【2009年10月18日/2022年11月追記】東京古書会館の新宿展にて函入本の取り出し方の練習

【2009年10月18日】
穏やかな秋晴れの日曜日。神保町へ。
田村書店など、日曜日の古書店街はお休みのお店が多い。
古書会館では今日から3日間の日程で新宿展が開催される。

昨日の今日ということもあり、古書会館ではまず諸先輩の、函入本を扱う所作に注目してみる。案外と指でつまんで引っ張り出す姿が目についた。
会場を見て歩くと、なかには、破れかけたパラフィン紙が引っ掛かっているのをものともせず、びしゃあ、と出し入れする豪傑もいて、傍で見ていてどきどきした。
中身が余程きつく納まっているときは落下式を用いているようだ。すばやく1冊1冊の状況を把握して、指先式と落下式とを自然と使い分けているようでもあった。そういうものなのかなあ。

しかしせっかくの教えを受けたのだから、私は早く、落下式を身につけたい。函入本を手にとっては、さかさまに振って、本を出す練習をする。ぼんやりしていると、うっかり指先でつまみ出そうとしてしまう。
「ほら、こうすれば函が痛まないでしょう、ほら、ほら」耳元で谷川書店の老店主の声が聞こえる。

古書会館からは御茶ノ水駅に向かい、中央線で荻窪へ行く。ささま書店をひとまわり、ふたまわり。
どれを買うかというよりも、どれを買わずに我慢するかという選択に、ここではいつも頭を悩ませる。

2009年10月18日 今日の1冊
*ささま書店/荻窪
『臍の手帖』中野理(創元社/1958)105円

臍の手帖表紙

【2022年11月追記】
東京古書会館では一時期まで「新宿展」という名称の即売展が開かれていました。
神保町なのになぜ「新宿」かというと、新宿区早稲田にある古書店が集まって開催するからです。
東京会館ではほとんどの即売展が金曜土曜に開催されるなかで、新宿展のみは日曜月曜でした。
1年に5回ほど行なわれ、目録も毎回発行していましたが、2016年12月の開催をもって終了となりました。

この日、なぜ函入本の取り出しを練習したのかについては、前日に記述があります。
【2009年10月17日/2022年11月追記】国立・谷川書店の老店主に指導を受ける

函の中から本を取り出すやり方は、やっぱり人それぞれのようで、さかさまに振る人、指でつまみだす人、どちらも見かけます。
戦前の本など、函の一部が欠損していたり、今にも壊れそうだったりすることもあり、なるべく函に負担をかけない落下式は理にかなっているでしょう。
しかしなかには、どうやって収納したのかというくらいに、函の中にびっちりと入り込んでいて、いくら振っても振ってもびくともしない本もあって難儀します。
本体にくるんであるパラフィン紙も、じつは扱いの厄介な紙で、取り出すときはよいとしても、さて仕舞おうとすると、本と一緒に函の中に納まってくれず、パラフィン紙だけが変な格好で函の外にはみ出してしまったりもして、なかなか苦労しますね。

荻窪の「ささま書店」は2020年4月閉店。同店のあとをそのまま受け継いで、7月からは「古書ワルツ荻窪店」が開店。現在も営業しています。