【2010年7月16日】
東京古書会館、趣味展。
扶桑書房の廉価棚は本日も芋の子を洗っております。
最初の混雑が一段落するまで、しばらくは他の棚をまわればよいとも思うのだが、そうしているあいだにも、面白そうな本はどんどん誰かが持っていってしまいそうで、無駄な努力とは知りながら、私も芋の子になる。
やっと棚のいちばん前に転がりついたとしても、すぐに横から背表紙をじっと睨みつける芋の子の親分が、我が道をごろごろッと転がって来て、あえなく弾き出される。
石黒敬七『巴里雀』が函つきで1800円。もう1冊、函つきの『蚤の市』も出品されていたのだが、そちらは4500円で眺めるだけ。
扶桑書房の棚を見終わって、右から左へ歩いていると、またあの初老氏が書架を整頓している。
今まで、何度かお見かけしていて、いつも乱れた本をきちんと揃える作業に忙しく、棚に隙間があれば平積みの幾冊かを手際よくそこへ移す。初めて見たときはどこかの古本屋の御主人かと思ったのだが、それにしては店舗に関係なく、ここでもあそこでも整頓に励んでおられる。
お客さんの一人だとすれば、乱れた書棚を整頓するために、即売展へ足を運ぶのではないか、とさえ。
いつも背広姿であるし、大学の先生なのだろうか。よく判らないけれど、今日からは整頓先生と呼ぶことにしよう。
購入メモ*書窓展/東京古書会館
『続わが文壇紀行』水守亀之助(朝日文化手帖)300円
『心象詩集』遠地輝武(昭森社)800円
『欧羅巴物語』菊池重三郎(研究社)500円
『巴里雀』石黒敬七(雄風館書房)1800円
『花の巴里の橘や』渡辺紳一郎(イヴニングスター社)100円
『風雪に耐えて』(岩波書店)150円
外は炎天。日照りの交差点で信号を待っていると、向こう側の三茶書房が遙か遠くでゆがんでいる。
久しぶりに源喜堂へ行ってみると、鈴木信太郎展の図録が4500円。ちょっと買えないが、こうして現物を見ておけば、どこかでまた見覚えのあるものとして、ふっと眼に飛び込んでくるかもしれない。
小宮山書店のガレージは熱気が籠もって素敵に蒸している。
真夏の店頭巡りはなかなかの荒行だ。もう古本よりも早く涼しい室内で休みたい。と、軟弱な散歩者は考える。
しかし3冊500円の平台に那須良輔の随筆集が見つかると、やはりあと2冊を追加したいし、汗を大粒に垂らしながら裸本の『小酒井不木全集』第10巻、よろめきつつ10冊ほど並んだ雑誌『幻影城』を端からめくってみると地味井平造「魔」が収録された号を発見してよろこぶ。
*小宮山書店ガレージセール/神保町
『むだばなし』那須良輔(弥生書房)
『小酒井不木全集』第10巻(改造社)
『幻影城』1975年5月号(絃映社)
3冊500円
【2023年1月追記】
東京古書会館の「趣味展」は年6回、奇数月の開催です。
目録あり。
参加店のひとつ「扶桑書房」は近代日本文学を豊富に取り揃え、しかも手頃な値段で提供してくれるので、いつも人気があります。
会場に入って左手のいちばん奥が扶桑書房の棚です。
初日の朝一番は、皆さんそこへ駆け込んで、はげしい争奪戦が繰りひろげられます。
早い者勝ちの世界ですから、小競り合いが生じて剣呑な雰囲気が漂うこともありますが、そうは言ってもやはり、掘出し物の魅力にはあらがえません。
腕を磨く絶好の機会と捉えるか、先を争ってまで本を探したくないと見るか、好みの分かれるところでありましょう。
私などは、なんべん挑んでもたちまち跳ね返されますが、稀には収穫を得ることがありますから、次回になればまた性懲りもなく挑戦します(しかし新型コロナウイルスの蔓延以降は開場一番に訪れることがなくなりましたから、最近の様子は分かりません。従前とさほど変化はないと思うのですけれど……)。
なお、扶桑書房は事務所営業のみで、店舗販売は行なっていません。
即売展への参加は趣味展が唯一となります。
趣味展の扶桑書房と共に、人気の双璧とも言えるのが書窓展の「あきつ書店」です。
会場の位置は同じく左のいちばん奥。
わずかな記述ではありますが、書窓展のあきつ書店につきましては以下をご参照ください。
→【2010年4月23日/2022年12月追記】書窓展、三茶書房、五反田アートブックバザール
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「小宮山書店」のガレージセールは、以前は毎週末の金土日に営業していましたが、最近は毎週というわけではないようです。
小宮山書店ガレージセールについては以下の日記の追記欄もご参照ください。
→【2010年2月6日/2022年12月追記】東京古書会館の和洋会と北風神保町