【2012年11月2日】
東京古書会館、愛書会。
波多野巌松堂の廉価本から伊能孝『秘湯の旅』(読売新聞社=サラリーマン・ブックス/昭和38)100円と中川浩一『茨城県鉄道夜話』(筑波書林=ふるさと文庫/昭和56)上下巻2冊500円。
この波多野巌松堂、今回の目録には昭和初期のエロ・グロを200冊以上も出品しており、その芬々たるいかがわしさに眼が廻りそうになった。
一括購入も大歓迎とのことで、実際、今朝の会場には目録掲載品のほとんどすべての本が置いていなかったから、ごっそり買い占めた豪傑がいるのかもしれない。
せめて買ったつもりになって幾冊か書名だけでも記しておくと……『らぶ・ひるたア』『エロ・エロ東京娘百景』『浮世オン・パレード』『巴里上海歓楽郷案内』『日本歓楽郷案内』『漫画デカメロン』『美人乱舞』(以上7冊買い上げたとすると29万3000円!)……。
即売展に戻って千年堂書店の棚より『パタシュ風にのる』トリスタン・ドレーム(牧神社/昭和52)735円。うまい具合に第2巻が見つかった。あとは『パタシュ夢であれ』の1冊。そう言えばこのあいだの夢の中では、パタシュにはまだ『パタシュ・サンドイッチの本』と『パタシュ・ハムの本』の2冊があり、全5巻であることを知ったのだった。
以上、購入4冊。東京愛書会350回記念ということで、会計の際に記念品の三色ボールペンを頂く。
ミロンガで珈琲。
それにしても今日は身体がけだるい。煙草のケムリが喉に引っかかるし、腰骨のあたりを悪寒が走る。
明日が最終日の神田古本まつりを最後にもう一歩き。
田村書店の屋台にて土井虎賀壽『生の祈願と否定の精神』(八雲書店/昭和23)300円。きっと読まないだろうけれど、洲之内徹が『気まぐれ美術館』で紹介していた画家でもあるので。
山田書店の屋台では月刊ペン社の妖精文庫が10種ほど、各作品とも数冊ずつの平積みになっていて300円均一。このお店はたしか去年の神田古本まつりでも妖精文庫の特売をしていた。いったい何冊の妖精文庫を抱えているのだろう。『火山を運ぶ男』ジュール・シュペルヴィエル(月刊ペン社=妖精文庫/昭和55)、『マルペルチュイ』ジャン・レイ(妖精文庫/昭和54)、2冊を購入する。
高円寺、ガード下四文屋。
新しい店長さん(?)が、にこりともせず、仁王立ちで身構えている。四文屋でこの雰囲気はちょっと気まずいのである。早めに切り上げたほうがよさそうだと観念しかけていると、そこへ郵便局勤務のご常連が来店、絶妙な語り口で仁王立ちの神経を揉みほぐしたものなのか、いつしか店長さんには愛想さえ兆し始めるのだった。さすがだ。結局はいつもどおりに焼酎のおかわりなどして、呑んでいるうちにだんだん身体が軽くなってきた。

(月刊ペン社=妖精文庫/昭和55)
【2012年11月3日】
西部古書会館、古書愛好会。
浅見書店の棚で『あちゃらか人生』古川緑波(アソカ書房/昭和31)、300円は親切だ。
悠山社書店の棚では『世界名作紀行』吉岡勇(駸々堂ユニコンカラー双書/昭和52)と『出版広告の話』村崎和也(日本エディタースクール出版部/昭和53)、各100円。
早足にすべての棚を一瞥し、二巡目は雑誌や小冊子など背表紙のない薄冊をいちいち引っ張りだす。
ふたたびの浅見書店で『コケシの話』三原良吉(仙台市役所=仙台郷土誌叢書/昭和25)、あちゃらかと同額の300円。
竹岡書店の棚から『夢幻詩集』及川均(日本未来派発行所/昭和29)150円。及川均は『焼酎詩集』の詩人だ。
荻窪に移動して、ささま書店。
店頭均一から『こぶたのおまわりさん』シーブ・セーデリング(岩波書店/1993)105円。
店内で『ノアの方舟』ジュール・シュペルヴィエル(ハヤカワ文庫/昭和50)315円。
最後は吉祥寺に寄道。バサラ・ブックスにて寺山修司『ヨーロッパ零年』(毎日新聞社/昭和45)が2000円なら買ってしまおう。勢いで『皇帝に捧げる乳歯』オルランド(牧神社/昭和51)600円も買う。

(アソカ書房/昭和31)
【2025年2月追記】東京愛書会/古書愛好会展
愛書会、正しくは「東京愛書会」は奇数月の開催。年6回行なわれます。
年の初めの愛書会。ここ数年は東京古書会館の新年最初の即売展です。
2025年1月10・11日の開催が第423回。
参加店のひとつ「波多野巌松堂書店」の棚は今なおほとんどが廉価の本と雑誌で埋め尽くされ、雑本漁りのたのしみを思う存分に味わわせてくれます。
棚の前の平台には雑貨あれこれを詰め込んだ箱が置かれ、こちらも毎回、人気を集めているようです。
敬愛をこめてがらくた箱と呼んでおりますが、棚の本には目もくれず、がらくたに集中するお客さんの姿も見かけます。こちらもだいたい1000円以内の品物ですし、案外と、掘出し物の宝庫であるかもしれません。
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西部古書会館の「古書愛好会展」は現在「高円寺優書会」と名称を改めています。
愛好会としては2022年11月の第103回が最後の開催でした。
翌2023年6月より高円寺優書会となり、新しい参加店も加わるなど心機一転の再出発となりました。
愛好会時代は年3回でしたが、優書会は年2回。2024年は6月と11月に開催されました。