【2011年1月22日/2023年3月追記】目録注文の『恋愛満塁』を得る

【2011年1月22日】
昨夜の痛飲につき、朝、半醒半覚。
しかし、悠長にノビている暇はない。即売展三角形の締めくくり、今日は中央線古書展がある。
西部古書会館、11時着。
先陣の混雑が過ぎ去ったことを幸いに、ふわふわと書架を徘徊。しょぼつく目玉に背表紙の文字は枯草となってなびく。二重瞼の古本放浪記。
ぶっくす丈の棚にて、ようやく最初の1冊、通叢書の『西洋画通』中川紀元、500円を手にとり、ほっと一息つく。
これは一昨年の忘年会で友人に進呈(無理矢理?)した本だ。酔いに任せて手放した本が、こうして宿酔の朝に戻ってくることも、何かの因縁でありますか。
さて、目録で注文した『恋愛満塁』は? 無事に入手できた。
帳場に声をかけ、対応してくれた当番の御主人から「ああ、当たっていますよ」と結果を告げられたときには、ささやかながら有頂天になるのであった。
申し込みが一人のときでも、つまり抽籤にはならなくても、当たっていますと答えるのが即売展の慣例のようだが、やっぱり「当たり」はうれしい。
目録注文を受けた本は、受取人の氏名を記した大判の伝票を添えて帳場の机や棚に積まれているのだが、その中から『恋愛満塁』(東成社ユーモア小説全集)を手渡されて、いつもは他人の名前ばかりが記されている紙片に、いざ自分の名前が書かれているのを見ると、まるで一人前に昇格したみたいに晴れがましくなってしまうのだった。

北町一郎「恋愛満塁」表紙
『恋愛満塁』北町一郎
(東成社ユーモア小説全集第14巻/1952)

古書会館のあとは久しぶりに庚申通り商店街の文庫センターを目指したのだが見当たらず。
同じ商店街のDORAMAという屋号の新興古書店を簡単に一巡し、やはり久しぶりの青木書店を訪れるも、またしても何も買えなかった。あまとりあ社の新書判『狂い咲く女群』がカバー欠だったのは惜しい。
都丸支店で『江戸の芸者』陳奮館主人(中公文庫)200円。
帰りはささま書店に寄道して、『紺の背広』源氏鷄太(学風書院)105円と、『恋のお守り』W・デ・ラ・メア(ちくま文庫)315円。
『洲之内徹小説全集』2巻揃で15750円、これはさすがに無理だった。

W・デ・ラ・メア「恋のお守り」表紙
『恋のお守り』W・デ・ラ・メア/橋本槇矩訳
(ちくま文庫/1989)

【2023年3月追記】目録注文のアタリとハズレ/高円寺文庫センターなど
目録から注文した本を手に入れる瞬間というのは、まったくうれしいものです。
この日の初めての感激は、今でも新鮮に思い出すことができます。
何度でも味わいたい古本体験ではありますが、その後、現在に至るまで、じつは目録から注文することはほとんどありません。
多い年で、せいぜい1年に10冊くらいというところでしょか。
目録掲載品は、出品店が選び抜いた本ということになりますので、価格も相応になります。
最低でも1000円くらいの値が付いています(時には500円という品物も見かけますが)。
200円とか300円とかの本を拾い集めようとすると、やはり会場での雑本漁りが主体となりますし、もちろん財布との兼ね合いもあり、目録品まではなかなか手がまわらないというのが実情です。
過去の目録注文を振り返ってみますと、結果はアタリとハズレが半々か、アタリのほうが少し多いかなという感じです。
日記にも記したとおり、注文者が一人の場合でも「アタリ」ということになります。
どれくらいの注文が入ったのか、注文者には知らされませんから何とも言えませんけれど、今まで無事に入手に至った本は、どうやら自分以外に誰も注文しなかったのではないかとも想像されます。
必ずしも抽籤を突破したとはかぎらないのですが、経過はさておきアタリはアタリですから、その喜びに変わりはありません。
反対に「ハズレ」を告げられた時には、心底がっかりです。
その場では平静を装いつつ、顔で笑って心は沈没です。
注文が重複した場合の抽籤方法についても、注文者は窺い知ることができません。
神の思し召すまま、その結果を甘んじて受け容れるのみです。
抽籤に振り落とされて、遠く逃げ去って行った本。巨大なマボロシの書物となって、しばらくは頭から離れてくれません。
手に入れた本よりも、手に入らなかった本のほうが、むしろくっきりと記憶に残ることさえあります。
  ◇
後に知ったのですが「高円寺文庫センター」は、この日の約1か月前、2010年12月25日で閉店していました。探しても見つからないはずです。
「DORAMA庚申通り店」は、2018年の夏頃だったでしょうか、同じ庚申通りのやや北寄りへと店舗移転、店名を「DORAMA高円寺庚申通り店」と改め、現在も営業しています。
庚申通り商店街と交わる中通商店街の一角にあった「青木書店」は、すでに閉店しています(閉店時期不詳)。