【2011年3月4日/2023年3月追記】第100回西部古書展

【2011年3月4日】
西部古書会館、西部展。
今回の西部展は記念すべき第100回ということで、ガレージには印刷会社からの立派な祝い花が届いていた。桃、百合、薔薇……。古本や古狸の古色を凌いで、今朝のガレージは異例に華やかなのだった。
開場の直前には、主催(書心会)の会長さんが節目のご挨拶。朴訥な謝辞と、それに応えるご常連のささやかな拍手。ちょっと好い光景だ。当たり前なのだが、古本とは人と人との間を往来してこその古本なのだなと、しんみり感じ入ってしまった。
もちろん室内会場の扉が開けば感じ入っている暇はない。皆さん書架へ突進だ。
今回、その第100回記念号の目録で特に注目したのは、古書英二出品の『今晩はホン屋です』1260円と『女のシリ・シンフォニー』1575円、それからアカシヤ書店出品の『お祭りの太鼓』3000円、以上3冊。価格との兼ね合いを込めて欲しい順に並べるとしたら、シリ、ホン屋、お祭り、となる。
そこで一目散に古書英二の棚へ赴くと、シリは無かったがホン屋はあった。『今晩はホン屋です―大日本Yホン物語―』柳橋克三(富士ブック)1260円。
アカシヤ書店の棚、お祭り、見当たらず。
3冊のうち収穫は1冊。しかし、3冊すべてがあったとしたら、それはそれで財布との苦しい談判になるから、程々にうまく納まったというところだろう。
藤井書店の棚から『うきよ診断』羽太鋭治(金竜堂書店)を手にとる。全く聞いたことのない医学博士の随筆集なのだが、昭和8年発行(初版昭和4年)ということであるし、525円という廉価でもあり購入する。
むむ。同じく藤井書店の棚に『女のシリ・シンフォニー』が並んでいた。ただしこちらはカバー欠の裸本。値段は840円。
この本の著者、岡田恵吉は日劇ミュージックホールの運営委員なんだから、まさに「裸」本でよいじゃないかと思うが、やっぱりカバー付きが欲しいので見送った。

柳橋克三「今晩はホン屋です」表紙
『今晩はホン屋です』柳橋克三(富士ブック/1967)

中央線で御茶ノ水へ行き、続いては東京古書会館の紙魚之会。
ぶっくす丈が岩波文庫の青版を大量に出品していたので、『基督抹殺論』250円、『兆民先生・兆民先生行状記』250円、『社会主義真髄』200円、幸徳秋水を3冊と、ヘーゲル『小論理学』上下2冊500円と、カッシーラー『シンボル形式の哲学』全4巻1200円、ブルーノ『無限、宇宙および諸世界について』400円、計10冊を選ぶ。
その他、矢野目源一『風流色めがね』(住吉書店)525円。

矢野目源一「風流色めがね」表紙
『風流色めがね』矢野目源一(住吉書店/1954)

三省堂古書館が今月から三省堂本店の4階に移転したので寄ってみる。売場は今までより狭くなっていた。かぴぱら堂の撤退は残念だ。購入なし。
ミロンガで珈琲を飲んだあとは、店頭棚を冷やかしながら九段下まで歩き、東西線で高田馬場。
BIGBOX玄関先の古書感謝市は北風の吹きさらし。
『日本の橋』保田與重郎(講談社学術文庫)350円、『書物の敵』庄司浅水(同じく講談社学術文庫)400円、豊田国夫『名前の禁忌習俗』(これも講談社学術文庫)500円、辰野隆『信天翁の眼玉』(三笠文庫)150円、坂井米夫『私の遺書』(文藝春秋)300円、と、古本を拾い集めているあいだは北風を体感しなくなるのだから不思議なもんだ。

16時半、高円寺に舞い戻り、都丸支店を覗き、それではその先のガード下四文屋へ。
宝焼酎の梅割りを呷りつつ、東京古書会館でもらった『フジサワ湘南・古書まつり』の目録をめくる。
すると聖智文庫の34番が『女のシリ・シンフォニー』2520円。さらに『城南古書展目録抄』をめくると、佐藤藝古堂2170番が『女のシリ・シンフォニー』6500円(!)、ううん、今日は朝からシリの連発なのである。これこそシリの交響か、だいぶ酔ってきた。

【2023年3月追記】西部展、三省堂古書館
西部古書会館の「西部展」は1年に5回(3・4・7・9・12月)の開催。
第100回以降も回数を重ね、2023年3月で第160回となりました。
毎回、金土日の3日間開催です。
14店舗が参加。硬軟自在の棚が展開します。
  ◇
2009年秋、三省堂書店神保町本店に隣接する第2アネックスビル4階に誕生した「三省堂古書館」は、2011年3月に本店4階へと移転して新装開店しました。
店舗の面積は縮小となりましたが、新刊売場の奥に古本棚が設置してあるというのは、独特の書店風景でした。
開店から12年半後の2022年5月、本店ビル建て替えのため母体の三省堂書店と共に閉店しています。
閉店の直前にビル前面に吊るした「いったん、しおりを挟みます。」の大きな懸垂幕は記憶に新しいところです。
三省堂書店は小川町仮店舗での営業を再開していますが、残念ながら古書館の移転はありませんでした。
新しい本店ビルの竣工は2025年を予定しているそうです。神保町の新店舗が開店した暁には、ぜひ三省堂古書館も一緒に呼び戻してほしいと願います。

三省堂古書館につきましては下記合わせてご参照ください。
【2009年11月6日/2022年11月追記】愛書会から、新しく開店した三省堂古書館へ