【2012年7月28日/2024年4月追記】炎熱のガレージから『ピストル』

【2012年7月28日】
炎天の中央線古書展。ガレージ釜茹で。
まず『ピストル』小橋良夫(池田書店/昭和51/18版)をつかむ。なぜピストルなのかは自分でも判らない、太陽のせいなのかもしれない。
『ツァイス・レンズ』小林孝久(朝日ソノラマ=現代カメラ新書/昭和63/5版)を挟んでこんどは『拳銃図鑑』木村譲二(平凡社カラー新書/昭和55)だ。
『女性にすすめる温泉』竹村節子(カラーブックス/昭和60)加えて、以上4冊がガレージ。全部100円。

屋内では『SF宇宙生物学講座』草下英明(ハヤカワ・ライブラリ/昭和41)300円、『マーフィ』サミュエル・ベケット(ハヤカワ文庫/昭和47)300円、『色の道入門』清水正二郎/宮尾しげを/富田英三(第二書房/昭和36)300円、『女体の誘惑』丸尾長顕(土曜出版社/昭和43)150円と進む。このところ、浅見書店(栃木の小山から参加)の放出する廉価本がなかなか愉しい。
竹陽書房の棚では『透け透けカメラ』高齋正(講談社/昭和55)、今日の展開からすると価格1000円は高額品だが「日本初のカメラSF傑作集」と謳ってあるところに惹かれた。最後に『カラー版・本ができるまで』岩波書店編集部編(岩波ジュニア新書/2003)200円、精興社の印刷工場を紹介する章を設けているあたりは心憎い。

徒歩で中野ブロードウェイ。
まんだらけで〈エロマンガのエロマンガ〉を物色してみる。
『エロまんが編集者Aki』友美イチロウ(竹書房/2012)315円、『えろまんがの妖精』田倉まひろ(ヒット出版社/2011)735円、『エロ漫画女子。』服部ミツカ(一水社/2009)472円、見つかる。
書店や図書館が舞台のエロマンガがあるのかどうか、あってもよさそうだがまだ御目に掛からない。
吉祥寺に流れ着いて、いせや。
こうして冷たいビールにありつけば、今朝方の古書会館の炎熱ガレージも、もはや美しい夢と振り返られる。これもまた夢の延長に過ぎないのかもしれず、ふと目覚めれば私の部屋には1冊の書物とてなく、ああみんな夢だったのかと気がついて、きょとんと欠伸あくびなどして、さてそしてどうするか、起き上がってそれから、古本屋へと出掛けてゆくだろう。

【2024年4月追記】真夏のガレージ会場
西部古書会館(高円寺)の即売展では、室内だけでなく、道路に面したガレージにも古本が並びます。
均一価格ではありませんが、ほとんどは300円以下の廉価本です。
主催する会によって出品量に差はありますが、中央線古書展、杉並書友会、好書会などは、一面にびっしり、ということが多いようです。
初日の朝一番。10時開始の室内会場より一足早く、9時半過ぎにガレージが開門すると、待ち構えていた30人ばかりがどっとなだれ込みます。
夏場――。すでに日は高く、太陽はじりじりと照りつけますし、ガレージの中は容赦なく蒸されています。
そこへもってきて人混みの熱気が加わりますから、たちまち煮えたぎります。
拭っても拭っても、拭うそばから汗は噴き出す。シャツの背中が太平洋になっている人もいます。
書物にとって水気は大敵ですが、顎の先からぽたりと、本の上に大粒の汗が垂れたとしても、これはもう、どうしようもない運命なのかもしれません。
20分ほどが過ぎ、ひととおりガレージの本を見終わったあとは、室内の戸が開くのを待ちます。
お客さんはいつのまにか5、60人に増えています。
狭いガレージの狭い通路にぎっしりと、立錐の余地なく前方に詰め合って、半ば放心しながらじっと待ちます。
時計を見ると9時55分。ここから10時までの5分間はたいへん長いです。
人垣を抜け出して、会館の向かいの駐車場に避難する人もいます。賢明です。
過去、幸いに暑熱にやられてガレージで倒れたという人を見かけたことはありません。
古本で頭を一杯にすれば火もまた涼し、なのかどうか。
時計、9時56分。
遠くでミンミン蟬が鳴いている。
そんな苦しい思いをしてまでの古本なのか? 意見が分かれるところでしょう。
私自身、疑問に思わぬこともありません。
意識はしっかりしているつもりでも、どこか朦朧としているのかもしれず、どうしてこの本を買ったのだろうと、のちに振り返ると訝しくなるような本を買ってしまうこともあります。暑さのせいにしてはいけませんが。
しかし室内の戸が開いて、新鮮な今日の古本が目の前に広がると、今しがたの苦行はすべて忘れます。
南部古書会館(五反田)も、西部会館同様、本会場とは別にガレージ会場があります。
また神奈川古書会館(反町)の即売展は、ガレージのみを使用しての開催です。夏の神奈川会館では大きな扇風機がまわっていたように覚えています。熱風を掻きまわすだけとはいえ、無風よりはいくらか増しです。
真夏のガレージ会場では、どうぞくれぐれも体調にご留意ください。

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