【2010年12月27日/2023年3月追記】西荻窪のナカマ模型で古本を買う

【2010年12月27日】
新宿京王百貨店、歳末古書市。
アジアンドッグ出品の『ナンセンスの機械』は、7月にもこの会場(東西老舗古書市)で見かけている。値札8000円もあのときのままだ。売れ残って、ふたたびの出品となったのだろう。
もしかすると、そろそろ復刊が実現する手筈になっていて、それだから値の張る旧版には誰も手をつけないのではないかと、何の根拠もないが、希望的に独断して静かに見送る。
扶桑文庫が駅弁の掛紙をたくさん出している。稲荷寿司の掛紙など、狐の表情がそれぞれの駅で異なっていてなかなか面白い。1枚200円なら買い揃えたいところだが、1000円から1500円ではそうも参らず、その場で眺めるだけの駅弁旅行。
掛紙の横の〈雑資料〉と記された箱の中には『現代ユウモア全集』の内容見本があった。稀少という意味では本体より内容見本のほうが珍しいのかもしれない。しかし2500円か……。
鈴木信太郎『お祭の太鼓』5000円、あまとりあ社の新書判『もだん芸者行状記』1575円、同じく『夜ごとの素肌』1050円、春陽堂少年文庫『ノンキナトウサン二の巻』2100円、『杉浦非水展』図録8400円。折合いの付かないままに、およそ4時間かけて会場を1周。収穫零冊。
青森県古書組合発行の『青森県古書目録』第22号(無料配布)だけを得る。
百貨店の屋上の灰皿で一服。次はどこへ行こう。
中央線に乗って西荻窪へ。あてにしていた盛林堂書房はしかしオヤスミ。今日は古本の仏滅日なのかもしれんなあ。
ダンテで珈琲を飲む。来年からは店内禁煙になるとの貼紙がある。愛しの灰皿がまたひとつ減るわけだ。
久しぶりに北口の比良木屋を覗いてみるが買物ナシ。その隣りのナカマ模型では、プラモデルに混じって、なぜだか店頭で古本を売っている。
『日本珍味の旅』飯田浩、105円のカラーブックス。ようやく古本を買った。模型屋で古本を買ったのは初めてだ。

【2023年3月追記】『ナンセンスの機械』など
当時、まったく知らずにいたのですが、ブルーノ・ムナーリ『ナンセンスの機械』窪田富男訳(筑摩書房/1979)は、『ムナーリの機械』と改題され、訳者も中山エツコに変わり、2009年に河出書房新社から復刊されていました。
しばらく後にその事実を知ったときにはびっくりしました。
題名や出版社が変わっていたとはいえ、迂闊にもほどがあります。
この日から約半年後、2011年5月に『ナンセンスの機械』は、ささま書店で入手しました。
河出書房新社版の存在を知ったのはさらにその後となりますが、ずっと探しまわっていた筑摩書房版にはやはり愛着がありましたから(執着というべきですが)、もし復刊を知っていたとしても、結局は元版の『ナンセンスの機械』を購入していただろうと思います。
河出書房新社版『ムナーリの機械』も、その後しばらくは品切れが続いていたようですが、2018年にムナーリ没後20周年記念として新装版が刊行されています。復刊の、さらに復刊です。
新装版は現在も新刊で流通しています。定価3190円です。
2009年版と2018年版の相異については、なにぶん『ムナーリの機械』は購入していませんので、詳らかにしません。
結局、待ち望んでいた筑摩書房からの復刊は実現しませんでした。
本来なら、ちくま文庫に収録されても不思議はないような作品なのですが、元版はB5判よりやや小さいくらいの大判で、図版多数のイラスト・ブックでしたから、文庫本のサイズでは難しかったのかもしれません。
新装版が容易に手に入るようになったとはいえ、『ナンセンスの機械』の古書価は今なお5000円を下回ることは少ないようです。状態によって差が出るのでしょうが、だいたい5000円から10000円のあいだで販売されているようです。
筑摩書房版を探している人は案外と多いのかもしれません。
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西荻窪の「古書比良木屋(ひらきや)」は2017年3月に閉店となりました。
その隣りにあった、古本も売る「ナカマ模型」もすでに閉店しています。
また、喫茶の名店「コーヒーロッジ・ダンテ」も、2021年8月に閉店、半世紀以上に及ぶ歴史に幕を閉じました。