【2011年4月8日】
東京古書会館、ぐろりや会。
これという1冊と出くわさない。
何か見つけなければ……と、つい力んでしまい、2週3週、会場をさまよう。
無ければ無いでよいはずなのだが、なぜだか今日は脅迫されたみたいな気分で、それで、ル・コルビュジエ『今日の装飾芸術』(鹿島出版会)700円。
店頭棚を眺めながら駿河台下から九段下まで。
途中、田村書店にてホイットマン詩集『草の葉』上中下(岩波文庫)、3冊600円、購入。
神田古書センターの店頭は地震の日と同じみわ書房の担当で、あの日のぐらぐらを思い出さずにはいられなかったが、今日の地面は揺れることもなく、無事にすべての棚を見分できた。ご主人はお客さんから尋ねられた本を、ここでもないあそこでもない、と探しまわり、どうやら見つからない様子で、尋ねたお客さんが恐縮していた。
高田馬場、古書感謝市。
猛烈な南風が吹きつけて、くしゃみと洟水が止まらなくなる。頭、ぼんやり。
まあ、くしゃみと洟水が止まったとしても、頭はいつもぼんやりだ。
早々に退散するつもりで、ピンボケの眼玉を持て余しながら横着に書架を眺めていたら、小冊子のぼろぼろの背表紙から〈エルンスト〉の文字が飛び出した。
『エルンスト』福沢一郎(アトリエ社西洋美術文庫)、1500円。
荻窪、ささま書店へ。
ささま書店の巡回は1か月ぶりくらいになるので、いくらか意気込んで入店してはみたものの買物ナシ。
こちらの力加減など古本はまったくお構いなしなのだった。
【2023年3月追記】アトリエ社西洋美術文庫
平々凡々、その平凡がいかに有難いかというような古本日常です。
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アトリエ社の「西洋美術文庫」は、昭和13年から15年にかけて、40数巻(全48巻?)が刊行されています。
第1巻のヂオットに始まり、以降、レオナルド・ダ・ヴィンチ、グレコ、シャルダン、コロと続き、最終48巻はミロです。
国会図書館の蔵書を参照にしていますが、48巻のうち、半数近くの21巻については記載がなく、それらは収蔵漏れなのか、そもそも未刊に終わったのか、詳細は不明です。
B6判、各冊とも100ページ未満の小冊子で、作品図版と解説を収めます。執筆陣は、須田国太郎、内田巌、硲伊之助、滝口修造、石井柏亭など。第20巻『ルオー』の著者は武者小路実篤です。
福沢一郎『エルンスト』は第23巻。
西洋美術文庫自体はそれほど珍しいシリーズではなく、1000円以下で買える書目も多くあるはずですが、この『エルンスト』は結構な古書価が付くようで、5000円を超えることもあるようです。
100円均一棚から掘り出したとなると会心の一事となりますけれど、1500円は微妙なところ……。素人なりに健闘したとは言えるでしょうか。