【2010年6月7日】
所沢、彩の国古本まつり。
今日が最終日なので、朝一番に駆けつける必要はない。ほんとうのところは、たとえ初日であろうと、私の如き雑本派があわてて出かける必要はないはずなのだが。
昼下がりの電車でのんびり到着。
1階の会場は、前回は100円均一だったが、今回はそうではなかった。
それでもまず手にとるのは『檀流クッキング入門日記』檀晴子(集英社文庫)、100円の文庫本だ。
それから『輪転機は笑う』入江徳郎(鱒書房)525円、『創業者を偲びつつ』岩波書店略史(岩波書店)315円、こうして最後の日まで売れ残っている。
8階の本会場へ上がると、お客さんは閑散としていて、会計当番の人たちも大量の古本も、互いにあくびを嚙み殺しているような、優雅な退屈世界であった。たちまち寛ぐ。
母親に連れられたちびっこが、輪ゴムを拾ったと言ってよろこんでいる。
そんなものを拾ってどうするのかと言われるようなものが、拾った当人はうれしいのだ。
私は私の輪ゴムを拾い集めることにしよう。
『立体脚本新喜劇集』中江良夫(池田書店)315円、『情事の部屋』佐藤みどり(鱒書房グリーン新書)210円、『けもの紳士の昼と夜』小原秀雄(ハヤカワ・ライブラリ)105円、『楽天囚人』堺利彦(売文社)420円、『カエルの世界』松井孝爾(平凡社カラー新書)315円。
2010年6月7日 今日の1冊
*彩の国古本まつり/所沢
『輪転機は笑う』入江徳郎(鱒書房/昭和31)525円
【2023年1月追記】
古本まつりや古書即売展の会場は早い者勝ちの世界です。
新刊書店のように、同じ本が何冊も並ぶわけではありませんから、いちばん先にその本を手にした人が獲得です。
それですから、初日の朝一番をめがけて、古本好きは駆けつけます。
時間が経つほどに、良書や珍書は目利きの先陣がどんどん引き抜いて行ってしまうでしょう。
しかしすべての本が売れてしまうことはありません。
売れ残っているなかにも、面白そうな本はあります。
それが、(自分にとって)面白そうな本ならば、評判とか名声とかは、一切無用です。
古本まつりの最終日。
お客さんはちらほらで、先を争う心配はなく、書棚を独り占めにできます。
周りに誰かがいるわけではありませんから、あわてて手を伸ばすこともない。
お店の人たちはそろそろ後片付けの用意を始めたりして、そうしたなかで、最後に、きらりと輝く1冊に出遭うこともあります。
捨て難い魅力があります。