【2012年3月29日】
西部古書会館、ブック&A。
今回で第4回だが、初日に訪れるのは初めてだ。
ライナー・チムニク『小さなとらと大どろぼう』(偕成社/昭和43)400円。
出品元の浩仁堂は初めて目にする屋号だった。
才谷屋書店が参加しているということは、先日の日曜日に店舗を訪れた際、帳場では催事参加の準備をしているようだったけれども、そのとき店内に溢れ返っていた書物が、今日ここに運び込まれたということなのだろうか。その才谷屋書店の棚から『浅草』白浜研一郎(カイガイ出版Kブックスホビー/昭和51)と、『劇場二十年』秦豊吉(朝日新聞社/昭和30)、どちらも350円。
金額の話に終始するのは行儀が悪いが、『浅草』は先週の趣味展で扶桑書房が800円の値を付けていたし、『劇場二十年』はいつだったか、2000円くらいで並んでいたのを見た覚えがある。なお、『劇場二十年』のカバー抽象画は難波田龍起だ。
よちよち歩きの珍客が、見よう見まねで書架に取りつき、また爺やに呼ばれて抱きかかえられては、かわいらしい質問を投げかけている。
「ふるいほんがほしいの?」
そうなんだ。ここにいる大人の全員は、古い本が欲しくて欲しくてたまらないんだ。
千年堂書店の棚から市村弘正『〔増補〕小さなものの諸形態』(平凡社ライブラリー/2004)525円。
市村氏の著作は、以前にやはり平凡社ライブラリーの『「名づけ」の精神史』を読んで感銘を受けた記憶あり。
どのような感銘だったのかを書き記すことは出来ないが、つまり忘れているのだが、忘却の空間に、何か消え残ってもやもやと、感銘のケムリがただようているのである。
【2023年10月追記】小さな来場者
古書会館の即売展で小さな子どもを見かけることはまずありません。
ごく稀には、たぶん何も知らずに手を引かれてやって来るのでしょうけれど、かわいらしい来場者が棚のあいだを逍遙していることも。
たとえばこの日は、お祖父さまに連れらてのご来場だったようです。
お孫さんにとっては初めての即売展だったのかもしれませんが、「ふるいほんがほしいの?」などと、核心を突く質問を、無邪気に投げかけてくれました。
一方、古書会館以外の古本まつりでは、親と、あるいは祖父母と、あるいは家族一緒に、古本を見て歩くお子さんの姿を、割合によく見かけます。
たいていは、絵本のようですが、その場で伸びやかな朗読が始まったり、本には飽きてしまってぐずったり。
本よりも、床に落ちている輪ゴムのほうが輝いて見えるということも、子どもにとってはあるようです。
「そんなものは拾わないで」と、横からお母さんは注意をしますけれど、子どもにとってのそのときの輪ゴムが、つまり大人にとっての古本です。