【2012年5月22日/2023年12月追記】中野、見知らぬオッチャンが200円貸してくれませんかと言う

【2012年5月22日】
松屋浅草古本まつり、初日。
スカイツリーは本日から開業だが生憎の雨、吾妻橋の交差点から見遣ると、すっかりもやに蔽われている。もし展望台で古本市が催されるならば、あそこに昇ることもあるだろうな。
松屋では『アマチュアたち』ドナルド・バーセルミ(サンリオSF文庫/昭和57)315円、1冊のみ購入。
アーケードの喫茶クラウンで一服。
会場では気づかなかったが『アマチュアたち』のカバー画は藪内正幸だった。

神保町はこの雨降りで店頭散歩はできないし、午後は中野ブロードウェイへ行くことにする。
4階のまんだらけ、先日ショーウィンドウで見かけた宮崎博史『小さいお嫁さん』(少年少女ユーモア文庫)3150円を、今日は買ってしまおうかとも思ったのだが、今日まだ売れていないということは明日も明後日も売れ残るのではないかと思い、見送る。
『東京「風景印」散歩365日』古沢保(同文館出版/2009)525円、購入する。
2階の古書うつつでは『貸本小説』末永昭二(アスペクト/2001/2刷)800円。
歌集の棚に、中川道弘『新金茎和歌集』が並んでいてハッとするが(1500円)、正篇の前にいきなり続篇を買ってよいのかどうか、いや、金茎和歌集は全5冊なのだから、順序にこだわらず見つけたところから買っておくべきではないのか、など、もごもごと質疑と応答の末、今日は見送る。

中野駅の券売機で切符を買っていると、見知らぬオッチャンが「池袋まで帰りたいんですけど200円貸してくれませんか」と言う。
このところ電車の中では松崎天民『銀座』を読んでいるのだが、天民さんが銀座の路上で、品のよい老婆に横須賀までの汽車賃をたかられた、というエピソードを読んだばかりだ。
何の係わりも無いように見えて、そのとき読んでいる本の内容と自分の身のまわりの現実とが奇妙に同調してしまうことは、これは時々体験することである。
よりによってたかり・・・の部分で同調しなくてもよいではないかと思うのだが、これも勉強なんだろう。
池袋先生の息は酒臭いのだし、たぶん池袋には帰らずに、近くの酒屋でカップ酒を買ってしまうのかもしれない。
さすが天民さんは、50銭銀貨を渡しながら「お婆さん、こんな商売はやめることだよ」と言ってやったそうだが、世間知らずの青二才は意味のない薄笑いなど浮かべながら、オッチャンに200円を貸してあげるのだった。

高円寺、ガード下四文屋。
煮込みとアスパラガスと焼酎3杯で、このお店はお酒もつまみも全品200円均一(席料100円)だから1100円のはずが、お会計を願うと900円ですと言う。
何かひとつ付け忘れている。まさにこれで、さっきの200円の損失が補填されてしまうわけだが、そうは言っても池袋先生とは何のゆかりもない200円であるはずなので、素直に申告して1100円を払う。

【2023年12月追記】
東京スカイツリーの展望台で古本市が開催されたことはありませんので、私は昇ったことがありません。