【2010年5月21日】
10時前に神保町。今日は古書会館に直行する。玄関の外まで伸びた入場待ちの行列の尻にくっついて、10時、地下の会場へ。趣味展。
まずは、ぶっくす丈の棚を眺める。このお店は面白そうな本を安い値で提供してくれるのでいつも嬉しい。今日は、『女の一生』川上三太郎・文/小野佐世男・絵(グラフ社)600円、『随筆百花園』正岡容(労働文化社)800円、『漫画寄席』前谷惟光(木耳社)500円。それから、隣りの小父さんが手に持っている本をちらりと覗き見してしまうと、『昆虫たちの国』小山内龍、ああそんな本もあったのか、ちょっと欲しいな、と思う。小父さんは続いて何冊かを棚から抜き出してはまた元に戻し、そうこうして最後には、それまで手放さないでいた『昆虫たちの国』も棚に戻した。あ。小父さんが向こうの棚に去ってゆくのを待ってから、さりげなく、けれど内心では物凄くあわてて『昆虫たちの国』(中央出版)300円を手にとる。
横取りしたようなばつの悪さも多少はあるが、こうやってぼた餅が落っこちてくることもある。もちろんあとで食べようと思っていたぼた餅を誰かに持ってゆかれてしまうこともある。いつだったかの八王子古本まつりでは、そんなふうにして新橋新吉『競馬必勝法』を黒縁眼鏡の髭青年に持ってゆかれた。まあ、時の運だ。
続いて扶桑書房の棚へゆくと、ここは人気があって人だかり。棚のあちこちにはすでに多くの隙間ができている。両手いっぱいにどんどん積み上げる人。不動のまま熟考する人。乱れた棚の整理に忙しいご主人に「『文章世界』を有難うございました」と収穫の礼を述べる人。そんな常連紳士の後ろから首を伸ばして、新詩叢書の城左門『秋風秘抄』を見つける、800円。もう1冊、『趣味の文がら』磯千鳥(博文館)800円。
その他、『ピッピュ』宮西計三(ブロンズ社)300円。計7冊購入。
古書の地下窟から地上へ出ると日差しが強く眩しい。半袖でも暑いほどだが、空気は乾いているので日陰は涼しい。
三省堂書店玄関先の古書市で『旦那の遠めがね』石黒敬七(日本出版協同社)700円。
神保町古書モールで『野球王国』ビル・スターン(ポケット文春)250円。
BOOKDASH、文省堂書店を逍遙して、小宮山書店のガレージでは岡崎武志氏をお見かけする。
田村書店の100円段ボール箱から『石佛巡禮』若杉慧(現代教養文庫)。
巌松堂図書、湘南堂書店と進んで神保町交差点を渡り、アムールショップの店頭2冊100円棚。1冊はすぐに決まったのだが次の1冊がどうしても見つからない。無念だが1冊100円に妥協する。店内では特価のエロホンに手を伸ばすなどして、店頭の『外国の新聞』伊藤慎一(同文館)100円と店内の『め・き・ら』48(ブレインハウス)300円、一緒に会計。
靖国通りに戻り、@ワンダーの外壁棚から『ガミニア伯夫人』アルフレッド・ド・ミュッセ(ロマン文庫)200円。飲まず食わずに歩きまわって17時半。
2010年5月21日 今日の1冊
*趣味展/東京古書会館
『昆虫たちの国』小山内龍(中央出版/昭和21)300円
【2022年12月追記】
東京古書会館の「趣味展」は年6回、奇数月の開催です。
「ぶっくす丈」は趣味展のほかにも幾つかの即売展に参加しており、いつも廉価放出の太っ腹なお店でしたが、残念ながら2015年1月の「杉並書友会」を最後に、すべての即売展から退会されてしまいました。
小山内龍【おさないりゅう、1904-1946】は函館生まれの漫画家・絵本作家。
動物や昆虫のユーモラスな画風が魅力です。
しかしその絵本は、古書価が1万円を超えるのは当たり前で、2万3万ということも。
気軽に入手できないのはもどかしいところです。
エッセイ集『昆虫放談』は、初版以降も出版社を変えながら何度か復刊を重ねており、もっとも手に入り易い著書でしょう。築地書館版(1978年刊)ならば1000円前後で見つかると思います。