【2010年11月13日/2023年2月追記】高円寺の好書会など

【2010年11月13日】
本日も晴天。西部古書会館、好書会。
午前9時45分、ガレージの廉価本を漁る面々はざっと3、40人。
たぶん親子だと思うのだけれどいつも二人組で参上する親子鷹、一昨日のささま書店でも見かけた小父さん、作務衣を引っかけて終始ニコニコしていている高円寺の若隠居……。
人相を覚えるのが極端に不得手なのでそれくらいしか判らぬが、おそらくは毎回、ほぼ同じ顔触れなのだろう。
あの人はいったいどんな人物なのか、古本紳士録でもあれば面白いのだろうし、そんなものが無いからこそ面白いとも言える。
10時、室内会場の戸が開くと、ほとんどの古本紳士はまだ人目に触れていない新鮮な書架へわれ先にとなだれこむが、数人は混雑を避けて居残り、おっとりとガレージの本を見分している。高円寺の若隠居はおっとり組の一人である。
室内に入れば、ぶっくす丈の御主人(だと思う)の、会場の隅々にまでよく通る声が聞こえてくる。
「バンソロ!」
これは、算盤願います、の意味らしい。
今日の好書会は、そのぶっくす丈の棚から蔵原伸二郎を1冊。『詩人の歩いた道』(梧桐書院)400円。
『岩波写真文庫目録』をめくっている人がいて、横からチラチラ覗きながらとても欲しかったのだけれど、残念、その人に買われてしまった。

蔵原伸二郎「詩人の歩いた道」表紙
『詩人の歩いた道』蔵原伸二郎(梧桐書院=学生選書/1950)

都丸支店の店頭棚に寄って吉岡修一郎『数のロマンス』(学生社)100円。
それから線路伝いに中野まで歩く。
ブロードウェイのまんだらけを訪れると、準備中の札。開店は12時からと記してある。まだそんな時間か。
先に、高田馬場の古書感謝市へ行くことにする。感謝市、空振りに終わる。
中野ブロードウェイに戻って、開店したまんだらけで、土井虎賀壽『抒情詩の厭世』(創元社百花文庫)105円、池松武之亮『随筆いびき博士』(現代新書)210円。
2階の古書うつつの店頭棚で、漆間景和『旅の百面相』(成史書院)100円。全く知らない著者名だが、昭和16年の刊行で、装幀と挿絵は麻生豊。何となく面白そうだ。サンリオSF文庫、ミシェル・ジュリ『不安定な時間』500円と合わせて購入する。

荻窪、ささま書店では、一昨日保留にしておいた2冊、渡辺紳一郎『巴里風物誌』(東峰書房)と足立直郎『鍵穴えん筆』(朋文社)、どちらも525円、購入。
吉祥寺にも寄道して、古本センター。
『命のばし』はどうなっただろうと、以前、ユウモア全集が数冊並んでいた棚のてっぺんを見ると無くなっている。おや、まとめて売れてしまったのか? なおきょろきょろすると、別の棚のいちばん下、しゃがみこまないと見えない隙間に、横積みに押し込まれていた。
どうやら1冊も売れなかったらしく、上から下へ、棚の待遇も格下げになったようである。
しかし冊数はこのあいだより増えていて、吉岡鳥平『哄笑極楽』や東健而『ユウモア突進』が加わっている。
すでに購入済みだが『漫談レヴィウ』も並んでいて、全24巻の現代ユウモア全集のうち、即売展などではあまり見かけない巻がこうして顔を揃えるさまは、なかなかの壮観だ。
どれも函つきで、状態は良好。最後の難関は価格になるわけだが、置き場所が格下げになったから値段も下がるのかと言うとそうもゆかず、『命のばし』は相変わらずの2300円で、『哄笑極楽』と『ユウモア突進』はそれぞれ2500円。
狭い通路にしゃがんだまま、しばらく各冊を撫でまわし、結局、今回も見送った。
これだけ目立たない場所であるし、半分は自分の蔵書を預けているようなつもりになっているのである。久しぶりにいせやで一杯。

【2023年2月追記】
取り立てて追記するほどのことはないような、買ったり買わなかったり、平凡な古本日常です。

池松武之亮「随筆いびき博士」表紙
『随筆いびき博士』池松武之亮(現代新書/1957)