【2010年7月30日/2023年1月追記】東京古書会館のがらくた市から京王百貨店の東西老舗大古書市へ

【2010年7月30日】
東京古書会館、がらくた市。
例によって入場一番はぶっくす丈の棚へ。
鈴木敏夫『江戸の本屋』上・下、小穴隆一『二つの絵』、石川欣一『旅・酒・煙草』と、新書判の連発にさっそく気分が寛ぐ。
それにしてもぶっくす丈は1年で何回くらいの即売展に参加されているのだろう。印象だけで言えばほとんど毎回なんだけれど。
棚を移って三崎堂。一時間文庫の『SEXは必要か』。ずいぶん露わな題名だが、共著者の一人はジェームズ・サーバーだ。
しばらくは眺めるだけの書架漫歩がつづき、整頓先生をお見かけするなどして、終盤、佐藤藝古堂の棚にあまとりあ新書の『風流艶色寄席』正岡まさおかいるるを見つける。
1050円。微妙な値段。小銭で拾い集められることが新書判の魅力とはいえ、それでは納まらないものが現われたときはどうするか。めげずによそを探しまわるのも方法だが、ものによってはスパッと買ってしまったほうが健康には良いみたい。
思い返されるのは昨秋の即売展、和田邦坊『俺が女房にゃ髭がある』が1000円だったのだが、当時はまだ駆出しのさらに駆出し、新書判に1000円を払うなど寸毫も思わない。以来、『俺が…』とはいちども出合わない。どうやら1000円くらいまで上限を引き上げておけば、逸難はだいぶ削減されるようなのだ。
その他3冊。がらくた市では9冊の購入。

購入メモ
*がらくた市/東京古書会館
『江戸の本屋』上・下 鈴木敏夫(中公新書)2冊300円
『二つの絵』小穴隆一(中央公論社)200円
『旅・酒・煙草』石川欣一(旅窓新書)200円
『SEXは必要か』ジェームズ・サーバー/E・B・ホワイト(新潮社一時間文庫)300円
『大阪・堺』野田宇太郎(小山書店)315円
『毒舌ざんげ』阿部真之助(毎日新聞社)315円
『風流艶色寄席』正岡容(あまとりあ社)1050円
『うまのり人生』小津茂郎(講談社)525円

正岡容「風流艶色寄席」表紙
『風流艶色寄席』正岡容(あまとりあ社/1955)

朝方の雨は上がっていた。
三省堂書店の店頭特設古書市で『趣味馬鹿半代記』(東京文献センター)1500円。著者、酒井徳男の名前は、先日読んだ八木福次郎『古本屋の手帖』で目にしたばかりだ。奥付ページの裏の広告を見ると、ああそうか「半代記シリーズ」という叢書だったのだ。岩佐東一郎の『書痴半代記』もその中のひとつ。続刊として八木福次郎氏の『古本半代記』も予告されている。
田村書店、小宮山書店と店頭を覗き、さらに進むと、巌松堂の店頭台でも整頓先生は本の整頓をしておられた。
今日は、神保町は簡略に済ませて、京王百貨店の古書市へ直行する。

酒井徳男「趣味馬鹿半代記」表紙
『趣味馬鹿半代記』酒井徳男(東京文献センター/1968)

