【2011年3月13日】
西部古書会館に電話をして問い合わせると「開催しております」との返事。それならば参りましょう、参りますとも。
13時、西部古書会館。古書愛好会。
天心堂の棚に、1月の愛書会で見覚えのある『横顔の提督』摂津茂和(興亜日本社)がふたたび。
表紙(装幀、山名文夫)の汚れは勿論、価格2000円もあのときのままだったが、これも何かの縁かもしれず、買うことにする。同じく天心堂の棚から『シモンのシモン』四谷シモン(イザラ書房)2000円。
さらに天心堂では『オナニーと日本人』に迷う。2500円というのはなかなか特価ではないだろうか、たしかささま書店では4000円近くで売っていたような記憶もある。しばらく迷ったが、予算との兼ね合いもあり、見送った。
その他、『片方の心』有島生馬(プラトン社)250円、『盤珪禅師語録』鈴木大拙編校(岩波文庫)300円。
ちなみに古書愛好会は、昨日12日も予定通り開催していたそうである。
ネルケンは休業。何事もなければよいのだが。
珈琲の代わりにガード下の四文屋で焼酎を呑む。
荻窪、ささま書店。『お話について』松岡享子(東京子ども図書館)105円、『マルセル・エメ傑作短編集』マルセル・エメ(中公文庫)525円、『くまの木』佐々木マキ(福音館書店)315円、『ガラスの世界』(アサヒ写真ブック)210円、『柳瀬正夢デッサン集』(岩崎美術社)840円。
【2011年3月25日】
朝、微熱が残る。喉は腫れたままで手足もだるいが、神保町へ行けば何とかなるだろう。
12時、東京古書会館。趣味展。
2時間ほど会場を歩いて、扶桑書房の棚から『女群行進』浅原六朗(新潮社新興芸術派叢書)4000円、購入1冊のみ。
田村書店の店頭で『物の味方』フランシス・ポンジュ(思潮社)200円、『芸術の哲学』ゲオルク・ジンメル(白水社)200円。
小宮山書店ガレージセールを覗き、それから小宮山書店の店内にも入り2階へ行ってみると、地震で転倒した窓際の棚はすべて撤去してあった。棚からあふれた文庫本は紐でくくって通路に積んであった。
ラドリオの外壁の煉瓦は、きれいに修復されていた。ミロンガで珈琲を飲む。
地震の日から恰度2週間が経つが、節電の励行のほかは、町全体に際立った変化はないようだ。
古本屋に、古本がある。
その当たり前がしみじみと有難い。
ありきたりということ、異変ということ、そのどちらもが同じように現実でありそれこそがまさに夢なのだと、妙な具合に実感したり、しなかったり。何を言ってもただの寝言には違いないのだが、全てが夢ならば、私も夢のひとかけらだ。古本屋に古本があるという、その当たり前が摩訶不思議なのである。
@ワンダーまで、ひととおり店頭を歩く。しかしやっぱり今日はけだるい。早めに帰宅。
【2011年3月26日】
西部古書会館、中央線古書展。
ガレージにて徳川夢声『甘辛十五年』(コバルト叢書)を見つける。背表紙が破れていて、糊付けもほぼ剝げているが、200円ならうれしい。ガレージからはそのほか『ヨーロッパ鉄道の旅』中田安治(駸々堂)200円。
室内、芳林文庫が目録に載せていた夢声『くらがり廿年』(春陽堂文庫)2500円は注文があったようで会場の棚には見当たらなかった。
『善心悪心』沢村章子(沈美社)300円、『酒の肴』酒井佐和子(婦人画報社)300円、『ニッポン駅弁大全』小林しのぶ(文藝春秋)200円、『都営地下鉄』山田玉成/諸河久(カラーブックス)200円、『美味はたのし』福島慶子(六月社)400円。廉価の本を拾い集める。
徒歩で中野。今日は風が強い。
久しぶりにブロードウェイへ行き、まんだらけと古書うつつは空振りに終わるが、珍しくタコシェで古本を購入した。『あな・かしこ』和田一優憙(光正文庫)315円と『ぐっど・ないと』秦豊吉(東京出版)420円。
徒歩で高円寺へ戻り、ネルケン。ああ、営業している。よかった。ぼんやり珈琲にくつろぐ。
都丸支店、店頭の壁棚から『網走番外地』伊藤一(プレス東京)500円、『泥棒たちの舞踏会』ジャン・アヌイ(白水社現代海外戯曲)300円、『天使が二人天降る』ギュンター・ヴァイゼンボルン(同じく現代海外戯曲)300円、『龍鬚溝』老舎(未来社てすぴす叢書)300円。
店内では『赤白黒』まつやまふみお(造形社)800円と、『夜の冒険』S・A・ドゥーゼ(日本出版協同)2500円。ドゥーゼは知らない作家だが、〈異色探偵小説選集第7巻〉という、その〈異色〉の二文字に魅かれ思い切って購入する。花森安治の装幀にも味わいがあった。
迷ったのは西川満『七宝の手筐』(新小説社)1800円で、こちらは初山滋の装幀が魅力だったが今日は見送る。
さて、ガード下の四文屋へ。
隣席ですでに上機嫌を迎えていた御仁は、西部古書会館の帰りということだった。折口信夫の著作を集めているそうで、今日は良い本を見つけたと言って『かぶき讚』を見せてくれた。
私の眼中に全くなかったはずの本が、その本を愛する人の掌中でめくられると、とても輝いて見える。そしてちょっと読んでみたくなる。
【2023年3月追記】
東日本大震災の発生から2週間が過ぎる頃までのうろうろです。
西部古書会館の「古書愛好会」は、地震の直後(3月12日、13日)も予定通り開催されました。
古書会館の古書即売展は、地震の影響で中止になった会はひとつもなかったようです。
記憶はもはや曖昧ですが、地震の日からしばらく日記を怠けていたようで、3月末になってようやく、11日以降をまとめて書いた、と当時の日記に書いてありました。
そんなわけですから、個々の記述は、いつにも増して粗雑です。見ておくこと書いておくことは他にたくさんあったはずではないかと、あとになって読み返せば迂闊ばかりが目についてがっかりしますが、今更ながら取り繕うわけにも参りません。
〈以前〉と〈以後〉で語り分けられるような天変地異が起こっても、まるであさっての方角を向いて、〈以前以後〉どころか〈今〉さえ欠落しているような日記です。
どうしても、古本のことばかりを書きつけます。