【2012年7月21日・26日/2024年4月追記】反町・新宿

【2012年7月21日】
神奈川古書会館、反町展。
10時ちょっと前に到着すると、会館前の道端にちらほらと、6、7人が古本を待っている。
今日は西部古書会館の即売展が開催されないので、古本民族はここ神奈川会館へ大移動するのではないかとも思ったのだが、意外と少ない。
10時になりガレージの戸が開いても、寸刻を争うような気色は見られず、それぞれがそれぞれの歩幅で、悠長に書架に取りつくという風情。
それでも、朝一番にちらほらしている顔ぶれは、やっぱりいつも即売展でお見掛けする顔ぶれのようだ。
1時間ほどぶらぶらして、『SFロボット学入門』石原藤夫(ハヤカワ文庫/昭和56)350円、購入1冊。
帰路は南武線の矢野口で途中下車してブックセンターいとう矢野口店に寄る。何も買わずに駅に戻る。
傘をさすほどでもない霧雨。昨日までの夏はどうしたと詰め寄りたくなるくらいに、半袖では肌寒い。

【2012年7月26日】
午後、新宿の京王百貨店。東西老舗大古書市。
『略図練習二百題』香川幹一(古今書院/昭和8)300円。
何の略図かと中身を見たら、世界各地の地図の略図だった。
昭和8年の刊行で、台湾、樺太、朝鮮などが〈日本編〉に含まれているあたりは時代を伝える。
もちろん今更、四国やイベリヤ半島の輪郭が描けるようになったところでどうしようもないのだが、300円という廉価と、神保町の古書店、原書店のチラシが挟み込まれていたこともあり、購入。
段ボール箱の特価図録の中から『長谷川利行展』(東京新聞/2000)1800円を引き抜き、買物は以上の2冊のみ。
げんせん館の棚では旧知のような『むすめ教育』に挨拶をする(しばらく前から、げんせん館が参加する古書市で必ず見かける1冊)。
五十嵐書店の棚の『島の写生紀行』と『東亞あれこれ』は、銀座松屋展から半年経ってどちらの値札も半値(1500円)に衣替えをしていたが今日は意欲が湧かず、それからたしか京都から参加の古書店だったか、酒井潔『巴里上海歓楽郷案内』は昭和モダンの蠱惑こわくな匂い。売価1万5000円はオテアゲなので、せいぜい鼻をふくらませて匂いを嗅ぐ。
会計にて、毎回恒例〈猫と古本〉のポスターを頂戴すれば、じつは東西老舗大古書市の目的は、ほとんどがこの1枚のポスターだった(?)。
屋上の灰皿で一服ふかす。西日がくわッと照りつけて、ビアガーデンは準備が整っている。
がらんとしたテーブルの片隅に、早くも一人の男が着席してビールを飲みながら本を読んでいる。その猫背の半透明の後姿、それは我が身のマボロシか。
観賞魚売場の水槽の、錦鯉のとなりでは、ちいさなチョウザメのひらひら。

神田神保町「原書店」チラシ
『略図練習二百題』に挟み込んであった《原書店》のチラシ

【2024年4月追記】神奈川古書会館/東西老舗大古書市
神奈川古書会館では、ほぼ毎月1回、即売展が開かれます。
横浜のひとつ隣りの反町、もしくは東神奈川が最寄駅です。
土曜と日曜の2日開催という日程は西部古書会館(高円寺)の即売展と重なることが多く、初日の朝一番に関しては、どうしても西部会館のほうに人気は集まるようです。
東京からは少し距離がありますし、出品される本の量も西部会館が上回りますから、これらが要因となって集客に差をつけるのでしょう。
周知が行き渡っていないということもあるかもしれず、そもそも神奈川古書会館の存在を知らないという人が、案外と多いのかもしれません。
それだけに、古本さがしの穴場と言えそうです。
混雑を気にせず、あっとおどろく掘出し物を、悠々と収穫できるかも?
神奈川古書会館の即売展につきましては下記ご参照ください。

  ◇
京王百貨店新宿店の「東西老舗大古書市」は2013年8月の第63回をもって終了しています。
東京のデパートで開かれる古書市では最も古い歴史をもつという、伝統の催事でした。
いつ頃からだったのかは詳らかにしませんが、そのポスターには猫が登場するようになりました。
実家に帰省した(?)猫が畳の上に寝そべってページをめくっていたり、文豪猫が和机に向かって執筆していたり、今年はどんな猫が古本と戯れているのか、毎年たのしみなポスターでした。
会場の係の人にお願いすると、無料で分けてもらえました。
丸めたポスターを段ボール箱に入れて会場に置いてあったこともあるのですが、何枚も持ち帰ってしまう人がいたということなのか、その翌年からは大っぴらには配布しなくなったようです。
何やら秘密の取引きのようでもありましたが、申し出れば、嫌な顔をせずに裏から持ってきてくれました。
広い会場を巡り歩いた仕上げにこのポスターをもらうと、歩きまわった疲れは吹っ飛びます。
オマケのほうがうれしいということにもなり、オマケだけを目当てにして古書市を訪れるという本末転倒にもなるわけです。