【2010年10月29日/2023年2月追記】神田古本まつりと特選古書即売展

【2010年10月29日】
10時、神保町。神田古本まつり。
3日目の朝ともなれば、青空掘出し市は割合に閑散としている。
一介の客にとってはこれくらいの人出が頃合なのだが、昨日はずっと雨降りで丸潰れになったはずだから、参加店の店主としては売上げの行方に気を揉むところだろう。
今日も今ひとつすっきりしない空模様ときて、青空市ではなく曇天市の神保町である。

一昨日の服部亮英『スケッチと漫画自在』を、もし売れ残ていたら今日は買ってしまおうと思う。
古書ふみくらの露店を覗く。まだある。まだ買わない。
田村書店の店頭は段ボール箱だけではなく平台もすべて100円均一。現代教養文庫の谷譲次、『もだん・でかめろん』『めりけんじゃっぷ商売往来』、2冊購入。
店頭台には、ちょっと見ているあいだにも新書判や文庫がどしどし継ぎ足される。あちこちさまようより、ずっと田村書店にへばりついているほうが面白い買物が出来るのかもしれんなあ。

谷譲次「もだん・でかめろん」表紙
『もだん・でかめろん』谷譲次(現代教養文庫/1975)

東京古書会館、特選古書即売展(青空展)へ。
こちらは盛況。
神田古本まつりの一環ということもあり、やはり懐に気合いを入れて訪れるお客さんも多いのだろう。
104万なんていう、物凄く景気のよい会計の声が聞こえてくる。
書棚の下に、改造社の新鋭文学叢書、黒島伝治『浮動する地価』が、300円で転がっていた。拾い上げる。黒島伝治は、たしか、岩波文庫の『渦巻ける…』…、忘レタ。
あきつ書店の棚より久野豊彦『艶文蒐集』2000円。以前、4、5000円で見かけた憶えがある。
さらに岩佐東一郎『青年のための詩と詩論』だ。同じく2000円。これは、はっきり憶えている。やはり、あきつ書店の出品で、ということは書窓展の会場だろう、2回見かけている。3800円の値が付いていて諦めざるを得ず、しかし未練がましく、しばらく撫でまわしてみたのだったが……。
その、撫でまわした1冊と同じものかどうかは定かではないが、どこを巡りめぐってか、三たび掌中に、まさか半値で訪れるとは。有難いなあ!
外は曇天でも、気分は全天の青空なのである。
その他、あまとりあ社の新書判『秘聞・女づくし』狭山温、300円と、岩波写真文庫『蝶の一生』新村太朗監修、200円。

岩佐東一郎「青年のための詩と詩論」表紙
『青年のための詩と詩論』岩佐東一郎(一聯社=青年文学叢書/昭和22)

青空掘出し市に戻り、古書ふみくらの棚。
『スケッチと漫画自在』、まだある。2500円、それでは買います。
もうすこし露店伝いにぶらぶら歩いて、『発車オーライ』萩原良彦(双葉新書)300円。

【2023年2月追記】
東京古書会館の「特選古書即売展」は年1回。
神田古本まつりの一環として、10月末に開催されます。
金・土・日と、東京古書会館では唯一、3日間開催の即売展です。
「特選」の冠に物怖じしそうになりますが、廉価な本もたくさん並びます。
神田古本まつり青空掘出し市の会場(神保町古書店街)からはちょっと離れていますが、目と鼻の先ですので、期間中はぜひ合わせて探訪したいところです。
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久野豊彦『艶文蒐集』は、第一書房、昭和7年刊。
岩佐東一郎『青年のための詩と詩論』は、一聯社「青年文学叢書第8輯」、昭和22年刊。
服部亮英『スケッチと漫画自在』は、紅玉堂書店、大正13年刊。なお当書は行方不明につき図版割愛乞う御寛恕。
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上記、よろしかったらご参照ください。