【2010年1月23日/2022年11月追記】中央線古書展で『蛸のあたま』

【2010年1月23日】
先週、中央線古書展から目録が届いた。申し込んだのだから届くのは当たり前なんだろうけれど、なにぶん初めてのことなのでちょっと昂奮した。
表紙をめくってさっそく、巻頭の飛鳥書房のページに魅力的な2冊を見つけた。

19番 わが俳句交遊記 車谷弘 1,000
94番 蛸のあたま 奥野他見男 1,200

値段も手頃だし思い切って注文しようかと、何度もそのページを広げては見入ったのだが、結局はぐずぐずと遣り過ごしてしまった。
……さて、中央線古書展の会期当日。会場に入ってまず、棚に貼り出された各店の配置表を確認する。ひょっとすると誰も注文しなかったかもしれない。飛鳥書房が割り当てられた室内右奥の棚に近寄る……、ありました『蛸のあたま』発見!
書架のまんなかあたり、大きな本に埋もれるように、文庫本ほどの小さな『蛸のあたま』は、のどかに売れ残っていた。函やカバーはなく少々破れがあって1200円はどうなんだろう、やや高目かな。値札の下に鉛筆書きの「600」なんていう数字(おそらくは前のお店の販売価格)が残っているのが気になるが、おっと。つべこべ言わずに、ここは古本の神様が用意してくれた1冊を素直に授かろう。
もう1冊の『わが俳句交遊記』は見当たらなくて残念だったが欲をかいてはいけない。『蛸のあたま』を手にしたあとは、『花に棲む』林静一(講談社漫画文庫)、『ねらわれた女子高校生』『男装の女子高校生』園生義人(春陽文庫)、『なでぎり随筆』菅原通濟(高風館)、『大同小異帖』宮田重雄(龍星閣)などなど、200円以下の本があれやこれやと手のひらに吸いつくように(もしや吸盤か?)集まってきて心地よい。

ガード下の都丸支店の店頭棚にて『明治大正昭和文学全集』第57巻「辰野九紫/佐々木邦/正木不如丘/中村正常」を見つける。毎度のことながら、岡崎武志氏の著書を読んで知った1冊なのだが、50巻以上もある全集の中の、気になっていた1冊がそれだけぽつんと、単身で店頭に並んでいることがあるのだから面白い。
たしか岡崎氏はこの第57巻を、神保町のやはり店頭で100円で見つけたと書いていた。私は200円。この100円の違いは、大差がないようで、じつは古本屋の店頭における達人と素人とを峻別する100円であることを心得ておこう。

荻窪、ささま書店。店頭均一棚よりユグナン『荒れた海辺』(筑摩書房)など6冊。店内では、あまとりあ社の新書判を4冊。そのうちの3冊、『東西艶奇風俗の散歩』野高一作、『風流諸国ばなし』狭山温、『太平洋の四畳半』高橋晋、は315円だが、ひとつ『へんてこ横丁』野一色幹夫だけは1050円だ。新書判で1000円とは私にとっては破格だが、これも『蛸のあたま』に吸いつけられた1冊と思って買うことに決めた。

2013年1月23日 今日の1冊
*中央線古書展/西部古書会館
『蛸のあたま』奥野他見男(成光館出版部/大正15)1200円

奥野他見男「蛸のあたま」表紙

【2022年11月追記】
古書目録が届く。それだけで1日が明るくなります。
初めて目録が届けれらた日は、ほんとうに感激しました。
以来ずっと、今に至るまで、郵便受けに目録が配達されていたときのよろこびに変わりはありません。
しかし、いざ注文となると、ついぐずぐずして、やっぱり注文しておけばよかったと、終わったあとになって後悔することなど、どうやら昔も今も変わりません。
この日の中央線展のように、注文が入らなかった場合は、会場で目録掲載品が手に入ることもあります。
それにしても私は『蛸のあたま』に浮かれすぎているようでもありますが……。
出品店の「飛鳥書房」は、高円寺駅南口からバス通りを少し歩いた場所にあった古本屋さんです。
店構えも、店内の雰囲気も、昔ながらの古本屋でした。
1年後の2011年1月頃、飛鳥書房を訪れてみると、いつのまにかに閉店していて、そこには不動産屋がありました。