【2012年7月20日】
東京古書会館、趣味展。
扶桑書房、放出品の棚に古川緑波『苦笑風呂』登場。昨年末の京王古書市にて5000円を奮発した本だが、今日はいったい幾らなのか、この棚に並んでいるということは、あっと驚く特価なのだろう。
値段を確かめてしまうと失神するおそれがあるので流し目で見送る。次に見たときにはもう無くなっていた。
伊東忠太『琉球』が眼に入り「おや、忠太博士にはそんな著作もあったのか」と手を伸ばしかけた瞬間、すでに隣りに立つ御仁の掌中に納まっていた。その手捌きに感嘆する。暢気に「おや」などとつぶやいている暇はなかったのだ。
そうやって、もう持っている本や、誰かの手に渡った本に気をとられるばかりで、今日の古本が留守になるという素人の右往左往。
ようやく『魚のいろいろ』田中茂穂(春陽堂少年少女文庫/昭和8)300円を、(藁をつかむように)つかむ。扶桑書房からの収穫はこの1冊だけ。
銀装堂書店の棚で建築写真文庫『和風の窓』(彰国社/昭和29)300円。
月の輪書林では、
『男性のためのヨーロッパ案内』ジャック・マッチャ(荒地出版社/昭和41)200円。
『放蕩術入門』岡部寛之(波書房/昭和43)500円。
『聖男聖女』おなじく岡部寛之(宮川書房/昭和42)500円。
『セックスに関する一五〇話』中野直也(あまとりあ社/昭和42)500円。
『セックス作戦要務令』千々宮信介(あまとりあ社/昭和39)500円。
と、新書判を拾い集める。
工学博士(=伊東忠太)は逃げて行ったが、経済博士かつ粋人博士(=岡部寛之)は手に入った。
竹陽書房の棚にて『場所別・性の自由』藤波浩二(駿河台書房/昭和44)300円。これは10日前の新橋古本市で買った『職業別・女性攻略法』と同じ著者。職業別の次は場所別だ。
ぶっくす丈では、背表紙の帯の〈ユーモア作家のエッセイ〉という文句に惹かれて手にとると志智双六の随筆集だった。『寮歌と目ざし』(新小説社/昭和51)500円。志智双六のユーモア小説については知らないけれど、あまとりあ社の新書判の執筆陣の一人でもある。
訪書堂書店の、岩波文庫を取り揃えた中から、なんとなく『幼なごころ』ヴァレリー・ラルボー(岩波文庫/2005)200円を選ぶ。
外は小雨。
九段下まで歩いて東西線で中野。ブロードウェイのまんだらけをぶらぶらして、少年少女ユーモア文庫『小さいお嫁さん』はまだ売れ残っていて、何も買わずに高円寺まで歩き、ガード下四文屋で煮込みと空豆と焼酎梅割り。
【2024年4月追記】消息・銀装堂書店など
東京古書会館の「趣味展」は年6回、奇数月に開かれます。
2024年3月の開催では11店舗の参加がありました。
日記に記したうちの「銀装堂書店」「竹陽書房」「ぶっくす丈」3店は、現在は参加していません。
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「銀装堂書店」は府中市の天神町で営業しています。
東武東上線大山駅の近くに店舗を構えていた時代もありましたが、その後府中へ移転。
現在、店内での販売は休止中とのことですが、店頭で100円均一の無人販売を行なっています。
文庫本や雑誌、絵本のほか、音楽CDの棚もあります。
単行本の平台には古い年代の本が混ざることもあるようで、とにかく100円均一ですから思わぬ掘出し物にぶつかるかも?
代金は棚に備え付けた料金箱に投入します。
府中駅からは1キロ以上の距離があり、ついでに立ち寄るという立地ではないのですが、府中駅と武蔵小金井駅を結ぶ京王バスの学園通郵便局停留所の間近に店舗があります。
昨年(2023年)の秋に訪れた際には、店内の棚にもびっしりと書物が並び、販売休止中というのは何とも残念でした。ガラス戸越しに覗きこんで、すぐそこに見えるけれども触れない。届きそうで届かない古本は、じつに悩ましい魅惑の影なのであります。
(どうやら府中での開店当初から基本的には店頭無人販売のみ行なっているようです)
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荻窪の「竹陽書房」は2022年9月末に閉店しました。
閉店直前の9月16・17日には、趣味展にも最後の参加をしています。
中央線の窓から見えた老舗の古本屋さん、その店舗跡は、今は選挙事務所へと変貌しています。
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日記当時の「ぶっくす丈」は店舗を持たない古本屋さんでした(その以前は店舗営業あり)。
多くの即売展に参加して、いつも廉価放出での活躍ぶりでしたが、2015年1月にすべての即売展を退会。閉店となりました。