【2012年5月26日】
高円寺。西部古書会館、中央線古書展。
ガレージの廉価本からは発見ナシ。
室内に入って古群堂の棚、宮崎博史『青春日記』(国民教育普及会/昭和23)1500円。
れんが堂書店の棚には豆本を集めた箱があり、期待をこめて覗きこんだが、目録で気になっていた珈琲豆本『苦味礼賛』標交紀は見当たらなかった。
その代わり同じく珈琲豆本の『珈琲閑話』伊藤博(いなほ書房=珈琲豆本/昭和59)が埋もれていたので拾い上げる。500円。
2時間ほどうろうろして購入2冊。
正午のネルケンにて、今日のささやかな収穫を見分する。
『青春日記』は日本新作ユーモア小説選集の第1回配本。
以下、毎月1冊ずつ、全10巻が予告されており、獅子文六、佐々木邦、徳川夢声、中野実、玉川一郎、サトウ・ハチロー、乾信一郎、鹿島孝二、辰野九紫、とユーモア小説の屋台骨といったような布陣である。予定通りに全巻が刊行されたのかどうかは不明。
国民教育普及会という発行所名が堅苦しいが、そういえば先日の反町展で買った漫画漫文集『世相百態』と同じ版元ではなかったか(家に戻って確認したところ『世相百態』は国民教育研究会で、所在地も発行者名も異なっていた)。
珈琲豆本のほうは、寺下辰夫『珈琲談議』や、武富達也『「茶房きゃんどる」の50年』などが既刊であるらしい。
今日は御目に掛かれなかった『苦味礼賛』ともども、もしどこかで見つけたら、そのあとに飲む珈琲の味はまた格別なのだろうな。
荻窪、ささま書店に寄って『男女の愛技を教えます』松平貴子(現代ジュゲム・プロ/昭和55)1050円。著者の松平氏は川崎市南町トルコD在籍なのだそうだが、帯によると「本邦初! 現役トルコ嬢が書いた性愛経典」なのだそうである。昭和のシャボンの残り香は……。
RMライブラリー『九十九里鉄道』白土貞夫(ネコ・パブリッシング/2002)630円、一緒に買う。
【2024年1月追記】日本新作ユーモア小説選集/いなほ書房
国会図書館の蔵書を見たかぎりですが「日本新作ユーモア小説選集」は第1回配本『青春日記』のみが世に出たようです。
国民教育普及会は戦前に『歴代御陵帖』『宮城内御写真』『日本国体の話』『ヒットラーと独逸民族国家』など。戦後になると『真人生の探究』『学校教育と宗教』『育児講話安産・誕生の巻』などを刊行しています。
国是に沿った出版活動だったようですが、全体的に硬めの書目で統一されています。
それらのなかにあって、誰が、なぜ、「ユーモア小説をやろう」と言い出したのか、経緯が気になります。
やってはみたものの、やはり編集部の雰囲気に受け容れらず頓挫したということなのか。
実際はどうだったのでしょう。
第2回配本以降に控えていた執筆陣の新作ユーモアが立ち消えになってしまったのは惜しいところです。
◇
いなほ書房の「珈琲豆本」も全貌がつかめません。
第13巻『ロンドンのコーヒー・ハウス』小林章夫(1992)の存在は確認できたのですが、そうすると少なくとも13冊が刊行されていたようなのですけれど、書目の詳細は不明です。
神保町の老舗を取りあげた『「茶房きゃんどる」の50年』は、是非どこかで発見したいと念願しますが、未だに見かけたことがありません。
いなほ書房は現存する出版社です。
珈琲店経営情報誌『珈琲と文化』を刊行しています。
年4冊の季刊誌で、最新2023年冬号が通巻123号となります。
書籍のほうは、ここ数年の新刊の出版は見られないようですが、『アガサ・クリスティーとコーヒー』井谷善意(2018)、『カフェ・ド・ランブル珈琲辛口談義』関口一郎(2009)、『日本最初の珈琲店』星田宏司(2008)などは現在も新刊で扱っているようです。
コーヒー好きの方なら、いちどは目にしたことがある出版社だと思います。