【2010年7月24日】
古書即売展4か所同時開催。
昨日は南部、東部、東京。古書の夢をさまようて、仕上げは西部古書会館。中央線古書展。
古賀春江『牛を焚く』が出品されているが、5500円、もちろん予算を超えている。
廉価廉価と棚をめぐって楠本憲吉『おんな歳時記』100円と皆川洋『駅弁と珍味』300円。
その2冊で切り上げようとしたら身体が勝手に常田書店の棚に舞い戻り、『牛を焚く』はもうずいぶん昔、源喜堂で6000円だったなあと感慨に耽るまもなく、ふいに血がざざっと逆流するような眩暈を感じて『牛を焚く』を持ったまま帳場へ。
年配の御主人が、値札を剝がした本体を函に戻しながらふっと手をとめて「へえ、古賀春江か……」しみじみとつぶやく。
その瞬間、何と言ったらよいのか、何とも言えない電気みたいな何かが全身を走った。これも一種の感得なのだろうか。
感得に金額の高低は関係ないはずだが、やはり古本世界に分け入るためには、時々こうして財布をはたくことが必須なのかもしれない。
しかし御主人に「いつ頃の本ですか?」と訊かれて「昭和49年みたいですが……」と口籠もるあたりはまだまだ修行が足りぬ。
購入メモ
*中央線古書展/西部古書会館
『おんな歳時記』楠本憲吉(人物往来社)100円
『駅弁と珍味』皆川洋(大陸書房)300円
『牛を焚く』古賀春江詩画集(東出版)5500円
都丸支店の店頭壁棚より地味井平造の短篇が収録された雑誌『幻影城』(絃映社)を2冊。各100円。
1975年9月号に「水色の目の女」及び「作品回顧」。1976年10月号に「煙突奇談」。
探しているバックナンバーがぴたりと見つかるとき、それも100円均一で見つかればなおさら、的中の快が脊髄をくすぐる。ああそれにしても、地味井平造名義の探偵作品も含めて、どこか『長谷川潾二郎全文集』を企画してくれないものか。
中野ブロードウェイ4階のまんだらけで『世界奇談集』R・リプレー(河出文庫)100円。
2階の古書うつつで『版画技法ハンドブック』小野忠重(ダヴィッド社)100円。
荻窪のささま書店均一棚より『昭和・奇人、変人、面白人』野中花(青春出版社)105円。
100円周遊のあとは吉祥寺の古本センター。
先月、棚のいちばん上に現代ユウモア全集が幾冊か入荷していた。そのなかに『命のばし』があったから、踏台に上がって取り出してみたところ2400円で、あえなく踏台を下りたのだった。
今日、それらユウモア全集はあのときのまま1冊も売れずに売れ残っている。
最終巻の『命のばし』は他では見かけたことはないし、函付で2400円ならそれほど無茶ではないかもしれない、と思いつつ、思うだけで踏台には上がらなかった。
いせやに寄道して、昨日今日の古書会館4か所探訪の蒐書を総括する。
総括? 何もまとまりはしない。
ただそのときの1冊1冊が全ての私だとでも言うように、とりとめもなく散らかって、ビールのほろ酔いと、この世を覆う焼鳥のケムリなのである。
【2023年1月追記】
当然、ここでは『牛を焚く』の書影を掲げるべきです。
それはそうなのですが『牛を焚く』は古本の山のどこかへ埋もれてしまっています。
あのときの感得はどこへ行ったのかと言いたくなりますが、さて、ほんとうに私は『牛を焚く』買ったのかどうか怪しくなってきました。
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古賀春江【こがはるえ、1895(明治28)-1933(昭和8)】は、シュルレアリスムの画家です。男性です。
詩画集『牛を焚く』は没後から時を経ての刊行(昭和49年)ですが、生前には『古賀春江画集』(昭和6年)が第一書房より刊行されました。
美術展の図録には『古賀春江の全貌』(東京新聞/2010年)、『古賀春江創作の原点』(ブリヂストン美術館/2001年)、『古賀春江ー創作のプロセス』(東京国立近代美術館/1991年)、などがあります。
また古賀春江の詩、文章、書簡を集成した『写実と空想』(中央公論美術出版/1984年)があります。
『写実と空想』は2004年にオンデマンド版としても再刊されています。
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地味井平造は、画家・長谷川潾二郎の筆名です。
長谷川潾二郎については以下の日記をご参照ください。
→【2010年5月29日/2023年1月追記】湘南古本散歩、平塚・藤沢