【2011年9月26日】
新橋古本まつり、初日。
銀座線新橋駅の階段を昇り切ると、行く手には青と白の縞々屋根のテントが見える。
テントの下には古本がある。躰の中がふつふつと、栓を抜いたばかりの炭酸水のように泡立って、早足に。
取り掛かってすぐ、ユーモア新書『いらっしゃいませ』代田安彦(鱒書房/昭和30)を見つける、300円。
それから『少女ヴィクトリア』セレナ・ウォーフィールド(富士見ロマン文庫/昭和52)200円と、それからそのあとはぱたりと音沙汰なし。
最後に『立ちそば大全』今柊二(竹書房文庫/2010)315円を加えて計3冊。
広場の灰皿で一服ふかしていると雨粒が落ちてきた。SL広場を訪れると、雨に降られる確率が高い。
機関車C11号が正午の汽笛を鳴らす。
新宿に移って、サブナードの古本浪漫洲。
『世界Aの報告書』ブライアン・W・オールディス(サンリオSF文庫/昭和59)525円、1冊。
朝の出足のふつふつからすると、やや気抜けなるか。
まあしかし、慾はかくまい。
慾張りはみっともないが、そうかと言って完全な無慾では1冊も要らなくなってしまうし、慾の置き所をさがしながら、今日は今日の古本をせっせと運ぶ。
【2023年5月追記】代田安彦
『いらっしゃいませ』の著者、代田安彦についてはよく判りません。
国会図書館の著者標目では「ダイタ、ヤスヒコ」のカナ読みを与えており、また「1904-」と生年は記してあります。
1904年(明治37年)に生まれて、もし御存命であるとすれば119歳になられるはずですが、長寿番付にその名はお見かけしないようですし、おそらく鬼籍に入られて久しいのではないかと思われます。
著者標目の記載は、没年不詳ということなのでしょう。
その他の著作では『大先生の帽子』(東方社/1959)の1冊があるのみです。
ただしこれも、国会図書館に収蔵されていないだけで、時代に埋もれてしまった別の作品があるのかもしれません。
『大先生の帽子』……即売展でも古本屋さんでも見かけたことはありませんし、今の今まで、存在すら知りませんでした。俄かに気になり始めています。
『いらっしゃいませ』はデパートを舞台にしたユーモア小説です。けれども、買うだけ買ってじつは読んでいません。
刊行の同年(1955年)には同書を原作として映画にもなっているそうです。
監督、瑞穂春海。脚色、長瀬喜伴。配給は東宝。
森繁久彌や香川京子など、名優が出演しています。
(参照*〈映画.com〉作品情報)