【2010年3月23日】
午後、八王子古本散歩。
まつおか書房の店頭で『山のアラカルト』松浦謙助(朋文堂ケルン新書)100円。以前、即売展で迷いつつ見送ったことのある本だ。そのときは300円だった。100円ならすぐ買うかというとやっぱり今日も迷った。
佐藤書房。店先の中公文庫の棚を、今日は何となく『堺利彦伝』はないかなと眺めてみたら『堺利彦伝』は平然とあった。しかも安い、210円。水谷準『殺人狂想曲』(春陽文庫)420円を間にはさんで、店内ではふたたび中公文庫『こしかたの記』鏑木清方、正続2冊472円を見つける。佐藤書房には中公文庫の鉱脈があるようだ。
新書判にも入荷があって、『浮気の味覚』木崎国嘉(徳間書店)210円、『いろ極道』岡本薫(あまとりあ社)315円、『粋筆人間模様』田辺貞之助(高文社)315円と、3冊の収穫。
会計の際、差し出した本をざっと確認した店員さんから「なかなか面白いね」の一言を頂戴する。
合計1942円と告げられたので、1000円札2枚を差し出すと「2円ない?」と訊かれる。
一応は左手に用意しておいた小銭を見せながら「1円玉は1枚しかありません」と答えると、「45円あるじゃない」と言って、左の手のひらから10円玉4枚と5円玉1枚をつまみあげ、「少ないほうがいいからね」と、103円の釣銭をくれた。
判ったような顔で受け取ったけれどほんとうは判っていなかったので、お店の外に出てからオツリの暗算に挑戦する。
2000円を出した場合。2000-1942=58。50円玉1、5円玉1、1円玉3、硬貨は5枚。
2045円の場合。2045-1942=103。100円玉1、1円玉3、硬貨4枚。
おお! たしかに少ない。
帰り道は国立のみちくさ書店に寄道。
スーツ姿の青年が「今日、卒業式でした」と報告すると、お店番の麗人にっこりと「あら、おめでとう」。古本屋にも春の風情がそよと吹き、駅前の桜並木には今年の花が咲きはじめる。
2010年3月23日 今日の1冊
*佐藤書房/八王子
『堺利彦伝』堺利彦(中公文庫/昭和53)210円
【2022年12月追記】
当時の消費税は5%でしたか。
1円玉や5円玉が活躍する時代でした。
古本散歩に出かけるときは、下準備として財布の中を各種の小銭でふくらませておくと安心です。
特に店頭の均一棚から買い物をする際は、なるべくオツリをもらわずに、すばやく済ませたいものです。
それでも、日によっては硬貨の数が間に合わず、あと1円足りなかったりして、結局はオツリをもらう。
家に帰って来てみると、出かける前よりも小銭が増えてしまっているわけです。
消費税8%の時代もその状況に変わりはありませんでしたが、10%になってからは、1円玉の出番はずいぶん少なくなりました。
表示価格に税金分を加えて払う外税式と、表示価格が税込みの内税式と、お店によって異なります。
105円のつもりで用意をすると100円と言われたり、その反対もあったり、なかなか混乱のタネであります。
また、外税式のお店で「¥330」なんかの値札がついていると、自分はいくら支払えばこの本が手に入るのか、もう判りません。
2021年4月からは、税込み表示が義務化になり、本体に記してあるとおりの値段で買える古本屋が増えました。
会計時に消費税を加算していた古書即売展や古本まつりもありましたが、いずれも現在は税込み表示で販売しているようです。
頭の中で消費税の計算をしなくても済むようになったことは、たいへん助かります。
個人経営の古本屋さんでは、今なお外税式を採り入れているお店をときどき見かけます。
たくさんある本の値札(あるいは鉛筆書きの値段)をすべて付け替えるのは並大抵の労力ではできないでしょう。
なかには、表示価格はそのままで、外税から内税に移行する。実質的には値下げとなったお店もあるようです。
事情は新刊書店も同じですが、新刊には定価がありますから、さらに厄介なのかもしれません。
並んでいる全部の本を、明日から税込み表示のカバーに付け替えろとは、無茶にもほどがあります。
さて、小銭の話に戻りますと、消費税が10%になったあとも、100円玉、50円玉、10円玉は依然として活躍します。
税率が11%とか12%とかになってしまったら、また1円玉にお呼びがかかるのでしょう。
しばらくは、今のままでゆくのかと思っていましたが、時代は変わる、ついに最近、現金は使えないという本屋さんが登場しているようです。