【2013年1月5日/2025年10月追記】杉並書友会で年明け

【2013年1月5日】
今年の即売展の幕開けは、西部古書会館の杉並書友会
初売りとはいえ並んでいるのは古い本だけなのだから、きらびやかに飾り立てることもなく、いつものように無雑作で、そこに集まる人々も、内心の感慨はさておき表情や出で立ちはいつものように十年一日――いや百年一日?――百年前の本がごろごろ転がっている場所なのだから、それはそうだろう。
ガレージで『尋常小学算術・第三学年児童用』下巻/文部省(日本書籍/昭和13)200円と、絵柄に惹かれて『ものの中がみえたなら』マリー・ノイラート(日本評論社=科学の絵本/昭和25)150円。
室内に入っての3冊はすべて浅見書店の棚から。医師の書いた随筆新書判『前戯と後戯』三木秋彦(日本文芸社/昭和38/再版)、『原色蝶類図』山川黙(三省堂/昭和4/7版)、理学博士の随筆『科学尖兵』竹内時男(大地社/昭和15/10版)、いずれも300円。何だか今日の買物は科学的(?)だ。
竹内時男博士は珍書『吾輩は電気である』の共著者である。

ネルケンで珈琲を飲んだあとは荻窪。
岩森書店の店頭均一に春陽文庫の三橋一夫が登場してびっくり。けれども『げんこつ青春記』(春陽文庫/昭和47)もう持っているんだなあ。2000円で買っている。
過去は過去で引きずらないとして、これが『無敵ぼっちゃん』だったら大吉なんだがなあ……。いや、小吉でも末吉でもよいではないか、新春からこれを遣り過ごすようでは(古本の)福の神も裸足で逃げて行ってしまうだろう。100円。
『一軒宿の温泉』藤嶽彰英(カラーブックス/昭和59)100円と合わせて購入する。
ささま書店の店頭棚から『ローズマリーの赤ちゃん』アイラ・レヴィン(ハヤカワ文庫/昭和52/8刷)105円、店内で『羽後交通雄勝線』若林宣(ネコ・パブリッシング=RM LIBRARY/2003)630円。
鳥もと2号店で年賀の独酌としゃれこんだりして、古本片手の熱燗に陶然となるなどして、そのまま立川まで行ってフロム中武恒例古書市。『不死の人』ホルヘ・ルイス・ボルヘス(白水Uブックス/2010/7刷)420円。

竹内時男「科学尖兵」表紙
『科学尖兵』竹内時男(大地社/昭和15/10版)

【2025年10月追記】年初の即売展
日記にも記しましたとおり、古書即売展ですから、初売りの会場に並ぶのはすべて古い本。
何が目出度いと特筆するような書棚ではありません。
昨年の売れ残りがそのまま並んでいるのじゃないかな、とか、うっかりつぶやきそうにもなりますが、新春からあまり些事にこだわっていては運気が下がるというものでしょう。
西部古書会館(高円寺)の即売展は年間を通してほぼ毎週、土日を中心に開催されます。
年末年始を見ると、たいていは中1週の間隔があくのですが、カレンダーの並びによっては休みなしで、12月最終週の翌週が早くも年初の開催ということがあります。
今年(2025年)がそうでした。
2024年は12月29日の好書会が1年の締めくくり。
年が明けて2025年1月4日には杉並書友会が始まっています。
(なお、東京古書会館の2025年は1週遅れて1月10日の愛書会が年初の開催でした)
こうなると、普段の周期とまったく変わりませんが、それでもやっぱり大晦日やお正月をあいだにはさんだとなると、気分は変わります。
たしかに、このあいだ見かけたばかりの本でさえ、淑気のなかで姿勢を正しているようなのです。
帳場からは店主さんとご常連客の新年を寿ぐご挨拶が聞こえてきたりして、ああ、今年も始まったなあ。じわじわと喜びが湧きあがってもくるのです。
そうしてまた、希望も新たに一歩を踏み出して、気がつくといつのまにか年内最後の即売展が来週に迫っているという古本生活です。