【2009年1月30日/2022年11月追記】西部古書会館の大均一祭から荻窪、西荻窪

【2009年1月30日】
西部古書会館、大均一祭。今日は200円、明日は100円。
惧れと期待と半々、いや根拠のない期待で全身をいっぱいにして会場へ赴く。
たとえば粋筆漫筆の新書判が星雲のごとくきらめいているのではないか、と。惧れのほうは、それらが財布に及ぼす影響についてだが、今はそのことは考えたくない。

いつもの路地を曲がり、小走りに古書会館へ近づくと、門扉や電柱にぺたぺたと「200円」の貼紙がにぎやかだ。
今までの即売展と違うのは、会場への鞄の持ち込みを不問にしていることだった。荷物を持ったまま会場へ入ってもよいみたいだ。
それでも、いつもと同じ場所に荷物置き場が用意してあって、各自勝手に鞄を置いている。保管を担当する荷物係はいないからずいぶん無防備なものだが、古書会館で他人の鞄を置引きするような野暮天は存在しないということのようだ。仮にくすねたところで、鞄の中身はまだ空っぽか、何か入っていたとしても他のお店で買った古本じゃないかな。

私も鞄(まだ空っぽ)を放り出して均一天国へと分け入るのだが、そうは思い通りに事が運ばないのが古本の妙味なのだろう。
あまとりあ新書や旅窓新書は見当たらないし、ユーモア全集も見当たらない。
普段の即売展とは異なる様相、やや見劣りするような出品だからこそまさかの宝物が埋もれているのかもしれず、またそれを見事に発掘できるかどうか、腕を磨くには絶好の機会なのではあるが……。
何か1冊手にとっては、均一祭に出てくるということはそう珍しい本ではないのかもしれない。などと、つまらぬ方向に気を揉んでしまう。そうではなくて、自分にとって珍しければそれでよいじゃないか、と自分を諭しながら、『樹の実草の実』倉多江美(白泉社)、『ドノヴァンの脳髄』カート・シオドマク(ハヤカワ・ファンタジイ)、『ドクトル千一夜』高橋毅一郎(白水社)。
何より今日は、全部200円なんだから、手にとってみて意外な高値にため息をつく心配もないのだ。
『蛔虫(かいちゅう)』『貝の生態』(岩波写真文庫)、『福引妙題集』(太陽社)などを加え、すると今度は、うまく売れ残ってくれたら明日は半額の100円で買えるのではないか。変な色気も湧いてきて困惑したのだが、計12冊を購入する。

都丸支店の店頭棚。文庫本と文庫本の間に挟まっていた小封筒を取り出すと、足尾銅山の絵葉書だった。モノクロの銅山風景が7葉。封筒の裏には鉛筆で「Nov.4.1928」と日付が記してある。昭和3年だ。値段は100円だし、古本屋で絵葉書を買ったことはないから、たまには買ってみよう。

荻窪。このごろは駅とささま書店を往復するだけなので、今日は南口の他の3軒を訪れる。竹陽書房オヤスミ。竹中書店と岩森書店では、端正に整った書棚をうっとり眺め入るばかりで購入なしに終わる。ときどきはこうして、名勝のような書棚に接して眼を養いたいとは思うのだけれど、やっぱり何か買いたい。最後はささま書店へ行って、『ゴッホ』里見勝蔵(アテネびじゅつぶんこ)105円など4冊買う。

もう少し。久しぶりに西荻窪へ。
このあいだ西荻窪を歩いたのはいつだったのか忘れてしまったけれど、たしかどこのお店でも1冊も買えずに淋しい思いをしたのだった。そんな仏滅を味わうとつい足が遠のいてしまうのだが、今日は、夢幻書房、音羽館、ブックスーパーいとう、盛林堂書房、立ち寄ったお店でそれぞれ買い物ができたから、大安だ。音羽館の『泡盛物語』佐藤垢石(アテネ文庫)250円と盛林堂書房の『銀座』松崎天民(中公文庫)300円がうれしい収穫となる。
夕暮れ、こんな吉日の最後には、こちらも久方ぶりの「ダンテ」へ行って熱い珈琲を飲む。

2010年1月30日 今日の1冊
*古書音羽館/西荻窪
『泡盛物語』佐藤垢石(アテネ文庫/1951)250円

佐藤垢石「泡盛物語」表紙

【2022年11月追記】
この日、西部古書会館の「大均一祭」を初めて訪れました。
会場すべての本が均一価格というのですから、否が応でも期待は高まります。
実際は、なるほど均一というだけあって、それ相応の本が多いでしょうか。
私のように頭の中で勝手に夢をふくらませすぎると、やや拍子抜けという結果にもなりそうです。
もちろんそこは腕前ひとつ。大量に買っているお客さんはたくさんいます。
当時は土曜と日曜の2日間開催でしたが、現在は土曜から月曜までの3日間(2022年は1月・4月・7月に開催)。
土曜日200円、日曜日100円、そして最終月曜日は50円(!)均一です。
また土曜と日曜は、学生証の提示で50%OFFと、学生さんにはうれしい特典があります。
学生ではない方も、古書会館などで配布している均一祭のチラシを持って行くと、土曜日曜は10%OFFになります。

西荻窪で巡った4店のうち「夢幻書房」と「ブックスーパーいとう」は、その後閉店して現在はありません。
珈琲の名店「ダンテ」も、2021年8月に閉店してしまいました。