうだろうなあ、売れ残っているはずがない。今日は開催2日目だし、そもそも目録送付の段階で、早々に注文が入ったのだろう。それも複数注文で、抽選だったのではないかと。
出品を知らなければ平穏に済んだものを、知ってしまったばっかりに右往左往する。
しかしどんな心理が働いたのか、半分はがっかりしながら、そう簡単には手に入らないことに、半分はほっとしているのである。ルナアル曰く、「古本とは古本を探すことである」、古本ではなく幸福だったか。

さて。それでは今日の古本に取り掛かろう。
広々とした会場に、参加は25店舗。いくら冊数が多くても、買えないときは買えない。このあいだの所沢がそうだった。けれどもそれが無駄足かといえば、やっぱり有るのか無いのかは歩いてみなければ判らないという、古本道中膝栗毛だ。
こちらの棚でカラーブックス、『新しい宝石』菅原通済(保育社)210円、つぎの棚は素通り、つぎも素通り、またあちらの棚で新書判、『恋・やくざ・剣俠』杉田憲治(美和書院)210円。
現代ユーモア文学全集7『宇井無愁集』を見つけるが、あわてなくてもよいように思えて、元の場所に置いておく。矢野目源一『おたのしみ草紙』(アソカ書房)の発見でやや色めく。これも210円。
にわとり文庫が茶色い本をたくさん陳列していて見応えがあった。城左門の詩集『日日の願ひ』(臼井書房)1050円。城左門は岩佐東一郎の詩友でもあり、『書痴半代記』には序文を寄せている。
書台の下の空間に面白そうな新書判が揃っていたのだが、価格は相応。あれこれ手にとって、525円と手ごろな値段の『漫画ルポ穴場ニッポン』冨田英三編(集団形星)を引き抜く。井崎一夫、小川哲男、冨田英三、松下井知夫、やなせたかし、5人の漫画家による異色のルポ。それから、安藤鶴夫『雪まろげ』(旺文社文庫)525円。さらに、昔の児童読み物を集めた段ボール箱の中から鉄道科学読物『飛ぶ機関車』坂田俊夫(鉄道教科書株式会社)525円、一本線のレールの上を、縦一列に車輪の並んだ機関車が疾走するという奇抜な表紙絵に脳天がしびれた。
またしばらくは眺めるだけの棚めぐりが続いて、最後に朝日文化手帖『青い目の日本のぞ記』ロジェ・ヴァン・エック、300円を手にとってひとまわり。
元に戻って先程の『宇井無愁集』315円を引き取り、もういちどにわとり文庫の棚に赴いて、さっき少し迷った『トンネル』ベルンハルト・ケッラアマン(新潮社世界文学全集12)1050円も購入することにする。

外へ出ると物凄い突風だ。煽られたり転がったり、街路は頓狂に鳴りわたる。ビルとぶつかって錯綜する春の嵐に、通行人は皆さんアッチョンブリケだ。3連休の初日だからなのか、駅に向かう歩道は何事かというくらいの大混雑。

つづいては高円寺ガード下。ここは、のどかだ。
球陽書房分店を覗き、都丸支店でくつろぐ。店頭100円均一から『小唄千一夜』金子千章(江戸小唄社)を買う。
球陽書房の本店にも立ち寄ると、帳場のラジオが黄砂の到来を告げていた。

仕上げは荻窪、ささま書店。
文庫本の大きさの、ぺらぺらの小冊『猥談クラブ』が妖しい光を放っている。「PR叢書」、初めて目にする名称だ。昭和モダンの香気芬々。1050円。
帰りの電車で『ロッパの悲食記』読み終る。腹が鳴る。

2010年3月20日 今日の1冊
*サンシャインシティ大古本まつり/池袋
『飛ぶ機関車』坂田俊夫(鉄道教科書/昭和25)525円

坂田俊夫「飛ぶ機関車」表紙

【2022年12月追記】
「サンシャインシティ大古本まつり」は、この2010年の第19回で終了となったようです。
2011年からは開催されていません。最初で最後の探訪でした。

『飛ぶ機関車』などを出品していた「にわとり文庫」は、西荻窪の古本屋さん。
店舗営業を行なっています。
現在も春と夏に行なわれている「三省堂書店池袋本店古本まつり」の参加店でもあり、毎回、戦前の珍しい古書などをずらりと揃えてくれます。初日の朝一番はたいへんな人気です。