【2009年11月15日】
鉄道風景を描く画家、松本忠氏の個展があるというので大宮の先の土呂まで行こうと思うのだが、その前に、古本……。
高田馬場駅前の「BIGBOX古書感謝市」を初めて訪れる。
どれくらいの規模なのか判らないから多めに余裕を見て3時間ほどを見込んでいたのだが、そこまで必要なかった。会場はBIGBOXの正面入口に小さくまとまっていて、ゆっくり見ても1時間ほどでひとまわり。
『昔ばなしとは何か』小澤俊夫(福武文庫)250円
『文京区絵物語』伊藤晴雨(文京タイムス社)400円
『オデュッセウスの世界』フィンリー(岩波文庫)400円
『国鉄ものがたり』岡部冬彦(東京堂出版)1000円
計4冊を購入する。
会計をお願いすると、店番の御主人は軽快な手さばきで価格票をちぎるのだが、その動きが『文京区絵物語』のときに一瞬止まる。もうひとりの御主人も、隣りから同時に目線をくれたようでもあった。
著者が伊藤晴雨なので、それが400円という値段なのは案外と珍しいのかもしれない。
合計額を告げながら、御主人はもういちど、さりげない仕草で『文京区絵物語』のページを繰って中身を確かめていた。
時間が余ったので、早稲田の古書店街へ行ってみる。
早稲田古書店街もまったく行ったことがないので、どの辺りにあるのか場所は知らないけれど、とにかく大学のほうへ向かって歩いて行くとそのうちに古書店の看板が見えてきた。
しかしどこのお店もお休みだ。神保町と同じように、日曜日は定休の古本屋が多いようだ。
子育て地蔵のY字路の先に1軒、開いているお店があった。古書現世、この店名は、即売展で見かけた覚えがある。
店内に入ると、「1000円以下」と記された棚があるのは安心だ。松本竣介の評伝『青い絵具の匂い』(中野淳著、中公文庫)を見つける。300円。
2009年11月15日 今日の1冊
*BIGBOX古書感謝市/高田馬場
『文京区絵物語』伊藤晴雨(文京タイムス社/1952)400円
【2022年11月追記】
高田馬場駅前の商業ビル「BIGBOX」で行なわれていた古書市です。
私が行き始めたころは、たしか毎月恒例の定期古書市だったように覚えています。
早稲田古書店街の古本屋さんが何軒か集まって開催していました。
伊藤晴雨は「責め絵」の画家として有名で、『責の話』『美人乱舞』などの著書がありますが、それらとはまた別に『江戸と東京風俗野史』という著書もあり、風俗研究家の一面もあったようです。
この『文京区絵物語』も、風俗研究の1冊でしょう。
驚くほどの掘出し物ではありませんが、400円で見つけたというのは、まあ初心者にしては上出来だったかな?
「感謝市」と言うだけあって、販売価格が廉価に設定されている本が多いということが、BIGBOX古書感謝市のうれしい特徴でした。
後々の話になりますが、とある古書店で8000円を大奮発して買った『淵上毛銭全集』が、この感謝市で1500円で売られているのを見つけてしまったときは、その場で卒倒しそうになりました。
玄関先の小さな会場ながら見どころの多い古書市でしたが、2013年9月を最後に開催されなくなってしまったのはほんとうに惜しいです(2013年の8月と9月、最後の2回は会場を9階特設会場に移して開催)。