【2011年8月26日】
東京古書会館、書窓展。
けやき書店の棚に旺文社文庫の内田百閒がずらりと並んでいた。そこから2冊、『王様の背中』と、平山三郎『実歴阿房列車先生』、各500円。
それでおしまい。
あきつ書店からも零冊だ。
会場入口のショーケースには目録で注目したカネー社『恋の丸ビル』が鄭重に陳列されていた。
田村書店店頭、小宮山書店ガレージ、買物ナシ。
ミロンガでぼんやり。
靖国通り沿いに進み、神田古書センター店頭で反町茂雄『蒐集家・業界・業界人』(八木書店)1050円、購入。
@ワンダーの店内をうろうろして外に出ると、猛烈な雨。
先週に続いて土砂降りの神保町だ。
岩波ブックセンターにて雑誌『日本古書通信』8月号を買う。700円。
昨年秋に『彷書月刊』が休刊となってからは、『日本古書通信』が唯一の古書雑誌なのだろうけれど、その貴重な雑誌を、こうやって気紛れに買ったり、ほとんどは買わなかったり。
雨宿りのついでに店内の棚を歩いてまわる。急な雨に、同類多数。
書物に関する本を集めた棚に『えびな書店店主の記』蝦名則、という小冊を見つける。1250円。
「港の人」という風変わりな名前の版元で、「四月と十月文庫」というこれまた風変わりな叢書名。
そう言えば、どこだったかの美術館の売店で、ずいぶん前に『四月と十月』という同人誌を買ったことがあったことを思い出す。
【2023年4月追記】岩波ブックセンター信山社/えびな書店
「岩波ブックセンター信山社」は、古書店街の中の新刊書店です。
神保町交差点のすぐ近く、靖国通りを少し西に進んだところにありました。
店名が示すとおり、岩波書店の刊行物の品揃えがたいへん充実していましたが、岩波の直営店というわけではなかったようです(ちなみに店舗の所在地、千代田区神田神保町2-3は岩波書店の創業の地です。現在の岩波書店はそこからおよそ70m南の千代田区一ツ橋2-5-5にあります)。
人文書を中心とした棚の構成が大きな特色で、セレクトショップほど選び過ぎていないというような、適度に雑駁としているあたりも心地よく、色々な角度から好奇心を刺激してくれました。
店内を一周するだけで、聡明さが身体に沁み込んでくるようにさえ思えたものです。錯覚ですが……。
一般の新刊書店では見かけないような雑誌もさりげなく置いてありました。『日本古書通信』もそのひとつでしょう。
書物に関する本、いわゆる本の本を集めた棚は見どころのひとつでした。
読書随筆もあれば、出版についての専門書もあり、こんな本があったのかと、棚に教えられたことは一度や二度ではありません。
しかしその場では買わず、そのうち古本で見つけよう(安く買おう)と思うあたりは悪い癖です。
信山社会長であり、また店主でもあった柴田信氏の逝去をうけて、岩波ブックセンター信山社は2016年11月に店を閉じました。
閉店は業界だけの話題にとどまらず、新聞記事にも取り上げられました。
しばらくは町の中にぽっかり穴が開いたような寂しい日々が続きますが、2018年4月、ひっそりと静まり返っていた店舗跡は「神保町ブックセンター」としてよみがえりました。
岩波書店の本を専門に扱う新刊書店です。
カフェが設けられ、店内の装いは一新しましたが、壁一面の岩波文庫の棚は信山社時代を彷彿とさせます。
柴田信氏には『ヨキミセサカエル―本の街・神田神保町から』(日本エディタースクール出版部/1991)という著書があります。
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『えびな書店店主の記』の「えびな書店」は美術書専門の古書店です。
東京都小金井市にありますが、通信販売のみの営業で店舗販売は行なっていません。
松屋銀座の「銀座古書の市」に出店していた時期があり、図録を豊富に取り揃えた棚は見応えがありました。
えびな書店の本を直接手にとって買うことができる唯一の機会でしたが、2018年を最後に参加されていません。
その銀座古書の市も、コロナ禍により2021年から休催が続いています。