【2009年9月29日】
新宿サブナードの古本市。9月のひと月を6つに分けて、それぞれ棚を入れ替えるという趣向のようだ。最終回の今日明日は1冊300円均一。
サブナードの地下歩道は、清潔で直線ですべすべしていて、洋服や小物や、品のよい店舗が並んでいた。この先に古本がなければ私には無縁の一帯だ。案外と人通りが少ない。
小広場の端に、こじんまりとした会場が現われた。もっと盛大に古本があふれているのかとも思ったのだが、300円均一という微妙な値段の設定は、出品するほうも用意が大変なのかもしれない。たとえ規模は小さくても、その時その場所で、必ず品揃えは千変万化なのだから、最初の棚に近づくときの感興に大小はない。
本を手にとり、裏表紙をめくる。あ、ぜんぶ300円なんだ。
これはもう習慣というのか、一種の反射条件で、何かの本を手にとると、どうしても裏表紙をめくって売値を確かめたくなってしまう。このごろは図書館でもこれをやりそうになる(時々やる)。
ただ幾冊かの本を見たところ、初めから300円の品物のみを選別したわけでもなさそうで、「表示価格に関わらず……」と店先に貼り出してあるとおり、在庫処分と言ったら言い方が悪いかな、元の値段から値下げになっている本もあって、つまり古本市に合わせての、家計に親切な特売ということのようだ。なかには2500円などという元の値札が貼ってある本もあり、それだけで買いそうになってしまう。
常安田鶴子『本日検診』は女医の随筆集。お医者さんの随筆集は何冊か買ったことがあるけれど、女医は初めてだ、元値は800円。峯島正行『現代漫画の五〇年』、元値500円。
いちいち元の売値を記さずにはいられないところが、我ながらいじましい。
収穫の筆頭はやなせたかし『愛・LOVE・デュエット』で、もし元値の1000円でもきっと買っていただろう。
2009年9月29日 今日の1冊
*古本浪漫洲/新宿サブナード
『愛・LOVE・デュエット』やなせ・たかし(サンリオ/1980)300円
【2022年11月追記】
新宿サブナードの古本浪漫洲、初探訪の記です。
現在も続く古本市で、最終節の300円均一もすっかりお馴染みです。
どうしても元の値段が気になって、本よりも値札ばかりを注目してしまうのは、いつになっても変わりません。
収穫の筆頭だったはずの『愛・LOVE・デュエット』なのですが……。どこかに埋もれてしまって、どこにあるのか分からないのです。