【2012年12月16日】
10時半、東京古書会館。入場待ちの先客は4人。
11時、開場して新宿展。
丸三文庫の棚より『淫火』松井籟子(譚奇会/昭和46)1000円。どうなんだろう、通りすがりに手を出すにしては少々値が張る。取敢えず手許に持っておいて他にいろいろ見つかったら返却することにする。
『ダッチマン・奴隷』リロイ・ジョーンズ。この晶文社の戯曲集、なぜだか最近よく目につく。いちど網膜に刷り込まれると右からも左からもダッチマンの影がちらつくのである。今日もまた、古書かんたんむの棚に鬼火のように灯っていた。300円なので買ってしまう。
小さな籠の中に日本古書通信社のこつう豆本が30冊ほど入っているのは古書現世。この籠には見覚えがあって、このあいだまではたしか1冊1500円だったが、今日は700円に値下げされていた。並製のこつう豆本は300円で見つけるところに快がきざすのだが、見分すると坂本一敏『蔵書票』(昭和54)や小梛精以知『続・人脈覚え書』(平成元)と目が合ってしまった。引き取る。
その他にはめぼしい品を見つけられなかったので『淫火』も購入する。
古書街には寄らず御茶ノ水。秋葉原で乗り換えて上野駅。
7番線、まず売店で缶ビールを仕入れたりして、12時50分発の東北線はがらがらで、向こうの座席でスポーツ紙をひろげるお客さん、さっそくうたた寝するお客さん、ビールを飲む私。快適な空間なり。
出発した電車は広い構内をゆったりと渡り、その揺れにぼんやり身を預ける。空、まっさお。
荒川を越え、ビールを飲み終わる頃に浦和着。
浦和宿古本いち、9月に訪れたときは台風の影響で延期になっていたのだが、今日は穏やかに開催していた。
遊歩道の古本屋台に太陽ぽかぽかの、日向ぼこ。
百円均一から薄い岩波文庫を2冊、『村のロメオとユリア』ケラー(2001/33刷)と『春香伝』(2000/8刷)。
しんり書房の棚から『激ウマカップ麺』正しくは『日本一インスタントラーメンを食べる女が選ぶ激ウマカップ麺』麻布台綾子(新紀元社/2010)420円。どうしてもここで買わなければいけない本ではないのかもしれないのだが、それを言い出すと、それはすべての古本がそうなのだ。日本一長い題名の本は何だろう。
古本市の次は中山道を少し歩いて金木書店へ。
創土社のシュトローブル短篇集が目にとまったのだが、鄭重にビニールにくるんで棚に挿してあるところからして脈がない。引き抜いてみるとやっぱりの5250円で、まあ仕方ない。
何も買わず、街道沿いの酒井甚四郎商店で塩昆布を買う。100グラム367円。
駅に近づいて、商店街の武蔵野書店にて『滅びの島』レジス・メサック(牧神社/昭和50)1000円。
メサック全集の第Ⅰ巻ということで、全3巻と予告されているのだがⅡ巻Ⅲ巻は刊行されたのかどうか知らないし、そもそも全く知らない作家なのである。あわてて買わなくとも、きちんと調べてから買えばよいのではないかと思い、調べてからいざ買おうとすると今度はどこにも見当たらないのではないかと思い、ぐずぐずの末に買ったのだったが、知識を持たない人間が古本屋でいかに往生するかという見本だろう。

【2025年6月追記】
東京古書会館の「新宿展」は2016年12月(第133回)で終了しています。
数ある即売展のなかでも、日曜日が初日というのは新宿展が唯一でした。
東京古書会館の他の即売展はすべて金曜初日、南部古書会館も金曜日、西部古書会館は土曜初日が多いのでしたが、それらに比べると、日曜日の朝一番のお客さんは案外と少なかったのです。
開場時刻も初日は午前11時と、他展より1時間遅く、売るほうも買うほうも、普段よりのんびりとした古本休日でした。
〈関連日記〉
*新宿展
→【2009年12月13日/2022年11月追記】東京古書会館の新宿展
「浦和宿古本いち」は現在も続いています。
1982年に始まりました。関東一帯でも有数の老舗古書市でしょう。
2025年は7月8月を除く各月に開催されます。
「金木書店」は2023年3月、「武蔵野書店」は2020年3月に、それぞれ閉店しています。
〈関連日記〉
*浦和の古本屋
→【2012年9月30日/2024年10月追記】浦和うろうろ

