【2012年8月3日/2024年5月追記】神保町から渋谷へ

【2012年8月3日】
東京古書会館、がらくた市。
地下に降りて開場を待つあいだに、帳場で貰った今回の目録をめくる。
けやき書店のページに、吉岡鳥平『漫画スケッチの描き方』2500円。ふむ。
今日は浅見書店かぶっくす丈の棚を最初に見ようと計画していたのだが針路を変えて、まずはけやき書店の棚をあたってみる。
目録注文は入らなかったようで、『漫画スケッチの描き方』(弘文社書店/大正13)、入手となる。
浅見書店の棚では『カラー版・パイプ』小室寛(池田書店/昭和51)300円。先週の中央線展で買った『ピストル』と同じ版元で、そう云えば『ピストル』も浅見書店の出品だった。ピストルは100円で、パイプは300円。
もう1冊浅見書店から、『坊ちゃん気質』生田春雄(中村書店/昭和5)300円。函欠の裸本で、作者の生田春雄とはいったい誰なのか。だが、昭和5年の諧謔小説が300円なのだから黙って買うべきなのだろう。
古書ことばにて、『東京の猫』及川甚喜(トモ・ブック社/昭和23)500円。及川甚喜氏も存じ上げませぬが、表紙の長閑な風景画が鈴木信太郎なので買ってみる。
ぶっくす丈では明朗傑作集『人生停留所』林二九太(新元社/昭和18/再版)が400円の会心。南部古書会館で2000円だったのを見かけて以来、久しぶりの対面となった。
会計を済ましたところで、次回の目録送付を申し込む。

吉岡鳥平「漫画スケッチの描き方」表紙
『漫画スケッチの描き方』吉岡鳥平
(弘文社書店/大正13)
及川甚喜「東京の猫」表紙
『東京の猫』及川甚喜
(トモ・ブック社/昭和23)

神保町古書店街。
春先に閉店した金子書店――、社会科学や医療が専門だったが、このお店ではとうとう1冊も買うことなく終わってしまった。
その場所に新しい古本屋が開業した。入口の大きな硝子窓から覗くと、こざっぱりと改装された店内には大判書籍がゆったりと陳列されていた。雑本の類いは扱っていない様子なのでそのまま通り過ぎる。屋号不明。

ミロンガで一休み。
がらくた市の収穫品をぱらぱらやっていると、隣りのテーブルにやって来た御仁はウイスキーの水割りとチーズを注文された。水滴をまとって涼しげなグラスに、金色の液体の薄明かり。珈琲ではなく、たまにはここで白昼の洋酒を嗜むのも良さそうだなと、感化を受ける。
神田古書センターの店頭で『茨城県鉄道発達史』上下、中川浩一(筑波書林=ふるさと文庫/昭和55)2冊420円と、『火の車随筆』草野心平(鱒書房/昭和30)210円。

半蔵門線で渋谷へ移動。宇田川町のアップリンク古書祭り。
映画、ジャズ、美術、ファッション、絵本が中心で、歴史、戦記、時代小説などは見当たらない。それほど広い部屋ではないから何でもかんでも運び込むというわけにはゆかないにせよ、この界隈を闊歩する、尖端とか高踏とか、そういう諸氏に狙いを定めた品揃えのようだ。
どのようなつながりなのかは知る由もないが、主催は神奈川県古書組合だった。
『女の子が本当にしてほしいセックス』など、先月の神奈川古書会館の反町展から到来してきた模様なのだ。買物なしに終わる。

「アップリンク古書祭り」チラシ
《アップリンク古書祭り》チラシ

つづいてセンター街のブックオフを一巡し、こちらも買物なし。
井の頭線のガードをくぐって渋谷古書センター。
桃色書架を見分すると『マダムX』2012年4月の表紙に最終号の表示。ついに力尽きたか。
買物なしの気配が濃厚だったが、ふと帳場を見ると来週から始まる渋谷大古本市の目録が積んである。
目録は是非とも欲しいし、無料配布なんだから一声掛けて貰ってしまえば問題ないはずなんだけれど、目録だけ手にしてさっさと店を出るというのは何だか気が引ける。
文庫本の棚をじっと睨んで『ねじとねじ回し』ヴィトルト・リプチンスキ(ハヤカワ文庫/2010)を引き抜いて、200円、会計と共に晴れて目録を入手する。

「渋谷大古本市」第21回目録表紙
『渋谷大古本市』第21回/目録(東急東横店)

【2024年5月追記】この日の古書市や古本屋
東京古書会館の「我楽多(がらくた)市」は2022年7月で終了となりました。
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古書店街の金子書店の跡地に出来たお店は「一心堂書店」です。
新規開店というわけではなく、隣りで営業していた一心堂書店が跡地を引き受けての店舗拡張でした。
同じような事例は他にもあり、2022年に閉店した古賀書店の店舗跡を受け継いで、2023年5月に隣りの「矢口書店」が第二店舗を開業しました。
老舗の古本屋の閉店は寂しいものですが、その場所に新しい古本屋が誕生すれば喜びはひとしおです。古書店街の心意気と言えるでしょう。
一心堂書店は美術専門の古書店です。特に刀剣書の品揃えには自信があるとのことです。店頭のワゴンには古典文学大系が300円均一で並んでいたりします。
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「アップリンク古書祭り」は宇田川町のミニシアター、アップリンク渋谷にて3日間の日程で開催されました。
その後、同館内に併設されたマーケットには「古書アップリンク」が開店しました。古書祭りと同様に、数軒の古本屋さんが共同で出品する形態でした。
アップリンク渋谷は2021年5月に閉館。古書アップリンクが最後の日まで営業していたのかどうか、詳細は把握しておりません。
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「ブックオフ渋谷センター街店」は2018年7月に閉店となりました。
1階から3階までの売場をもつ大型店舗でした。
今から振り返れば、あのセンター街にブックオフがあったとは夢の出来事のようですが、日頃その近辺にはまったく縁のない人間も、そこに古本があるとなれば頑張って潜入したものです。
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日記当時の「渋谷古書センター」は、1階で「古書サンエー」、2階で「Flying Books(フライング・ブックス)」が営業していました。
1階の古書サンエーは2022年6月に閉店しています。
店舗は閉店しましたが、その後も即売展「ぐろりや会」の参加、及び通信販売は続いています。
2階のフライング・ブックスは現在も営業しています。