【2011年2月8日/2023年3月追記】東村山、なごやか文庫初売り大古本市

【2011年2月8日】
東村山の社会福祉センターで古本市を開催しているというので出掛けてみる。
東村山駅を降りて線路伝いに歩きはじめると、鎧戸を鎖した建物の庇に〈光書房〉とある。もう、疾うに廃業しているのだろう、ペンキの剝げかけた〈光〉の文字が、薄曇りの空の下、あばら骨の隙間に沁み入るような余寒の一景であった。
今回の古本市は新聞の催物案内で知ったのだが、主催は東村山福祉作業所とのことだ。古本を扱う福祉作業所があるとは知らなかった。
福祉センターに入ってすぐ左手に絵本と児童書を並べた一区画があり、廊下を少し進んだ先の大きな部屋が古本市の会場だった。
2列に設置した平台と、壁の三方を囲む本棚と、なかなかの冊数である。思った以上に古びた本が多く、一面が焦茶色にくすんで見える棚もある。くすんでいればくすんでいるほど古本の棚はうつくしい。
部屋のあちこちに1日の時間割りや仕事の分担表が貼り出してあるから、普段は作業室として使われているのだろう。室内に流れるのは、たぶん誰も聞いていないラジオ、廊下で反響しているのは前川清の熱唱……長閑な午後だ。
およそ2時間半かけて、ゆっくりと遊覧。
『日本のビール』稲垣真美(中公新書)80円、『戦後を走った木造車Ⅰ』若尾侑(大正出版)760円、『グロピウス』蔵田周忠くらたちかただ(彰国社)200円、『七つの夜』ボルヘス(みすず書房)480円、『地酒天国』山本祥一郎(大陸書房)260円、『じめんのうえとじめんのした』アーマ・E・ウェバー(福音館書店)80円。
買入れではなく、寄贈のみで運営しているようなので、全体的に値段はかなり低めに設定されていた。
会計の折にもらったチラシによると、この古本作業所には「なごやか文庫」という屋号が設けられていて、売店(今日は絵本と児童書が置かれていた場所のことらしい)にて通年営業をしているそうだ。
年中無休で朝9時から夜8時までの営業というのはなかなか凄いが、平日の夕方4時以降と土日は無人販売というのだからさらに凄い。古本の無人販売はまだ体験したことがない。
西武線の踏切を渡り、東側から駅へ向かうと、向こうのほうにブックオフの看板が見えたので寄道。105円均一棚から『うるわしきあさも』阪田寛夫短篇集(講談社文芸文庫)購入する。

蔵田周忠「グロピウス」表紙
『グロピウス』蔵田周忠
(彰国社=近代建築家4/1953)

【2023年3月追記】なごやか文庫
「なごやか文庫」は、東村山駅から歩いて10分ほど。
東村山市立社会福祉センターの中にあります。建物に入ってすぐ左手が店舗です。
2019年2月から福祉センター改修のため、なごやか文庫もしばらく休業となっていましたが、2020年4月にふたたび営業を始めました。
折角の再開も、新型コロナウイルスの蔓延と重なってしまって、臨時休業や営業時間の短縮を余儀なくされたようですが、現在は通常運営に戻っています。
営業時間は9時から21時まで。年末年始は休館です。
以前はどことなく薄暗い感じのした店舗内も、改修後は一新されて明るい装いになりました。
何と言ってもその魅力は値段の安さです。散歩のついでにちょっと立ち寄るという人も多いようで、近所に住んでいる人たちがうらやましいです。
毎日毎週は無理でも、定期的に様子を覗きたい古本屋さんです。
店内に帳場のカウンターがありますが、係員が不在の際は、館内の受付窓口で会計をします。
以前は代金箱が置いてあって、自分で計算をして代金を投入するという無人販売方式でした。
なごやか文庫の恒例行事として、毎年2月に開催されていたのが「初売り大古本市」です。
普段の入口脇の店舗ではなく、かなり面積のある大広間で行なわれ、在庫一斉放出というような趣きです。
昔の古書、いわゆる黒ッポイ本を集めた棚も設けられ、価格は1冊200円均一。この古書棚は見どころのひとつとなっています。
掘出し物の期待感を否が応でも高めてくれる古本市なのですが、こちらもコロナ禍により、休催が続いています。
改修直前の2019年2月が、今のところ最後の開催です。2023年も開催されませんでした。
焦っても仕方ないので、ゆっくり再開を待とう……と、思っていたのですが、昨年10月に古本市が開かれていてことを、会期が終わって3か月くらいのちに知りました。
なごやか文庫での古本市は3年半ぶりということになるでしょうか。
10月21・22日の両日、規模を縮小して開催したということですが、例年とは異なる時期であったため、まったく気がつきませんでした。不覚でした!
(古本市の最新情報などは「東村山市立社会福祉センター」→「なごやか文庫」のページで確認できます)
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東村山駅東口の「BOOKOFF東村山店」は2018年3月に閉店となりました。