新宿、京王百貨店。東西老舗大古書市。
京都から参加の竹岡書店の棚に『趣味の旅○○をたづねて』のシリーズが数冊。
『民謡をたづねて』『川柳をたづねて』『古社寺をたづねて』などあるが、なかでも松川二郎『不思議をたづねて』にしびれる。初めて見る本だ。しかしながら、函もしっかりと備わっていたから、値段も5000円としっかりしていたのは仕方なし。この『○○をたづねて』は全部で何種くらい刊行されたのだろう。
2時間ばかり手ぶらで歩きまわったのち、段ボール箱二箱にぎっしり詰め込んだ『詩とメルヘン』の束と遭遇する。やなせたかし責任編集の月刊雑誌『詩とメルヘン』、バックナンバーを全冊揃えようという大望はいつのまにか薄れてしまったのだけれど、古本で見かければやっぱり気になる。
1冊1冊、てっぺんを指先で引っ掛けながらぱたぱたと、表紙のイラストを眺めながら、おや、春季臨時増刊号『やなせ・たかしの世界』、こんな増刊号があったとは知らなかった。
昭和50年5月の発行。中身は丸ごと、やなせたかし作品集だ。さらに翌51年の『第3集』も発見する、ハヒフヘホー。
『第2集』はどうしたのだろうかと、もういちど最初から見直してみたが見当たらなかった。
いっぺんには揃わない。これこそが古本愉快と言うべきなのか、探す愉しみがひとつ増えた。
この『詩とメルヘン』の段ボール箱は北海道・旭川(ブックビッグボックス)からの到来だった。
講談社学術文庫の、河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)『三千里』上下巻もうれしい発見。今まで上巻のみを見かけたことがあるきりで、上下揃は初めてお目にかかった。青森の誠信堂書店の出品で840円。
丸尾長顕『恋愛作戦要務令』と平井呈一『真夜中の檻』を追加して、最後にアジアンドッグの棚に辿り着くと、白い背表紙に空色の文字で『ナンセンスの機械』と書いてあるので昇天するかと思った。
もしや、もしや、と泡を喰いながら背表紙をめくる。¥8000。現世に呼び戻される。
現物を2回、目録で1回、これまでに見かけたなかでは8000円は最安値だったのだけれど……。古本の神様、もう一声お願いします。

*東西老舗大古書市/京王百貨店新宿店
『やなせ・たかしの世界』詩とメルヘン春季臨時増刊号(サンリオ)315円
『やなせ・たかしの世界第3集』詩とメルヘン春の臨時増刊号(サンリオ)315円
『三千里』上・下 河東碧梧桐(講談社学術文庫)2冊840円
『恋愛作戦要務令』丸尾長顕(双葉新書)630円
『真夜中の檻』平井呈一(創元推理文庫)500円

【2023年1月追記】
東京古書会館の「我楽多市がらくたいち」は、同人数が揃わなくなったとの理由により、2022年7月の開催をもって休会となっています。
それまでは年2回、1月と7月に開催していました。
ふたたび同人(参加店)が確保できた際には再開の予定があるとのことです。
  ◇
がらくた市に参加していた「ぶっくす丈」は、いつも廉価大放出の豪快なお店でした。
いくらなんでも全ての即売展に参加していたわけではありませんし、また南部古書会館への参加はなかったようにも覚えています。
しかし東京会館や西部会館で、ぶっくす丈の棚からは多くの本を買いましたから、自然とそういう印象を抱いてしまうのでしょう。
淋しいことには、その後、2015年1月の杉並書友会を最後に、それまで参加していた全ての即売展から退会されました。雑本派には頼もしい味方でした。
ぶっくす丈につきましては以下の日記もご参照ください。
【2010年5月21日/2022年12月追記】趣味展にて小山内龍『昆虫たちの国』
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『趣味馬鹿半代記』巻末広告で予告されていた、八木福次郎『古本半代記』は、残念ながら刊行には至らなかったようです。読んでみたかった!
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当時の京王百貨店新宿店では、毎年2回、夏と年末に古書市が開催されていました。
夏は「東西老舗大古書市」。年の瀬は「歳末古書市」。
東西20店舗を超える古書店が集結し、大きな会場はいつも盛況でした。
京王百貨店の7階大催場。「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」が行なわれる、あの会場です。
「東西老舗大古書市」は東京でいちばん古いデパート展という歴史のある古書市でしたが、2013年8月の第63回で終了。
「歳末古書市」は、同じく2013年の12月、第13回をもって終了となりました。
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『趣味の旅○○をたづねて』は、博文館が大正末から昭和初期にかけて刊行したシリーズです。
『民謡』『川柳』『古社寺』『不思議』のほかに、『名物』『伝説』『武蔵野』をたづねています。
そのうち『民謡』のみが『新民謡』と合わせての全2冊となっています。
『古本をたづねて』や『本屋をたづねて』があれば面白かったのですが。
文庫本と同じ大きさほどの小型本で、元々は函付の本です。
即売展などでも折に触れて出品されますが、函が備わっている本はあまり見かけないようです。
書目によらず、函付となりますと3000円から5000円くらいの値が付くことになるでしょうか。
函の無い裸本なら1000円前後で買えることがあると思います。
即売展や古本屋さんを歩きまわれば、ときには1000円以下で見つかるのでは。