【2010年3月8日】
京王線と井の頭線が交わる駅、明大前の周辺を歩く。
まず、井の頭線に乗って、車窓に見える古本屋はどこだったかと、電車の中から探してみる。
池ノ上だった。文紀堂、しかし今日はオヤスミだった。
つづいて、古本浪漫洲のチラシに載っていた中川書房は、所在地を地図で調べると東松原駅の近くのようだ。駅前商店街を進むと、右に折れる路地の先に、すぐ見つかった。
電車からは見えない場所になるけれど、電車や踏切の音が届く距離。
安藤鶴夫『雪まろげ』を手にとってめくってみると、値札に汽車ポッポのイラストが描かれている。700円という微妙な値段に少し迷い、『雪まろげ』は元に戻す。
安い本には特製値札ではなく普通のシールが貼ってあるだけで、私が買った『西ひがし』金子光晴(中公文庫)210円も普通の値札だった。
隣りの明大前までは徒歩で。
池袋西口にあった古本大学の支店が明大前にあるはずなのだが、さてどこだろう。
きょろきょろしながら駅前を通り過ぎ、また戻り、どうしても知りたければ交番で尋ねればよいのだが、そこまでしなくてもよいかと思い、思いながら歩いていたら見つかった。
店内はなかなか広い。なかなか散らかっている。
『はだしになった医者』河村敬吉(現代新書)、お医者さんの随筆集を買う。400円。
さらに隣りの下高井戸に向かって、京王線の線路端を歩く。
こちらも、車窓からいつも気になっていた篠原書店へ。
ううん、狭い!
天井まで積み上げた本が、こちらに向かって傾いている。下手に触れたら雪崩が発生しそうだ。
帳場奥のガラス戸がすうっと開いて、お店番のお婆様が、テレビを見ながら、時々こちらを見ている。
ずいぶん汚れた文庫本ほどの小さな本を抜き取ると『大笑百話』へえ、明治時代の本だ。これが300円なら大喜びだがそんなに甘くはない、きちんと1800円の値が付いていた。
何も買わず、テレビの邪魔をして済みません、と内心で謝しつつ静かに退出。
下高井戸駅前市場を抜けた先の豊川堂でも何も買えずに終わる。
2010年3月8日 今日の1冊
*古本大学明大前支店/明大前
『はだしになった医者』河村敬吉(現代新書/1955)400円

【2022年12月追記】
井の頭線の車窓に見えた「文紀堂書店」は、その後(2016年頃?)、池ノ上から仙川へ移転しました。
東松原の「中川書房」は2012年に神保町へ移転。中川書房があった場所は現在「古書瀧堂」が受け継いで営業しています。
明大前の「古本大学明大前支店」は、翌2011年9月に訪れてみると、いつのまにか閉店していました。池袋の東京芸術劇場の中にあった古本大学は、この日記の当時、すでに閉店しています。
古本大学は明大前のほかにも、さらに経堂と茅ケ崎に支店があったのですが、すべて閉店(大学だから閉校?)してしまいました。
野村宏平氏の『ミステリーファンのための古書店ガイド』(光文社文庫)によりますと、池袋の古本大学は「古書往来座」と店名を改め、西口の芸術劇場から東口の明治通り沿いへと移転したのだそうです。古書往来座は現在も営業。
線路端の「篠原書店」もすでに閉店しています(閉店時期不詳)。
京王線の高架化のため、店舗があった一帯は更地になってしまって、もはや跡形もありません。
なお、この日の『大笑百話』は、後日再訪して購入しました。
下高井戸の「豊川堂書店」は、閉店したわけではないようなのですが、ここ3、4年は休業の日が多いようです。たまに訪れてみると、いつも閉まっているのは残念です。
2018年までは、東京古書会館の「ぐろりや会」に参加していました。