【2011年10月29日/2023年6月追記】古本メモ(ちいさな古本博覧会、青空展、神田古本まつり)

【2011年10月29日】
西部古書会館、ちいさな古本博覧会。
『タバコの文化史』加茂儀一(アテネ文庫/昭和25)100円
『げんこつ青春記』三橋一夫(春陽文庫/昭和48)2000円
『下水道』角田喜久雄(春陽文庫/1996)300円
『お嬢さんチャッカリ旅行』長尾みのる(三一新書/昭和41)550円
『はだか説法』手塚正夫(光源社/昭和34)550円
購入5冊。『げんこつ青春記』やや奮発。

長尾みのる「お嬢さんチャッカリ旅行」表紙
『お嬢さんチャッカリ旅行』長尾みのる
(三一新書/昭和41)

東京古書会館、青空展。
あきつ書店の棚から堀内新泉『細君百癖』(内外出版協会/大正10)800円と、冨山房のPR誌『読書界』第一巻、明治40年1月、300円。
かわほり堂の棚では水島爾保布『痴語』が裸本で3500円。手の届かない金額ではないし、欲しいことは欲しいけれども函が見たい。しかしこの売価ではもう二度と御目に掛かれないかもしれない……大きく揺れた末に見送る。

「読書界」第一巻表紙
『読書界』第一巻/明治40年1月(冨山房)

神保町古書店街、神田古本まつり。青空掘り出し市。
三崎堂書店の屋台から渡辺公平『鉄道人生』(日本交通公社ベルブックス/昭和47)100円。
田村書店の店頭で『おいしい駅弁風土記』講談社編(講談社カルチャーブックス/1991)、『エムペードクレス』ヘルダーリン(岩波文庫/1990)、『性愛の日本中世』田中貴子(ちくま学芸文庫/2009)、『王道』マルロー(講談社文芸文庫/2000)、『巫女』ラーゲルクヴィスト(岩波文庫/2003)、各冊とも200円、5冊で1000円。『王道』だけは300円の値が付いていたのだが、100円オマケしてくれた。

玊睛きゅうせいの屋台ではカバーの無い茶ばんだ文庫本に眼を凝らすと和田邦坊『人生ふらふら道中』(日本小説文庫/昭和11)が現われた。500円。
年に一度のこの素晴らしい人混みの、それを端から端まで潜り抜ける骨折りを『人生ふらふら道中』は軽快に吹き飛ばしてくれたのだった。

和田邦坊「人生ふらふら道中」表紙
『人生ふらふら道中』和田邦坊
(日本小説文庫/昭和11)

*(購入書の刊行年〔元号か西暦か〕は奥付の表記に従っています)

【2023年6月追記】青空展(特選古書即売展)
西部古書会館の「ちいさな古本博覧会」は2012年10月で終了しました。
  ◇
東京古書会館の「青空展」は現在の「特選古書即売展」です。
毎年10月末、神田古本まつりの一環として開催されます。
東京古書会館の即売展では唯一、金・土・日と3日間の会期です(他は金・土の2日間)。
今、手許には2009年からの《古書即売展一覧》(古書会館で配布している即売展カレンダー)があるのですが、2012年までは「青空展」、2013年以降は「特選古書即売会」と表記しています。
しかし当初から「古書特選即売会」という名称もあったそうで、「青空」と「特選」の2つの呼び名は、元から併用されていたようです。
時代によって多少の違いはありますが、神田古本まつりの屋外会場は「青空掘出市」、「古本まつり青空展」、「青空古本まつり」などとも呼ばれていますので(現在は「青空掘り出し市」)、それに因んで「青空展」と命名されたのでしょう。
最近でも、ご年輩の方が「青空展」と言ったり、略して「あお展」と言ったりするのを耳にすることがあります。
さて、近年は靖国通り沿いの古書店街に展開する「青空掘り出し市」と、古書会館での「特選古書即売展」と、2つの催し物を総称して「神田古本まつり」となります。
毎年、会場本部などで配布する《神田古本まつりイベントMAP》には、もちろん両会場の案内が載っています。
1週間ほどの期間がある青空掘り出し市に対して、特選展は3日間。また東京古書会館は、掘り出し市会場の古書店街からは少し離れた場所にあります。
神田古本まつりと言えば、まずは歩道にずらりと露店が並ぶ光景が大きく取り上げられますし、特選展までは足を延ばさずに、あるいは気づかずに、帰ってしまう人も多いかと思われます。
研究者や蒐集家を対象としたような特選展が、一般的な脚光を浴びる機会が少ないのは致し方ないのかもしれません。
さらには「掘り出し」と「特選」という呼び名の対比が鮮やかですから、知ってはいても二の足を踏んでしまうという人が少なくないかもしれません。
掘り出し市は廉価な本、もう一方の特選展は高額品……。
実際、特選展の会場には息を呑むような桁違いの稀覯書が数多く出品されます。
しかし、よく見てみればそれほど極端ではなく、1000円以下の本もたくさん並んでいます。
普段ならばもっと高い値の付くはずの珍しい本でも、特価で販売するということもあります。
掘出し物にぶつかる可能性という点では、どちらの会場も全く同等でしょう。
青空掘り出し市では、昔の本から最近の本まで、幅広い品揃えが期待できますが、対して特選展のほうは年代がぐっと遡る古書、所謂「黒ッポイ本」の密度が高いということは言えそうです。
青空会場で古本世界の広さを知り、特選会場でその深さを覗き込む、という感じでしょうか。
古書店街に並ぶ露店を端から端まで、人込みを掻いくぐりながら踏破して、さらに古書会館を巡るとなると、これはなかなかの体力と根性が要求されます。
だんだんくたびれてきて、今日はもうここまでにしようと思いつつ、しかし行く手にはまだ古本があふれていますから、途中でやめるわけにも参りません。

参照
*神田古本まつりの呼び名の移り変わりについては『東京古書組合百年史』(東京都古書籍商業協同組合/2021)第六章「支部及び交換会の歴史」を参照しました。
記事の当該箇所は『稿本神田古書籍商史』『同続編』を参照にして述べているとのことですので、ここでは孫引きということになります。ご了承ください。