【2012年3月25日/2023年10月追記】ダイエー大古書市と才谷屋書店

【2012年3月25日】
朝からの好天に虫はうごめ、古本のあるほうへ。
国分寺から西武電車を乗り継いで武蔵砂川。
駅も駅前風景も、のどかな昼下がり。園芸林の白梅の花は盛りを過ぎて、道端のキャベツ畑からは土と堆肥の芳香(?)がただよう。
20分ほど歩いてダイエー武蔵村山店。
『日本古書通信』の情報欄には「ダイエー大古書市」と記してあったのだが、その会場は、休憩所の脇のこじんまりとした小広場で、どこが「大」なのか、やや拍子抜けする。
ダイエーだからダイ・・古書市ということなのかしらん。
参加するのは斉藤古本店、ブックジャム、柏林堂の3店舗で、いずれも千葉県の古本屋だ。
約30分の小探索、『火星への旅』宮本正太郎(駸々堂ユニコンカラー双書/昭和52)420円、こじんまりと買う。

宮本正太郎「火星への旅」表紙
『火星への旅』宮本正太郎
(駸々堂ユニコンカラー双書/昭和52)

折角だから食料品売場に赴き、宝カンチューハイなど買い求め、帰り道、一杯ひっかけながらぶらぶら歩く。土堤を走る黄色い電車を、陽光がいっそう黄色に光らせる。
国分寺で途中下車。
北口の、このあいだは臨時休業にぶつかった才谷屋書店を訪れて、『遊星よりの昆虫軍X』ジョン・スラデック(ハヤカワ文庫/1992)150円。
店内の床には紐で縛ったままの書物の山と、帳場の机には値札がたくさん。これから即売展の準備をするのかもしれない。
何年振りかの名曲喫茶でんえんで珈琲を飲んで帰る。

【2023年10月追記】スーパーマーケットの古本市
スーパーマーケットで古本市が行なわれていた時代がありました。
昭和40年代から50年代にかけてが全盛期ということになるのでしょうか。
どこで、どのくらい行なっていたのか、具体的な当時の状況は詳らかにしませんが、東京周辺、神奈川、千葉、埼玉などでは、郊外店を中心として頻繁に催されていたようです。
ブックオフはもちろんまだありませんし、気安く立ち寄れるリサイクル系古書店も少なかった時代ですから、日常の買物先に突如現われる古本市は、大いに歓迎されたようです。
並べるそばから飛ぶように売れて補充が追いつかない、なんていう逸話も残っているようですし、スーパーからスーパーへ、行商のように古本市を巡回して、それだけで経営が成り立つ古本屋さんもあったそうです。
本や雑誌が、娯楽の中核であり、また有力な情報源を担っていた時代でした。
昭和40年代より以前にお生まれであれば、実際に目にされた方も多いのではないでしょうか。
私自身、中学生の時分には、近所の西友やイトーヨーカ堂で、何度か古本市に遭遇した覚えがあります。
昭和末から平成初期(1980年代から90年代)にかけて、おそらく総合スーパーでの古本市は撤退が相次いだのではないかと思われます。
その後の小売業態の変化に合わせ、近年はショッピングモールなど複合型の大規模商業施設を会場にした古本市がいくつか開かれています。
21世紀になって、まったく消え果ててしまったわけではないとはいえ、この日のダイエー大古書市は、残り火のひとつであったと言えそうです。隆盛を極めた一時代は過ぎ去りました。
古本を満載した自動車が、あちこちのスーパーマーケットを目掛けて走りまわる。西友で古本市とか、今から思えば夢のような話でもありますが、いつの世も、今も、後々から振り返れば等しく夢の一幕でありましょうか。
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三鷹駅北口に面したビルの地下一階に店舗を構えていた「才谷屋書店」は、多分2011年頃だと思うのですが、国分寺へ移転しました。
国分寺駅の北口、早稲田実業の少し先です。
しかしその後は店舗を閉じ、現在は事務所営業のみ行なっています。店売りの終了時期も不詳です。
西部古書会館の即売展や中央線沿線の古本市などでは御馴染みの古本屋さんで、幅広い分野の本を安目の価格で提供してくださるお店でしたが、最近の催事参加状況については把握できておりません。
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国分寺の名曲喫茶「でんえん」は、創業から60年以上が経った今なお営業しています。
古本巡りのあとで立ち寄れば、優雅な時間旅行を愉しめるでしょう。