【2009年11月6日】
少し早めに家を出て、10時過ぎ、神保町。まだ開店前の古本屋も何軒かあり、開いたばかりの店頭棚では、心なしか並んでいる本の背筋が伸びている。
田村書店の店頭にて、田村隆一『ウィスキー賛歌』(平凡社カラー新書)など4冊買う。この100円段ボール箱も、今はまだほんのちょっとカラスが啄ばんだという程度に整っているけれども、もうしばらくすると鹿が跳ねまわり猪が食い荒らす(⁉)。
11時頃、東京古書会館へ。
愛書会を3時間ほど歩いて篠崎昌美『浪華夜ばなし』正続(朝日文化手帖)2冊500円、大泉黒石『当世浮世大学』200円(現代ユウモア全集刊行会)、中村武志『沢庵のしっぽ』(四季新書)300円など購入。
「やあ」、「どうも」。常連客同士が声を掛け合っている。近況報告や情報交換や、年季の入ったご常連にとって、即売展の会場はまた、交友の場でもあるのだろう。
「何もないですなあ」などと言いながら、またそれぞれの方向へ。
三省堂書店の隣り、神保町古書モールの下の階に新しく三省堂古書館が開業したようなので寄ってみる。
小綺麗な内装、整頓された書架。縛り上げた本の束が通路をふさぐこともない。「三省堂」というだけあって、新刊書店のような雰囲気だ。
幾つかの古書店が棚を分け合って出品しているようである。これは上階の古書モールと同じ形態だ。
少しでも見栄えをよくしようという親切なのか、文庫本のほとんどにビニールカバーが巻いてある。新装の空気にふさわしく、状態の良好な本が精選されているようでもあって、そんなところからも、つい古本であることを忘れそうになり、買いそびれてもすぐに同じ本が補充されるのではないかと錯覚してしまう。
やなせ・たかし『まんが入門』(華書房)200円が、開店記念のうれしい買物となった。
外階段を昇って神保町古書モールでも数冊買う。こちらはとにかく、置けるだけ置き、積めるだけ積み、古本界の伝統(?)を守る。上の本をどかしてみると、下から『駅弁日本一周』がにっこりほほえむ。
ミロンガで珈琲を飲み、小宮山書店のガレージセールから、さいごにもういちど田村書店の段ボール箱まで。くるりと一周。
2009年11月6日 今日の1冊
*三省堂古書館/神保町
『まんが入門』やなせ・たかし(華書房/1965)200円
【2022年11月追記】
三省堂書店すずらん通り側入口の横にあったビルの5階に神保町古書モール。
2009年の秋、そのひとつ下の4階に「三省堂古書館」が開店しました。
新刊書店の三省堂が常設古書売場の営業を始める。画期的な出来事でした。
三省堂古書館は、のち2011年には本店4階に移転。売場と合わせて、正面玄関前や8階催事場で定期的に古書市を行なうなど積極的な活動を続けてきましたが、2022年5月、ビル建て替えのため、三省堂書店本店と共に営業終了。
本店は小川町仮店舗で営業を再開しましたが、三省堂古書館の仮店舗への移転はありませんでした。