【2012年8月2日】
リブロ池袋古本まつりと、ブック&A(西部古書会館)の初日が重なる。
どちらを先に探訪するか直前まで迷う。
ご常連の多数は池袋に集結すると思われるので、西部会館は穴場のような按配になりそうだ。
鬼の居ぬまに悠々と珍本を独占……と、あらぬ夢を描きたくもなる。
しかしリブロ池袋展といえば、にわとり文庫の棚がいつも面白く、搦手から攻略して手柄を立てようなどと色気は出さず、まあ、正面からぶつかってみるか。
池袋東口、日光ギラギラの灰皿で一服ふかす。冷水を飲んでもすぐに蒸発する。
10時10分前、西武別館の玄関口に赴くと開場待ちの行列は100名ほど。
5分前になると2階の会場入口まで誘導される。開店準備中の館内からは、朝礼の爽やかな掛け声などが聞こえてくるが、向こう側からこの一団を眺めたらどんなだろう。眼つきばかりがやけに鋭く、そのほかは上から下まで地味で所々くたびれていて、なるほど古本そっくりだ、と思われているのかもしれない。そう思われているのだとしたら本望だ(?)。
係員に会場案内図をもらって、にわとり文庫の位置を確認。
書窓展のあきつ書店や趣味展の扶桑書房ほどではないにしても、やっぱりにわとり文庫は人気がある。
『東京のお嬢さん』北村小松(東成社=ユーモア小説全集/昭和27)発見する、1575円。
三省堂古書館では3000円の値に跳ね返された1冊だ。東成社ユーモア小説全集は、なかなか3000円の壁を乗り越えられずにいるが、時折は壁の下に、廉価の抜け穴がぽこりと見つかる。
『小判娘』福田英一(東京ライフ社/昭和33)525円と、にわとり文庫では2冊の収穫。
ハーフノート・ブックスで『白仙境』牧逸馬ミステリー集Ⅱ(現代教養文庫/昭和50)600円。
ほん吉の棚の新書判を揃えた中から『CM漫談史』玉川一郎(星書房/昭和39)525円。
すれちがいざまに人様の抱えた『奥山儀八郎展』図録が目に入ればチラと覗いてみたくなり、先週1000円で買ったばかりの『透け透けカメラ』が315円といういつもながらの古本の神様のイタズラ。
にわとり文庫に戻って『家庭女間諜』南達彦(アカツキ書店/昭和16/3版)1050円。
以上5冊の購入となった。
正午を過ぎて、東口の街頭はさらにギラギラ指数が上昇しているが、鞄の中に買ったばかりの古本があると思えば、この炎天下も快となる。
高田馬場で途中下車してBIGBOX古書感謝市。『孤島ナンセンス』小島功(奇想天外文庫/昭和51)150円。
高円寺の西部古書会館に辿り着くと、お客さんは10人足らず。しばし閑寂に浸る。
ブック&Aのチラシには今迄、参加する店舗数を引っかけて〈八犬伝〉と謳っていたのだが、今回は〈荒野の七人〉に変わっていた。参加店がひとつ減ったようだ。
買い手のつかないエロホンが、棚の端にしなだれかかって昼下がり――。
『診療簿余白』正木不如丘(春陽堂文庫/昭和17/43版)300円、『諷刺の芸術』M・ホジャート(平凡社=世界大学選書/昭和45)300円。
ガード下の都丸支店の壁棚を眺めて、四文屋へ。
小さな丸椅子に腰掛ければ、まず踵のあたりを蚊に喰われてぽりりと掻きながら、それから冷たいビール。ああ。
【2024年4月追記】
リブロ池袋本店の古本まつりは、2016年に三省堂書店池袋本店へと主催が変わり、その後も続いています。
会場は西武池袋本店別館2階の西武ギャラリー。リブロ時代と同じ場所です。
毎年2回の開催(2023年は1月と8月)です。今年2024年1月の開催で第17回目となりました。
2020年からのコロナ禍のさなか、いちどの中止もなく猛威を潜り抜けてきた古本まつりです。
ここ数年は初日の朝一番に訪れておりませんので、現在の入場待ちの状況については判りません。
そこに古本があるかぎり、昔も今も、さほど変わりはないように思うのですが……。
それよりも、会場となる西武池袋本店が、ヨドバシカメラに変わるとか変わらないとか、ちょっと揉めているようでもあり、別館の三省堂書店や西武ギャラリーはどうなってしまうのか、古本まつりの運命が少々心配です。
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西部古書会館の「BOOK&A(ブック・アンド・エー)」は年5回(2023年は2・5・8・10・11月)。
参加するお店の数は少し増えて、このところは10店舗前後でしょうか。参加店の一部は毎回入れ替わりがあるようです。
BOOK&AのAは、アートとアンティークのAということで、本以外の品物が多数並ぶのが特長です。
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高田馬場BIGBOXの「古書感謝市」は2013年9月で終了しています。
早稲田の古本屋さんが交替で参加する定期市。
小規模ながら、廉価での販売がいつもたのしみな古書市でした。
10年が過ぎた今になっても、いつか復活しないかと、早稲田古書店街に向かって祈ってみるのですが。