【2011年11月12日/2023年6月追記】古書感謝市でカラーブックス〈日本の私鉄〉

【2011年11月12日】
西部古書会館、好書会。
十返肇『けちん坊』(文藝春秋新社/昭和37)210円、『ボルヘス詩集』(思潮社海外詩文庫/1998)400円、購入2冊。9時半から11時半まで。

つづいて高田馬場、BIGBOX古書感謝市。
数十冊のHPBの背が鈍色の光を放っていて、その中から『人類皆殺し』トーマス・M・ディッシュ(ハヤカワ・SF・シリーズ/昭和43)300円、『陸橋殺人事件』ロナルド・ノックス(ハヤカワ・ポケットミステリ/昭和32)100円、SFとミステリを1冊ずつ。
少し横へ動くと、今度はカラーブックス〈日本の私鉄〉が20冊ほど並んでいる。
〈日本の私鉄〉は、雑多な文庫本の平台に単独で紛れこんでいる場合は100円か200円なのだが、まとまって出品されるとなると、揃いの手間賃が付加されるということなのか、1冊500円くらいの値が付くこともしばしば。昔の電車の写真を眺めればそれで満足する程度だから、500円ではちょっとためらうし、あんまり勢揃いしているときは、むしろ見なかったことにしておくほうがよいという〈日本の私鉄〉の歯痒さである。
しかし、試みに西鉄を手にとってみると250円。阪急も阪神も特急電車もみんな250円。計9冊を収穫して、これで全31冊の〈日本の私鉄〉も一気に佳境へと近づいたようである。見つかりそうで案外と見つからないのが京浜急行。

高円寺に戻ってネルケンでひと休み。
駅北口、庚申通り商店街の庚申文化会館では霜月古本祭り。絵本が中心。
あづま通り商店街では縁台ふるほん市。薩摩治郎八『巴里・女・戦争』が並んでいたので思わず手にとり、15000円にびっくりする。
いつのまにかあづま通りに移転していた中央書籍販売をザッとひとまわり。
霜月、縁台、中央書籍、購入ナシに終わる。

*古書感謝市
保育社カラーブックス〈日本の私鉄〉購入メモ
3『阪急』高橋正雄/諸河久(昭和55)
12『阪神』廣井恂一/井上広和(昭和57)
16『西鉄』山本魚睡/松島克広(昭和57)
19『南関東・甲信越』井上広和/高橋摂(昭和57)
22『東海・北陸』井上広和/高橋摂(昭和58)
24『近畿』井上広和/高橋摂(昭和58)
25『特急電車』飯島巌/諸河久(昭和58)
28『中国・四国・九州』井上広和/高橋摂(昭和58)
31『近畿Ⅱ』鹿島雅美(昭和58)
各冊とも250円。

【2023年6月追記】カラーブックス〈日本の私鉄〉
保育社のカラーブックス〈日本の私鉄〉シリーズは、3期に亙って刊行されています。
まず、1980年から84年にかけて、1『近鉄』から始まって、31『近鉄Ⅱ』までの全31冊。
大手私鉄は1社につき1冊(近鉄のみ2冊)、地方の私鉄は『北関東・東北・北海道』、『東海・北陸』『中国・四国・九州』など各地方ごとに1冊です。
その他、『特急電車』、『私鉄の機関車』、『都市の電車』(東日本/西日本)があります。
次に1988年から93年までの13冊。
1『小田急』から13『京王帝都』まで、こちらは大手私鉄のみとなり、冊数はだいぶ減っています。
第1期の刊行開始から10年近くが経過しており、新しい情報などを織り込んだ新装改訂版ということなのでしょう。しかし各冊とも、写真だけでなく、著者も交替していて、単なる改訂版ではなく、まったく別の本に仕上がっています。
さらに1996年から99年にかけては、『京成』から『京阪』までの8冊が刊行されます。
書目によっては三たび著者が代わるなど、やはり従前とは別の本です。
この第3期にはシリーズの通し番号は振られていません。
第2期からはさらに冊数が減っていますが、版元である保育社の経営悪化により、カラーブックスは1999年に刊行を休止しています。
第3期については、おそらく当初の計画が頓挫して、未刊に終わった書目があったのではないかと推測されます。
以上、国会図書館の蔵書や、「日本の古本屋/書誌カタログ」を参照にしつつ、大まかな流れを辿ってみました。全冊数の間違いがあるかもしれないことはお赦しください。
また第1期、2期という呼び名は、便宜のためにここで附したものです。
同じ鉄道会社ながら旧版と新版では著者や通し番号に異同があるなど、なかなか入り組んでいる〈日本の私鉄〉シリーズです。
内容を見ますと、私鉄各社の沿革を知るには恰好のハンドブックとなります。
特に、歴代の車輛についての解説が充実しており、特徴や性能など、専門書並みの知識を得ることができます。巻によっては、当該の私鉄会社の社員の方が執筆を担当していますので、その信頼のほどは申すまでもありません。
もちろん、カラーブックスの真骨頂は、その名のとおり豊富なカラー写真です。
たとえば1980年からの第1期では、各巻とも、昭和時代を駆け抜けた名車輛の雄姿が、ほぼ全ページにわたって収められています(但し解説ページではモノクロ写真)。
昔を知る者には懐かしく、しかしただ懐かしいだけではなく、各社独特のデザインや色づかいは、現代から振り返ってみても、たいへん新鮮です。
昨今、復刻版とでも言うのか、新しい電車に昔の塗装を施して走らせることも多く見られるようですが、若い世代の鉄道ファンからも注目を集めているというのはうなづけます。
この小さなカラー図鑑は、見ていて見飽きることがなく、鉄道知識には疎くても充分に愉しめます(私はその口です)。
2011年当時、私は第1期の31冊を拾い集めておりましたが、おおよそが揃ったところですっかり油断しました。今、全31冊の書目を改めて眺めてみますと、20『名古屋市営地下鉄』や、29『都市の電車(東日本)』は買い漏らしているのではないか? 迂闊です。
またその後の新版のほうは、ほとんど買い求めておりませんので、じつは〈日本の私鉄〉はまだまだ道半ばということになります。