【2012年4月14日/2023年11月追記】吉祥寺の古書風鈴堂

【2012年4月14日】
雨。昨日から一転して気温が下がる。
高円寺、西部古書会館の杉並書友会。
ガレージ廉価本から鴨居羊子『のら猫トラトラ』(旺文社文庫/昭和56)100円を手にとり、この1週間、神保町でも川越でも購入なしのオケラが続いていたのだが、ようやく古本にありついた。
と、幸先はよかったのだが、室内の棚からは何も見つけ出せずに終わる。

鴨居羊子「のら猫トラトラ」表紙
『のら猫トラトラ』鴨居羊子
(旺文社文庫/昭和56)

ガード下の都丸支店、店内の岩波文庫を揃えた棚にル・コルビュジエ『伽藍が白かったとき』(岩波文庫/2007)があったので、見かけたときに買っておく。500円。
ネルケンで正午の珈琲。

雨はやみそうもないし、この天気ではささま書店の店頭棚も引っこんでしまうし、たまには寄道をせずに早帰りをしようか。まあ、もうちょっと歩いてみよう。
中野ブロードウェイ、4階のまんだらけ。
高額品を飾ったショーケースに『尋常マンガ算術・第一学年用』下巻、発行は東雲堂、1万2600円。
多田北烏が手掛けたのは『尋常小学算術』で、この『マンガ算術』とは違うと思うのだが、それにしてもこの値段はどうだ。将来、『尋常小学算術』は無事に(ほどほどの値で)手に入れることができるのだろうか。
やなせ・たかし『狼少女』(サンリオ/昭和51)525円、購入する。

また別のまんだらけ、貴重漫画を集めた部屋を訪れ、棚の隅から、背表紙ぼろぼろの1冊を引っこ抜いてみる。
現代連続漫画全集第2巻『長崎抜天/麻生豊』アトリエ社。へえ! こんな全集もあったのか。
このくたびれた状態で2650円が付くということは、状態が良好ならばもっと高値が付くのだろう。
ぼろぼろでも何でも、買っておいたほうがよいのかもしれない。もっとぼろぼろならもっと安く見つかるぞ、と私の耳元でささやいたのは誰だったのか、今日は買わない。
結局、いせやで仕上げたくなって吉祥寺。いせや公園店へ行くと行列ができている。
階段を降りて井の頭公園の橋を渡り、橋の向こうの便所で用を足し、また橋を引き返す。
ほとんど花の落ちた桜の木と、雨の池。佳景なり。
少し並んで、公園店。焼酎を呑みながら『夢声戦争日記』少し読む。
帰途に就くことにして、マルイの前で信号を待っていると、向こうの、井の頭線の高架下の辺りを見遣ると〈古書風鈴堂〉の看板が目に入った。
いつのまに? 新しい古本屋が開店したようだ。さっそく訪問する。
〈日本歴史・時代小説〉の看板に偽りなし。書棚のほとんどすべてはそれらの書物でまとまっていた。
普段、私が最も素通りしてしまう分野のひとつである。
たちまち行き場を失うが、何とか頑張って『日本絵画のあそび』榊原悟(岩波新書/1998)350円、購入する。私なりに、開店祝いのつもりなのである。

【2023年11月追記】古書風鈴堂
吉祥寺の街角に、忽然と現われた「古書風鈴堂」。
まったく思いがけない探訪でした。
もちろん、手品のように突如として古本屋が出現するわけはありません。
開店の情報を察知していなかったからそう見えただけであります。
当時の日記はたいへん大雑把な記述で終わっていますが、ビルの2階に店舗がありました。
 …………
「風鈴堂」のブログを拝見しますと、2012年1月28日付の記事に営業開始の案内があります。
正式な開店日の記載はなく詳細は不明ですが、その数日前には開店していたようです。
吉祥寺駅公園口から至近という好立地での幕開けでしたが、同年末には附近一帯の開発事業に巻き込まれて立ち退きを余儀なくされ、開店1周年を間近に控えた12月27日に閉店となりました。
移転先を探すも好適な物件が見つからず、1年後の2013年12月には古本検索サイト「スーパー源氏」でのインターネット販売へと移行します。
同時に、スーパー源氏運営の実店舗「スーパー源氏神保町店」(2013年5月28日開店)にも出品し、二本立てでの営業をつづけますが、同店の2015年6月30日閉店に伴い、店舗を使用しての販売は終了となります。
 …………
以上、風鈴堂ブログ〈日本史・時代小説|古書店|風鈴堂〉より、掻いつまんで変遷を辿ってみました。
同ブログは2015年9月の記事を最後に更新されていませんが、2023年11月18日現在、閲覧可能です。
古書風鈴堂は、その後も引き続きスーパー源氏でのインターネット販売を行なっています。
さて、私事に舞い戻りますと、日本史や時代小説は普段から疎い分野ということで、最初の探訪から以後はすっかり御無沙汰してしまいました。
上述した立ち退きの経緯を知る由もなく、或る日、近くを通り掛かったら、店舗が入っていたビルごと無くなっていました。
忽然と現われた(ように見えた)古書風鈴堂。
そしてまた吉祥寺の街角から、忽然と、消え去った古本屋さんでした。