【2010年8月12日/2023年1月追記】東急百貨店の渋谷大古本市と小田急百貨店の夏の大市

【2010年8月12日】
今週の古書会館は夏期休暇。
その代わりに、新宿、渋谷、池袋と、あちこちでデパート展が催される。
今日は渋谷東急と新宿小田急を探訪。場合によっては一気に池袋西武まで頑張ろうかと目論んでいたのだが、時間が足りなかった。

東急東横店の渋谷大古本市では、雑誌特集の一角に『詩とメルヘン』が50冊ほど積んであり、先日の京王百貨店で見つからなかった『やなせ・たかしの世界第2集』(冬の臨時増刊号)をさっそく発見する。
今日は1、2、3集と、3冊揃って出品されていた。
その中から第2集だけを引き抜いてしまうと、もしこのあとに、やなせさんの愛読者がやって来て1と3を見つけたとしたら、私と同じように2が抜けているからがっかりして、私と同じように第2集を引き続き探し求める羽目になるだろう。
せっかく揃っているものを分断するのは気が引けないこともない。値段は1冊200円なのだから、それだったらむしろ3冊まとめて引き取るのが礼儀ではないのか、とも思う。
しかし諸事情もあり(置き場所)、あるいは京王の老舗古書市でも、そんなふうにして誰かが第2集だけを買って行ったのかもしれない。これは何かの巡り合わせなのだ。
と、都合のよい解釈をして、第2集のみ購入する。
その他、東急では、宮川曼魚『深川のうなぎ』と矢野文夫『放水路落日―長谷川利行晩年』の2冊は1050円だったが、それ以外はほぼ500円以下が9冊と、面白い買物ができた。

購入メモ
*渋谷大古本市/東急東横店
『やなせ・たかしの世界』詩とメルヘン冬の臨時増刊号(サンリオ)200円
『乳房幻想』並木明日雄(松雪詩社)500円
『随筆穴』月丘丘月(日刊プロスポーツ新聞社)315円
『深川のうなぎ』宮川曼魚(住吉書店)1050円
『タンク・タンクロー』阪本牙城(講談社漫画文庫)525円
『あんみつ姫』倉金章介(二見書房サラ文庫)525円
『ネコの探究』今泉吉晴(平凡社カラー新書)315円
『古書殺人事件』マルコ・ペイジ(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)200円
『新しい日本の鉄道』久保田博(カラーブックス)200円
『評伝・和田邦坊』石井雍大(坂出市立大橋記念図書館友の会)500円
『ハイウェイ惑星』石原藤夫(ハヤカワ・SF・シリーズ)300円
『放水路落日―長谷川利行晩年』矢野文夫(芸術社)1050円

小田急百貨店では、三省堂書店夏の大市。
ハヤカワ・SF・シリーズや、『たべものむだ話』や、どうしてそれを買ったのか『毛織物の話』など200円あたりの本をまとめる。
新宿歴史博物館で開かれた展覧会の図録『田辺茂一と新宿文化の担い手たち』は2000円だったが、新宿での買物にはふさわしい1冊ということで少し頑張る。

*三省堂書店夏の大市/小田急百貨店
『殺し屋によろしく』ジェイ・ベネット(角川文庫)200円
『毛織物の話』湯原五郎(洋装社洋装新書)250円
『宇宙翔けるもの』現代ソビエトSF短篇集(ハヤカワ・SF・シリーズ)200円
『月は地獄だ!』ジョン・W・キャンベル(ハヤカワ・SF・シリーズ)200円
『たべものむだ話』山縣弘幸(パール新書)200円
『田辺茂一と新宿文化の担い手たち』(新宿歴史博物館)2000円

湯原五郎「毛織物の話」表紙
『毛織物の話』湯原五郎(洋装社=洋装新書/1955)

【2023年1月追記】
東急東横店の「渋谷大古本市」は毎年8月に開催されていました。
20店舗近くが参加する大きな古本市でしたが、2020年3月に東急東横店が営業を終了するということで、夏の開催は2019年8月の第28回が最後となっています。
東横店閉店直前の2020年2月に特別開催「さよなら東急東横店渋谷大古本市」を行ない、渋谷大古本市は幕を閉じました。
  ◇
小田急百貨店新宿店の「三省堂書店夏の大市」はこの日の探訪が初めてでしたが、翌年以降に訪れた覚えがなく、1回限りの開催だったのかもしれません。
否応なしに時は流れ、小田急百貨店の新宿本館も2022年10月で閉店となりました。
  ◇
東急、小田急、京王。
百貨店の優良催事と言われた古書市も、近年は撤退が相次ぎます。
百貨店そのものが経営に苦心している現状であれば、仕方のないことなのかもしれません。
新宿の伊勢丹でも古書市が行なわれていたというのは、今となっては夢のようでもありますが、訪れる機会のないままに終わってしまったのはつくづく残念です。いちど行ってみたかったと、今でも思います。
毎年2月(2023年は1月)と8月に西武池袋本店の別館で開催される「三省堂書店池袋本店古本まつり」は現在も継続する貴重なデパート古書展です。
しかしその西武池袋本店も、売却してヨドバシカメラになるとかならないとか、今後の展開が気になるところです。