【2011年11月20日/2023年6月追記】松屋浅草古本まつりとその周辺

【2011年11月20日】
松屋浅草古本まつり。
売場改装のあおりを受けて今年の正月開催は中止となった松屋浅草展が、この秋に復活した。
建物はまだ改装工事が続いているようで、3階の特設会場を訪れてみると、そこは、くまざわ書店裏の通路だった。
通路はまっすぐではなく鉤の手に折れ曲がっていて、まるでデパートの路地裏だ。
もちろん古本さえあるのならば、古本がどこにあるかはまったく不問である。通路でも階段でも屋上でも、どこでも構いませぬ。
古書英二の棚から『女性軍に告ぐ』中村武志(華書房ハナ・ブックス/昭和41)315円、『人生談義』武野藤介(洋々社/昭和21)525円、『アダムとイヴの鬼ごっこ』渋沢秀雄(鹿鳴社/昭和25)315円、3冊。
佐藤藝古堂の棚から『実践誘惑術』鈴江淳也(あまとりあ社/昭和41)315円。

鈴江淳也「実践誘惑術」表紙
『実践誘惑術』鈴江淳也(あまとりあ社/昭和41)
「松屋浅草古本まつり」目録表紙
『第18回松屋浅草古本まつり』出品目録

続いて周辺の古本屋をめぐる。
伝法院のちょっと先、門前の殷賑をよそに、地球堂書店の店内は異界のような静寂だった。
落語や芸能の書物が居住まいも麗しく整列し、ふと目についた秦豊吉『わが粋筆』の値が2000円では、これはどうも、おとなしく引き下がるよりほかない。
金額などに悶着せず、サッと3、4冊を引き抜いて、それから横丁の煮込み屋にサッと腰掛けて買ったばかりの古本をめくる……野暮天の夢想する粋とは、せいぜいがこの程度の月並でしかないのだが……。
場外馬券場の灰皿を借りて一服ふかす。
六区を抜けて言問通りを渡り、おもしろ文庫。
帳場の脇の扉が開いて、娘さんなのか奥様なのか、「今日初めて外に出る」と宣言し、欠伸をしながら店の外へと出てゆかれる。
帳場の御主人はそれに応えるふうもなく、淡々として、店内にはまたラジオの音のみが反響する。
言問通りに戻って白鳳書院を訪ねるもオヤスミだった。
古本巡りは尻すぼみの様相だ。何となく浅草寺に参拝して、向こうのスカイツリーをちらっと見上げ、地下鉄へ。

結局は荻窪ささま書店に流れ着き、『ベストセラー作法』山崎安雄(白凰社/昭和36)105円と『食虫植物の驚異』笠原一浩(現代教養文庫/昭和39)420円。
吉祥寺の古本センターにも寄道して『地下鉄考現学』吉川文夫/諸河久(カラーブックス/昭和62)200円。
雑本を拾う。

笠原一浩「食虫植物の驚異」表紙
『食虫植物の驚異』笠原一浩
(現代教養文庫/昭和39)

【2023年6月追記】松屋浅草古本まつり
「松屋浅草古本まつり」を訪れたのは、この2011年が初めてでした。
上掲した目録の表紙にあるとおり第18回目の開催です。
「日本の古本屋/古本まつりに行こう」のページで過去の催事を閲覧しますと、2002年の1月に第1回が開かれています。
回数を数えると、年2回の計算になりますが、同ページでは松屋浅草古本まつりの記載がない年も見られ、詳細は不明です。
2010年1月の第17回までは7階の催事場が会場だったようです。
日記に記しましたように、2011年1月は改装工事のため行なわれず、11月、会場を3階の特設会場に移しての再開となりました。
翌2012年は、5月に、同じく3階の特設会場で開催されますが、松屋浅草古本まつりはこの第19回が最後でした。
2012年11月には、それまで浅草駅ビルの全体を占めていた松屋が売場の規模を縮小し、新たに「浅草エキミセ」という商業施設へと生まれ変わります。
それを受けて、2年後の2014年11月には、屋上ハレテラスにて「第1回浅草エキミセ古本市」が初開催となりました。ビル屋上が会場というのはたいへん珍しく、伸びやかな気分で古本探しを愉しめましたが、翌年2015年11月の第2回で終了となってしまたのは残念です。
屋上の古本市と併行して、1階正面口では、やはり「浅草エキミセ古本市」の名称で小規模なワゴンセールを実施。毎月の恒例行事だったとのことですが、こちらも詳しい開催状況は分かりません。
2016年12月が最後だったのではないかと思われます。
  ◇
伝法院通りの西側、「地球堂書店」は健在です。
『全国古本屋地図』2000年版(日本古書通信社/1999)を見ますと、浅草公園界隈には5軒の古本屋さんが点在しているのですが、現在は地球堂書店を残すのみとなってしまいました。
日記で訪れた「おもしろ文庫」と「白鳳書院」も閉店しています(閉店時期は不詳)。
浅草エキミセ古本市を最後に古本市の開催も見られなくなり、ここ数年、浅草にはすっかり御無沙汰しています。