【2011年3月6日】
昨日とほぼ同時刻の電車に乗って所沢。連日の、彩の国古本まつり。
昨日は会場隈なく3時間半ほど歩きまわったのだが、その余りの分厚さと重たさが難関となって、迷った末に見送った『1920年代日本展』の図録が、案の定、未練に残っているのだ。
未練ではあるけれど、心の半分は、売れてしまっていたらむしろスッキリする、と思っている。
欲しいのか欲しくないのか自分でもよく判らぬ。
売れていなかったので、『1920年代日本展』(朝日新聞社)2100円、購入する。
今日は会場には長居をせずに、天気も良いし、所沢の古本屋を散歩してみよう。
電話帳と地図で調べたところ、新所沢駅の周辺に何軒かの古本屋が点在しているようだ。
所沢から西武線に乗ると、真昼の郊外電車はまったくのどかだった。航空公園に展示されたジェット機がちらりと見えて、平坦な車窓の破調となる。
2つ先の新所沢で下車。まずは祥文堂書店西口店を目指す。
右に曲がるべき交差点を左に曲がったり、渡らなくてもよい横断歩道を渡ったり、ちょっとうろうろするが、無事に到着、無事に営業中。
店頭の100円均一から、カラーブックス『日本の民家』牧田茂をとり、店内に入るとさっそくウェッジ文庫『東海道品川宿』岩本素白随筆集、315円が現われる。幸先がよい。
文庫、雑誌、児童書、マンガ、その他一般、エロ少々。品揃えは中庸、価格はあっさり。
典型的な〈町の古本屋〉という、その典型が軒並み消え去ってゆくような昨今、雑本派にはこういう平凡がくつろげる。
書架の脇に東口店の案内が貼り出してあり、そちらも営業しているようで一安心……と思ったら13時から15時は中休みと書いてある。店内の時計を見たらすでに12時半を過ぎている。急遽、目玉のスピードアップ。残りの棚を撫でるように眺め、結局、買物は最初の2冊のみ。急ぎ足で駅を跨ぎ越して東口店へ。
西口店よりはかなり古風な店構え。広さは半分ほど。
御婦人がお店番をしていて、棚の本も、それを取り巻く空気も、とろんとまどろんでいる。
私には、そこから何か1冊さっと抜き出して、新鮮な風穴を開ける才はなかった。棚の本を眺める眼は、同じようにまどろんでしまうのである。
何も買えなかったのは残念だが、駅の西と東とに分かれて、坦々と商いを営む祥文堂書店をぜひとも讃えたい。
松葉町から弥生町へと移って、やよい書房を探す。
その一帯、住宅地が広がるばかりで、とても古本屋があるような街並みではない。それでも電柱の表示をたよりに2940番地を訪ね当てると、そこだけ唐突のように、美容院とやよい書房とが軒を並べていた。
美容院は営業していたが、やよい書房は休業だった。残念。
廃業じゃないことを小さく祈ってみたものの、どうなのだろう、よく分からない。
パインロードという飲食街をぶらぶら戻って来ると、駅の近くに早稲田書房という新刊書店があった。
岩波文庫が充実していたり、古本に関する本が揃えてあったり、それとなく店主の心意気が窺われる。
しかし何よりも注目したのは、地下に続く階段の入口に掲げられた〈雑貨・古本〉の看板だった。
発奮しかけたが、ううん残念、移動式の棚がしっかりと階段口をふさいでいる。どうやら地下は営業していないようだ。
たまたま今日だけなのか、それとも、もうやっていないのか、お店の人に尋ねればすぐ判明するのだが、「もうやっていません」と言われたらガッカリなので尋ねなかった。
ふたたび西口へまわり、行きがけの電車の窓から見えた東京堂珈琲店でひとやすみ。
なぜ新所沢で早稲田書房なのか東京堂珈琲なのか、色々と奥行きのある町だった。
西武電車で国分寺へと出て、久しぶりにブックセンターいとうを巡回する。
『裏本時代』本橋信宏(新潮OH文庫)100円、『天国』安部慎一(ワイズ出版)892円、『かおみえるかな』U・G・サトー(福音館書店かがくのとも)100円、『ひもとわゴムでだましっこ』佐伯俊男(同じくかがくのとも)100円、『鉄道ピクトリアル』2007年11月号/特集・中央線快速電車(電気車研究会)472円、購入する。
【2023年3月追記】新所沢
新所沢駅の東西に店舗を構えていた「祥文堂書店」は、古い建物の東口店がもともとの本店ということのようです。
支店として開業した「西口店」は、その後閉店となりました(時期不詳)。
「東口店」は現在も営業しています。ただし、店舗販売の営業時間は14時から16時の2時間のみというそうなので、訪れる際は事前の確認が必要かもしれません。
「やよい書房」については、2011年の探訪当日がたまたま休業日だったのか、それともすでに閉店していたのか、あるいは事務所営業へと移行したのか、消息がまったくつかめていません。
駅前の新刊書店「早稲田書房」は現在も営業しています。
新所沢にはそのほかブックオフもあるそうですし、ぜひ再訪したいと思っていたのですが、思うだけではや10余年が過ぎています。
早稲田書房の地下古本売場はどうなっているのか……。