【2012年3月30日/2023年10月追記】東京堂書店で通叢書の文庫化におどろく

【2012年3月30日】
東京古書会館、和洋会。
波多野巌松堂の棚で『風流はだか痴理風俗』岡本薫(あまとりあ社/昭和38)100円。
玊睛きゅうせいの棚で『尋ね当らず』越智信平(四季新書/昭和30)300円。
購入はこの新書判の2冊。
夏目書店書好洞の棚では、通叢書『上方色町通』が魅力なるも価格4500円に断念。
目録で注目したのは誠文堂十銭文庫の『三都花街めぐり』松川二郎だったが、会場には並んでいなかった。並んでいたとしても6000円なのだからどうしようもないのだが、せめて現物をひと撫でしてみたかった。
迷ったのは『世界鉄道切手図鑑』1000円で、切手の図版がモノクロだったのは惜しい。

岡本薫「風流はだか痴理風俗」表紙
『風流はだか痴理風俗』岡本薫
(あまとりあ社/昭和38)
越智信平「尋ね当らず」表紙
『尋ね当らず』越智信平
(四季新書/昭和30)

ミロンガにて『夢声戦争日記』第三巻読み終わる。
それから古書店街の店頭棚を伝って日本特価書籍まで。
折り返してすずらん通り、新装の東京堂書店を見物。コーヒー店が併設されている。
文庫本の棚では通叢書の文庫化にびっくりする。『銀座通・道頓堀通』と『蕎麦通・天麩羅通』の2冊で、合本というのか、2冊分を1冊にまとめてある。
カバーのデザインは、当時の通叢書の装幀を踏襲しているあたり、何とも心憎い。表紙には監修の坪内祐三氏の名のみが記され、本来の著者の名が割愛されているのはちょっと淋しいか。
しかし驚いた。驚いて、どこの出版社の文庫本だったのか、肝腎なところを見落とした。

時間も頃合となったので高円寺。ガード下の四文屋へ。
煮込み、あきれす、あすぱら、焼酎3杯。
帰りがけ、西部古書会館のブック&Aに寄道する。
場内には、帳場当番が4人、お客さんも4、5人。
自販機本の一種というのか、昭和風情のエロ雑誌に手を伸ばしたりして、帳場へ持ってゆくと、手持無沙汰の当番氏がご丁寧にも二人がかりで包んでくださるのだが、モノがモノだけに、なかなか居たたまれないような場面であるはずなのだが、もはやこのあたりの神経は図太くなった。

【2023年10月追記】廣済堂文庫版通叢書
和洋会参加店のひとつ「玊睛」は「きゅうせい」と読みます。
数多ある古本屋さんのなかでも、屈指の難読屋号と言えるでしょう。
店舗販売は行なっていませんが、現在も和洋会への参加を続けておられます。
毎回、出品点数はそれほど多くないとはいえ、和本や戦前の古書など時代の古い本が中心で、たのしみな棚のひとつとなっています。
  ◇
『銀座通・道頓堀通』および『蕎麦通・天麩羅通』が収録されていたのは廣済堂文庫。
両冊とも2011年に刊行されました。
元版は四六書院の通叢書つうそうしょ、いずれも昭和5年の刊行です。
日記に述べているとおり、元々はそれぞれ単独の書物でした。
著者は、『銀座通』小野田素夢、『道頓堀通』日比繁治郎、『蕎麦通』村瀬忠太郎、『天麩羅通』野村雄次郎。
廣済堂文庫版の通叢書はこの2冊4書目だけに終わり、以降の続刊はなかったようですが、それにしても初版から80年を経ての文庫化にはおどろきました。
監修者・坪内祐三氏の後ろ盾が絶大であったのだろうことは容易に想像できます。
坪内氏は解説も担当しており、その解説を読むためだけにでも購入の価値はあったはずなのですが、当時の私は、表紙に著者の名前が記されていないとか、些細なところにこだわったまま、結局、入手には至りませんでした。反省材料です。
なお、通叢書の装幀は一目見たら忘れられない菱形模様ですが、それとは別の、簡素な意匠のカバーをまとった本もあります。
四六書院の通叢書につきましては、下記の日記の追記欄をご参照ください。