【2009年11月20日/2022年11月追記】目黒区美術館の炭鉱展

【2009年11月20日】
午前中、目黒区美術館の「文化資源としての〈炭鉱〉展」へ。珍しい企画だ。
1階は、山本作兵衛、千田梅二、井上為次郎など、炭鉱に従事していた人たちが描いた記録画。
2階は画家や写真家の、炭鉱を題材にした作品を展示。
大作の油彩が多いのは、そうでもしなければ炭鉱の偉観に太刀打ちできないということだろうか。
写真では、ぼた山を背景にした元坑婦さんたちの穏やかなたたずまい、あるいは「炭鉱美人」と題されたやはり元坑婦さんの笑顔の皺がしみじみとうつくしい。もちろん、炭鉱を題とするからには、事故や争議や貧困や、過酷な一面とも向き合わなければならないだろう。そちらで突出しているのは土門拳だ。
しかし……「立坑」「トロッコ」「選炭場」、人間によって組み立てられながらも、人間の営みからはどこか超越しているような、何も語らず茫洋と広がる炭鉱風景に深く惹かれてしまう。廃墟ならばなおさらだ。
鉱員募集やゼネストのポスターと共に展示されていたのは「弥次喜多炭山めぐり双六」。これは『炭鉱の友』1949年新年号の附録。双六は村山しげると松下井知夫の合作になっているが、このふたりの名は『日本漫画100年』で目にした記憶がある。『炭鉱の友』、そんな雑誌もあったのだなあ。

図録は2500円と、やや値が張るので我慢した。代わりに、以前開催された『山名文夫と熊田精華展』の図録が売れ残っていて、1000円に値下げして販売していたので購入する。
目黒駅に向かって、公園の脇を通り抜けると、水を抜いた区民プールの縁で野良猫が日向ぼこ。
目黒から三田線に乗って、午後は神保町。
東京古書会館の趣味展にて、矢野目源一『席をかえてする話』(美和書院)500円など5冊購入。三省堂書店店頭の古書市では泉三三彦『動物風流ばなし』(室町書房)200円。三三彦……みみひこ?

2009年11月20日 今日の1冊
*目黒区美術館
『山名文夫と熊田精華展』(目黒区美術館/2006)1000円

「山名文夫と熊田精華展」図録表紙

【2022年11月追記】
『山名文夫と熊田精華展』の図録を1000円で入手できたのはよかったと思います。
しかし、なぜ炭鉱展の図録を我慢してしまったのか。
美術展の入場料と図録代を合わせれば結構な金額になりますし、その後で古書即売展に行く予定があるとなれば、そうそう出費はしていられない。それはたしかにそのとおりです。
やはり炭鉱を主題にした美術展というのは珍しい企画だったようで、図録も、貴重な資料の1冊になっているようです。
目黒区美術館発行のその図録『〈ヤマ〉の美術・写真・グラフィック・映画―文化資源としての〈炭鉱〉展』を、たとえば「日本の古本屋」で探してみますと、今や貧書生にとってオソロシイ値段が表示されるようでもあります。
2500円……。我慢しないで何とか頑張りなさいよ!
と、当時の私に向かって言いたいのでありますが、いくら大声で叫んでみても、あのときの私の耳には届きません。