【2010年10月12日】
八王子古本まつりは、ビアンキ・作/藪内正幸・絵『くちばし』(福音館書店)100円。絵本1冊。
古本まつり会場のユーロードから程近い佐藤書房では『夢野久作の日記』と遭遇。
今まで、目録や古本屋で何度か見かけた際の売価はいずれも1万円前後だったと記憶する。
税抜き4500円というのは一気に半額だ。
半分は半分だが、しかしそれは相対的に言っての半分であって、絶対的に述べれば、私の財布が苦渋する金額であることに変わりはない。
立ち読みのつもりでページを繰ると、だが、足の裏から首すじにかけて、ざわざわと何かざわめく。
書物に魅入られてしまう。購入する。杉山龍丸編、葦書房刊。税込4725円。
その他もう1冊、『岡田鯱彦名作選』(河出文庫)420円。
帰りの電車で『夢野久作の日記』を開くと、口絵に加藤介春の肖像が載っていた。
久作に作家としての基礎を与えた最大の恩人なのだそうである。
以前、『加藤介春全詩集』を八木書店の店頭箱から買っている。まったく知らない詩人の詩集を買ってみたのだったのだが、ひとつ、つながった。
【2023年1月追記】
「八王子古本まつり」は、毎年5月と10月に開催さる野外古本まつりです。
新型コロナウイルスの影響で、2020年5月からはしばらく中止が続いていましたが、2021年10月に再開しました。
前回、2022年の10月で第26回を数えます。
八王子駅北口のユーロードに、古本テントが一直線にずらりと並ぶ光景は壮観。
3冊100円のテントはいつも人気を集めます。
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八王子駅前ではもうひとつ「八王子オクトーレ古本まつり」が、2021年から始まっています。
名称のとおり、八王子駅北口から連絡デッキで直通の八王子オクトーレ内での開催です。
2022年の7月に第2回。
さらに2022年12月から2023年1月にかけては、前半と後半の2つに分けて第3回が開催されました。
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「佐藤書房」は八王子の老舗の古本屋さんです。
店先から店内まで、あらゆる空間が古本であふれ返っています。
100円の文庫本から数万円の貴重書まで、幅広い品揃えです。
ミステリー、SF、文学、美術、音楽、マンガ、民俗、思想哲学、児童書……取り扱う分野もまた多彩で、ひとたび足を踏み入れれば、時の経つのを忘れます。
佐藤書房は、古本まつりや即売展への参加はなく、店売り一筋です。
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ユーロードを突っ切って、甲州街道を右に曲がると「古書むしくい堂」があります。
こちらは2017年開店の新しい古本屋さんです。
新しいと言ってもすでに6年近くが経ちますから、すっかり街に根付いているようです。
店頭の均一棚から、ごっそりまとめ買いをするお客さんも多いことでしょう。
店内の棚はすっきりと整頓されていて、とても見易いです。
2021年の4月に訪れて本を購入した際には、4周年記念ということで、お店のロゴが入った特製チロルチョコをオマケに頂いたりして、感激しました。
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さらに、老舗がもう1軒。
「まつおか書房」は、現在、京王八王子駅の近くに店舗を構えて営業しています。
以前は、佐藤書房の近くに1号店と2号店、少し離れた場所に3号店と、3つの店舗を展開していましたが、いずれも閉店となっています。
規模はだいぶ縮小されましたが、店舗営業の継続は頼もしいかぎりです。
まつおか書房は、地元の八王子古本まつりに参加しています。
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八王子古本まつり、オクトーレ古本まつり、佐藤書房、古書むしくい堂、まつおか書房。
八王子は今や、多摩地域を代表する「古本の街」となりました。
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夢野久作【ゆめの・きゅうさく、1889(明治22)-1936(昭和11)】は小説家。本名、杉山直樹。
なのですが、その人物があまりにも有名かつ巨大すぎて、ここに何を記せばよいのか、頭が働きません。
あえて、『ドグラ・マグラ』の作者、とだけ書いて、あとはごまかします。
『夢野久作の日記』の編者、杉山龍丸氏は久作の長男です。
2016年から、没後80周年記念として国書刊行会が『定本夢野久作全集』を刊行しています。
2022年11月に全8巻が完結しました。
加藤介春【かとう・かいしゅん、1885(明治18)-1946(昭和21)】は、詩人。
福岡県上野村(現福智町)に生まれました。
早稲田大学在学中に、相馬御風、三木露風らとともに、早稲田詩社を結成しています。
『加藤介春全詩集』を買うには買いましたが、ほとんど読まないままに、どこかに埋もれているという始末です。
『加藤介春全詩集』を購入した日の日記は下記をご覧ください。とはいえ、参照というほどではありません。
→【2010年6月11日/2023年1月追記】新興展と神保町古書店街を右往左往