【2012年4月7日/2023年11月追記】ちいさな古本博覧会からささま書店

【2012年4月7日】
西部古書会館、ちいさな古本博覧会。
ガレージに結構な量の新書判が放出されている。
昭和30年代の書目が中心で、『大人を寝かせるお伽噺』『妻のうわき』『ちんちん電車』など、あまとりあ社の新書も混ざっており色めきたつが、残念、みんな持っている本ばかりだ。
どうやらこれらは股旅堂の出品なので、この新書の鉱脈が室内会場にも延びていることを祈りつつ、扉が開くと、まずは股旅堂の棚に取り掛かる。延びていた。あまとりあ社がずらずらだ。
『おとこ放談』『熟れた真珠』『太平洋の四畳半』『おいろけ随筆』……、『二人っきりの世界』なんかは2冊もある。3年前なら雄叫おたけびをあげていたかもしれないのだが、こちらも残念ながら、今やほとんど購入済みだった。
もごもごと口籠りながら、それでも『女の裏窓』高野三郎(あまとりあ社/昭和31)300円、未見の1冊を発見することができた。
さらに『女優デカメロン』双葉十三郎(鱒書房コバルト新書/昭和30)500円も収穫できたので、これはこれで上々だ。

高野三郎「女の裏窓」表紙
『女の裏窓』高野三郎(あまとりあ社/昭和31)
双葉十三郎「女優デカメロン」表紙
『女優デカメロン』双葉十三郎
(鱒書房=コバルト新書/昭和30)

はらぶち商店がアサヒ写真ブックをまとめて出していて、その中から『窓の歴史』(アサヒ写真ブック/昭和34)200円を取る。もう1冊、『関門海峡』も手には取ったのだが、立読みで済ませてしまった。

アサヒ写真ブック「窓の歴史」表紙
『窓の歴史』朝日新聞社編(アサヒ写真ブック/昭和34)

人だかりの棚は盛林堂書房。野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』(光文社文庫/2005)、価格700円に一瞬ためらいが生じるのは仕様がないとして、けれどもずっと欲しかった1冊であり、それに先程の新書判の余勢に駆られたものか、つんのめるように確保する。
朝山蜻一『真夜中に唄う島』(扶桑社文庫/2001)も今まで案外と出くわす機会のなかった1冊。ささま書店や佐藤書房の棚を注目しても、なかなか巡り合わず、現物とは初めて対面した。500円。

このあたりで股旅堂に舞い戻り、さっきは見落としていた2冊、『艶福上人と一夜妻』志智双六(あまとりあ社/昭和30)500円、『はなごよみ』武野藤介(あまとりあ社/昭和30)200円、追加する。
なお今日見かけたあまとりあ社の新書判は、元のセロハンがいずれもほぼ完全に保存されており、状態はすこぶる良好だった。
ひととおりの棚を見終わったあとは、薬袋やチラシなど紙片の詰まった箱をごそごそやって、会計直前、最後にしつこく股旅堂の棚を眺める。

志智双六「艶福上人と一夜妻」表紙
『艶福上人と一夜妻』志智双六
(あまとりあ社/昭和30)

高円寺ガード下、都丸支店の店頭棚を巡回し、ネルケンで珈琲。
それから荻窪、ささま書店。
店内文庫棚から何となくブローティガンを2冊。
『ビッグ・サーの南軍将軍』(河出文庫/2005)420円と、『愛のゆくえ』(新潮文庫/平成元/8刷)210円。
『愛のゆくえ』はハヤカワ文庫の新装版も並んでいたが、新潮文庫版は表紙が靉嘔あいおうだったのでそちらを選ぶ。
中公文庫『夢声戦争日記』全7巻揃が2100円。1ヶ月前、ここで買った際の売価より500円ほど安い。こうなると判っていたら……いや、もう第6巻の途中まで読み進んでいるのだから、これはこれ、愚痴をこぼすには及びませぬ。
その隣りには『夢声自伝』徳川夢声(講談社文庫/昭和53)、上中下3冊揃が1050円。1ヶ月待てば500円で見つかるか?
それはそれ、これはこれ。購入する。

ブローティガン「愛のゆくえ」表紙
『愛のゆくえ』ブローティガン/青木日出夫訳
(新潮文庫/平成元/8刷)

【2023年11月追記】
西部古書会館(高円寺)の「ちいさな古本博覧会」は2012年10月の開催を最後に終了しました。
この日の古本博覧会で本を購入したお店について、以下簡単に記しておきます。
  ◇
股旅またたび堂」は性風俗資料を専門に扱う異色のお店です。
店舗販売は行なっていませんが、毎年、古書目録を発行しています。
2023年6月発行の最新号(第27号)は、特集「明治大正昭和売春史考」。
300余ページ、5000点近い掲載があり、圧巻です。
目録自体が貴重な資料と言えます。
2022年までは南部古書会館の「本の散歩展」に参加されていましたが、2023年は不参加でした。
  ◇
「盛林堂書房」はミステリーの品揃えが圧倒的。
初日朝一番の人気において、東(東京古書会館)の両雄があきつ書店と扶桑書房だとするならば、対する西(西部古書会館)の雄は盛林堂書房だったのではないかと思います。
毎回、たいへんな混雑で、ぼんやりしている客(=私)はなかなか棚に手が届きません。
山脈のように立ちはだかる豪傑たちの背中越しに、眼を泳がせるだけが精一杯でした。
現在は、2022年に西部古書会館で始まった「ヴィンテージ・ブック・ラボ」に参加されています。
また「神田古本まつり」にも出店しており、即売展と同様、人気を集めているようです。
独自の叢書、盛林堂ミステリアス文庫の出版も手がけています。ミステリーファンなら知らない人はいない古本屋さんでしょう。
西荻窪に店舗があります。
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「はらぶち商店」については詳細不明です。
当時から店舗を持たない古本屋さんでした。
現在も古書組合に加盟されているようですが、即売展や古本まつりで名前を見かけた記憶はなく、最近の営業状況については判然としません。
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【オマケ】古本博覧会の会場で配布していた栞です。

「第9回ちいさな古本博覧会」栞
《ちいさな古本博覧会》第9回/栞