【2011年9月16日/2023年5月追記】和洋会で『どきゅめんと筑豊』

【2011年9月16日】
東京古書会館、和洋会。
虔十書林の棚からコバルト叢書の石黒敬七『万国女性博覧会』(昭和22)500円と、改造社新鋭文学叢書の龍胆寺雄『放浪時代』(昭和5)2000円。
古書ふみくらの棚では、上野英信『どきゅめんと筑豊』(新報新書/昭和44)発見する。目黒区美術館の炭鉱展で資料として展示されていたのを見てから、ずっと気になっていた1冊だ。400円。表紙の版画は千田梅二。

石黒敬七「万国女性博覧会」表紙
『万国女性博覧会』石黒敬七(コバルト叢書/昭和22)
龍胆寺雄「放浪時代」表紙
『放浪時代』龍胆寺雄(改造社=新鋭文学叢書/昭和5)
*パラフィン紙が掛かっています
上野英信「どきゅめんと筑豊」表紙
『どきゅめんと筑豊』上野英信(新報新書/昭和44)

ミロンガで珈琲を飲み、すずらん通りの湘南堂書店。
それから靖国通りを渡ってトキヤ書店を訪れると、いつのまにか店が消滅していた。
さらにアムールショップをうろうろと、後半は淫らな表紙へと傾斜して、吉祥寺に飛び火して、古本センターで『mo’girl』No.7 /2005年2月(MAX)250円。

【2023年5月追記】美術展の参考資料/上野英信・千田梅二
美術展では時折、参考資料として書籍や雑誌が展示されることがあります。
大抵は、すでに品切れや絶版となって久しい貴重書です。
ガラスケースの中に恭しく陳列されているさまは、どこか遠い別世界の書物です。
読んでみたい、せめてページをめくってみたいと願っても、どうにもなりません。手の届かない存在です。
しかし古本世界を尋ね歩くうちには、そういう書物と、邂逅するときがあります。
展覧会の会場では、ガラス越しに眺めるだけしか許されなかった書物が、今目の前の棚にあって、この手にとることができる。
背中に電気が走るような一瞬です。今度は商品ですから、買って帰ることもできます。

上野英信『どきゅめんと筑豊』は、2009年に目黒区美術館で開催された「文化資源としての〈炭鉱〉展」の会場に展示されていました。
著者の上野英信【うえの・ひでのぶ(えいしん)、1923(大正12)-1987(昭和62)】は記録文学作家です。
『追われゆく坑夫たち』(岩波新書/1960)、『日本陥没記』(未来社/1961)、『地の底の笑い話』(岩波新書/1967)など、炭鉱に従事する労働者のルポルタージュを数多く著わしています。

表紙を手がけた版画家の千田梅二【せんだ・うめじ1920(大正9)-1997(平成9)】は、上野英信の著書『せんぷりせんじが笑った!』(柏林書房/1955)や『親と子の夜』(未来社/1959)などで挿画を担当したほか、単独の著書として『炭坑仕事唄板画巻』(裏山書房/1990)があります。
没後には『千田梅二・炭坑のくらやみの唄』(2006)および『炭鉱の版画家千田梅二とうえだひろし』(2012)が田川市美術館より刊行されています。この2冊は、展覧会図録ではないかとも思われますが、未見のため内容については判りません。

美術館で『どきゅめんと筑豊』の存在を知ってから、古本で見つけるまでにおよそ2年。
手を尽くして探求すれば、もっと早くに見つかったのかもしれませんけれど、そこまで頑張らなくても、その本との縁があるならば、いつかどこかでは巡り合えるようです。

〈関連日記〉
目黒区美術館「文化資源としての〈炭鉱〉展」は下記の日に訪れています。
【2009年11月20日/2022年11月追記】目黒区美術館の炭鉱展
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神保町の「トキヤ書店」は、古書組合には加盟せず、古書店街の中心からは離れた場所で、アイドル写真集、風俗文献、エロ本、エロ漫画、独自の品揃えで健闘していたお店でしたが、ひっそりと閉店していました。トキヤ書店については下記ご参照ください。
【2010年1月15日/2022年11月追記】神保町古書店街と愛書会