【2012年9月21日】
9時、南部古書会館。五反田遊古会。
路上の平台ではまだ本を並べている最中だが、並べるそばから書痴連の顔が近づき、にゅっと手が伸びる。私も覗きこむ。
準備に追われる店主にしてみたら、これはだいぶんうっとうしいのだろうなあと思われるのだが、眼の前に古本がある以上はじっとしてもいられずに……。
その平台から『人間と動物達』竹村猛児(大元社/昭和19)100円と、『馬込文士村ガイドブック』改訂版(大田区立郷土博物館/1996)200円。
定刻9時半、改めて1階開場となり、階段の端に積み上げた本の中から『被虐の系図』光谷東穂(耽美館=SM耽美文学/昭和44)200円。
10時、2階も開場。黒沢書店の棚にて『琉球風土記』伊波南哲(泰光堂/昭和19)300円。沖縄の詩人伊波南哲には『南島珍談あな・おかし』という愉快な題名の新書判もありそれとなく探しているのだが、まだ御目にかからない。
もう1冊、黒沢書店から『世界各国食べある記』大日本料理研究会編(料理の友社/昭和14)200円。雑誌『料理の友』昭和14年10月号の附録冊子で、表紙には大日本料理研究会編となっているが、本文はすべて市井義雄が執筆している。市井氏は日本郵船の調理部に勤続すること12年余とのこと。
古書赤いドリルの棚の文庫本を見分していると、内藤ルネ『幻想西洋人形館』(サンリオ出版/昭和50/3刷)が紛れ込んでいた。初版ではなく3刷だが200円。うひゃあ。
神保町へ移動して地下鉄の駅を出ると俄か雨。
日照りの夏がようやく終わり、また金曜名物(?)の雨降りだ。
岩波ブックセンターで『日本古書通信』を立読みしながら雨宿り(買いなさいよ)。
すぐに小降りになったので古書会館へ。
紙魚之会。
佐藤藝古堂に切符の箱が置いてある。硬券の入場券が大量に入っていて1枚200円。御飯も食べずに切符ばかりを買い集めては小遣いを使い果たした鉄道少年よ――遠い昔の空腹旅行を思い出さないでもないのだが、まあしかし、切符か古本か、やっていることは昔も今も同んなじだ。
とにかく、何となく興に乗って一枚一枚眺めてみる。
高円寺駅の切符が出て来たり、1月1日の日ノ出駅にはお正月らしく〈寿〉の赤い印が捺してあったり、日付は3月だけれど目出駅には鯛のスタンプだ。なるほどメデタイか。日ノ出や目出はいったいどこの駅なのだろう。折角だからお土産に買って帰る。
みわ書房より、水曜荘主人酒井徳男の豆本『古書道楽』(北海道豆本の会=えぞ豆本/昭和37)520円。
きさらぎ文庫で『加寿天羅甚左』清水崑(巌松堂/昭和36)500円。
御茶ノ水から中央線で新宿。サブナードの古本浪漫洲は今回も買物ナシ。この会場のすぐ隣りには昼からやっている居酒屋があっていつも気になる。
雨は上がり、高円寺に着くと薄日が差しこむ。季節の変わり目で空も忙しそうだ。都丸支店の店頭棚から『魔女の丘』ウェルウィン・W・カーツ(福武文庫/1990)100円。
ガード下四文屋の読書席に落ち着いて『古書道楽』読む。ちょっぴり辛口の冴えた文章に酔う。50ページ足らずの豆本は、お酒の供に恰度よい。焼酎3杯飲み終わる頃に、恰度読み終わる。
【2024年8月追記】日ノ出駅と目出駅
南部古書会館の「五反田遊古会」は、奇数月の隔月開催(年6回)を続けてきましたが、2024年5月以降は3・5・9・11月の年4回に変更となりました。
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東京古書会館の「紙魚之会」は現在、3月と8月に開催されます。
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日ノ出駅は北海道の池田と北見を結ぶ国鉄池北線にあった駅です。
池北線は国鉄分割民営化の2年後(1989年)に、北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線へ転換しますが、2006年4月に廃線となりました。
京浜急行には日ノ出町という駅もあります。
目出駅は山口県の小野田線にあります。
国鉄からJR西日本に変わったあとも小野田線の駅として現存しています。
国鉄時代の1983年(昭和58)3月8日に無人駅となったそうですが、紙魚之会で買い求めた入場券の日付を見ると昭和58年3月7日ですから、その前日であることが判ります
駅員さんがいなくなる日にメデタイとは少々皮肉のようですが、最後の日の切符売場の窓口には別れを惜しむ人たちが列をなしたのかもしれません。